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守霊界変  作者: クロガネガイ
第一部
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初めてのクエスト

 ギルド【ガベラ】のギルドハウスに来て三日ほど経った。巣の在りかや情報が集まるまでの間、俺はベリルさんにしこたま鍛えられた。いや、一方的に嬲られたといっても間違いない。朝から日が暮れて辺りが見えなくなるまで武器の扱い方、攻撃の避け方、受け身の取り方などありとあらゆることを叩き込まれた。寝ている時に見る夢にまでその時の様子がでてきてうんざりした。でも、着実に動きは洗練され指導を受けて三日経った今日、なんとベリルさんとの一騎打ちで初めて一本取ることができたのだ。嬉しかった。ベリルさんからもお褒めの言葉と調子に乗るなってもう一戦申し込まれてコテンパンに転がされた。でも、無力だった俺からすこし成長できたと実感した。


「さて、これからクエストについての情報と作戦について話そうと思う。みんないいかな?」


 ガリズマさんとラーシャルドさんの情報収集が完了したのか三日目の夜、ギルドハウスの広間に呼び出された。


「まずは役割分担について、私とラーシャルドがエイトビーの陽動を行う。巣に向けて魔法で牽制して注意を引いている間にケント君とベリルで侵入してバーハニーを採取してほしい。陽動にどれだけ引っかかってくれるかはわからない、巣の中にもエイトビーがいると思って行動をしてくれ」


「はい」「おう」


「次に巣の在りかについて、私とラーシャルドで調べたところ商業街ノーヴァ周辺の混迷樹の森でエイトビーが観測されたらしい。あそこは人入りが無くてエイトビーが巣を作っていてもおかしくない。詳しい場所は森に入ってみないとわからないけどとりあえず行き先は混迷樹の森だよ」


「あの~混迷樹の森って何処にあるんですか…俺、結束樹の森には行ったことあるんですけどノーヴァ周辺にはほかにも森があるんですか?」


「結束樹の森に行ったことがあるのかい?そうか、じゃあ、少し説明しやすいかな。混迷樹の森の場所は結束樹の森からすぐ近くにある小規模の森さ。規模は小さくても木々一本一本の高さがあってね、森の広さでは結束樹の森、森の高さでは混迷樹の森っていう風に言われているよ。結束樹の森に行ったときにやたら高い林を見なかったかい?」


「あ~見たかもしれないです。そこも結束樹の森なのかなって思ってました」


「まぁ、普通そう思うよね。でも、そこは混迷樹の森だよ。場所は大体わかったかな?」


「はい。大丈夫です」


「他に聞きたいことはないかい」


「ガリズマ、例の件は結局どうなったんだ?」


「うん。色々調べたんだけどあまりわからなかったよ」


「何の話ですか?」


「えーっとね。エイトビーの目撃情報を集めていた時に聞いた噂なんだけど、エイトビーの赤い個体を見たって話を聞いたんだ」


「赤い個体?ですか…」


「うん。エイトビーは普通黄色と黒の色合いなんだけど、稀に突然変異で赤い個体が生まれるんだ。この赤い個体は普通のエイトビーよりも気性が荒く、大きさも十倍あるんだ。もし、今回狙う巣にいた場合は直ちに撤退をしないといけないレベルで危険な魔生物だよ」


「でも、噂なんだろ?」


「うん、でも警戒してて困ることはないよ」


「そうだな」


「そういえばベリル、ケント君はどうだい?」


「そうだな~油断した俺に一本取れるレベルにはなったかな」


「へぇ~ベリル、ケント君に一本取られたんだ~」


「油断してただけだ!その一本しかやってない」


 ガリズマさんがにやけながら色々言い訳をするベリルさんを横目に俺のほうへ近づいてきた。


「ケント君、よく頑張ったね。ここ数日でベリルから一本取れるなんて大したものだよ。ベリルは油断してたって言ってるけど取ったことには変わりないからね。今回のクエスト、期待しているよ。ベリルは何でもできるからたぶん大丈夫だけど、もしベリルになにかあったらできる限り助けてやって欲しい。頼んだよ」


「はい、頑張ります!」


「クエストについては以上かな。出発は明日の昼前!それまで各自必要な準備と休養をとることいいね?」


「わかりました」「おう」


 ガリズマさんの締めの言葉で皆それぞれ自分の部屋へと戻った。明日はいよいよ初クエストだ。三日という短い間だけどベリルさんに鍛えられてすこしは戦えるようになった。バーハニーの採取をしてみんなで食べるんだ。


 キュ~?


 布団に座ると掛け布団の中からトーナがもぞもぞとはい出てきた。眠っていたのか目がとろんとしている。


「トーナ、ごめんな。起こしちゃったか」


 キュ~


 トーナが俺の足の上にのぼってきて丸くなる。その見た目はまさに毛糸玉のそれである。明日のクエストにトーナは連れていけないかな…もし、魔生物と戦闘になったらトーナのことまで気を配る余裕なんて今の俺にはないからな。


「トーナ、明日はお留守番…よろしくね」


 キュ~


 返事をしてくれたのか、はたまたただの寝言なのかわからないけどトーナのお留守番は決まりとなった。俺はトーナを起こさないようにそっとどかし横になった。明日に向けてしっかりと休まないとね。

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