荒野に置き去りとかマジ?
ふと目を覚ますと見知らぬ光景が辺りに広がっていた。今、俺はだだっ広い荒野に一人ポツンと立っている。
「ここは…どこだ?」
辺りを見回せども何もなく、何故自分がこのような状況に置かれているのか皆目見当もつかない。状況が分からないまま立ち竦んでいると遥か前方より土煙があがり段々と此方に迫ってくる。
「ん?なんだよ、あれ」
目を凝らしてよく見ると二足歩行の小型恐竜のような生き物が爆走しているようだった。それはもの凄い速さで此方へと向かってくる。
「あれ、ヤバくね?」
危険を悟って回避しようと辺りを見渡すが周囲一帯更地で身を隠す場所はなく、爆走してくる生き物をどう対処するか困ってしまう。そうこうしている間にそれはもうすぐそこまで迫っていた。
「やべっ」
咄嗟に真横に飛び退いたおかげか最悪の事態は避けることができたようだ。爆走する生き物が通過したであろう道はローラーで踏みならした道のように平坦になっていた。もし避けることができていなければ今頃ペラペラの紙切れ状態だったろう。爆走した生き物はもう遥か彼方に消えてしまい、辺りは静寂を取り戻していた。
「とりあえず…どうしよう」
何もない荒野のど真ん中で何をしたらいいかと迷っていると、また前方から土煙があがっているのが見えた。
「な?! またあの化け物か?」
さっきの景色が脳裏をよぎりすぐさま回避行動を取ろうと身構える。段々と土煙をたてているモノが此方へと近づいているようだが、先程の爆走生物とは何か違うもののようだった。
「あれは…人か?」
近づいてくる土煙辺りを目を凝らして見ると何やら馬車のような物に乗っている人が見える。これは好機かもしれないと俺は自分の存在を知らせるために手を大きく振った。馬車は俺の存在に気付いたのか段々と速度を落とし近づいてきた。
「なんだぁ~あんちゃん?こんなところで何をしているんだ」
何かの毛皮を被ったオッサンが話しかけてきた。
「それが~俺もなんで此処にいるのか分からないんですよね。ここって何処なんですかね」
なんで俺がこんな荒野のど真ん中にいるかなんてそんなの俺が聞きたいところだけど…一旦落ち着こう。今はわからないことだらけで何をやればいいかさえ定まってない。まずは情報収集と今後の活動方針的なのを決めないとな。正直、早く家に帰ってゆっくりしたいんだよな~俺の家の近くにこんな荒野なんてなかったはずだけどね。
「あんちゃんよ~自分が何でそこにいるのか分かんないって頭でも打っちまったのか?そういやさっき、ヘッドランナーがここを突っ切ってたが…まさか、衝突でもされたのか?!いや、そんなことはねぇよな。アイツにぶつかってこんなにピンピンしてるわけねぇ…」
なんかオッサンがブツブツと独り言を言い始めた。よくわからないけど少し落ち着くまで話は聞けなさそうだな。しばらくオッサンは何か考え込んでいるようだったけど俺が何か言いたそうにしているのに気付いたのかこちらのほうを向いた。
「で、あんちゃんはこれからどうすんだ。怪我とかは~無いように見えるが大丈夫か?」
「はい、怪我とかは無いですね。え~っとですね…これからどうするかなんですけど、ここが何処なのかもわからないですし、まずは自分が何処にいるのかってのをはっきりしてそれから考えようかなって思ってます」
「あぁ~そうだったな。ここが何処かもわからなかったんだったな。よし、とりあえず乗りな!ここ等は街も何もねぇからよ。近くの街まで送っててやるよ。それなりに距離はあるからよ、その間に色々
話聞かせてくれや」
オッサンはそう言って俺に手を差し伸べて自分の馬車に乗せてくれた。まぁ、馬車といったそれを引く生き物は見たこともない生き物だったけどな。
初めに読んでいただきありがとうございます。