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哲考所  作者: 歌川 詩季
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第1考.マヨラー

 あなたはマヨラーですか?

 豚肉の生姜焼きにかけるのも、美味しいですよね。

 マヨラーってことば、好きじゃなかったんです。


 いやいや、マヨネーズは好きですよ。

 あれにもこれにもかけるのだって、べつに非難するつもりもないです。

 そりゃ、料理してくれたひとが。せっかくの味つけもだいなしだ、と感じるような不作法は、つつしむべきだと思いますが。

 それに配慮したうえでの、とちゅうからの味変とか。あるいは、調理者に気を使う必要のない、レトルトや、自宅でひとりの食事。外食でも、最低限のマナーに反さないかぎり。調味料の行使は、基本的人権の範疇であるとさえ考えます。…ごめんなさい、ほんとはそこまでではないです(笑)

 外食で、カレーにお醤油かけるの好きなんですよね。


 そうそう、マヨネーズのはなしでした。

 うん。テリヤキバーガーのマヨネーズは大好物ですし、あとがけでしたらヤキソバ!でっかいカップヤキソバに、ちっこいチューブのマヨネーズ、一本まるごとかけちゃいます。

 じゃあ、マヨラーがどうとか言う資格があるのか⁉︎って、憤慨のかたも、いらっしゃるかもしれませんが。

 私が好きじゃなかったのは、マヨラーさんたちの習性ではなく。ことばじたい。そのフレーズにあります。


 当時の流行語のせいもあるでしょうが。

 まず、確認してみてください。


マヨネーズかけるひと → マヨラー


なんですよ。

「するひと」をあらわすために、「-er」をつけるとしたら。マヨネーズ(mayonnaise)の語幹(?)の「マヨネ」とくっつけて


マヨネ + er → マヨナー(mayonner)


に、なりませんか?

 マヨラーの「ラ」は、どこからきたんだよ!

「R」ないし「L」なんて、ないじゃないですか。


 …と、ここで終わっちゃ、よくあるつっこみ。

 この哲考所では、もうちょっとこねくりまわしてみます。


 そういえば「するひと」をあらわす接尾語って、もうひとつありませんでしたか?

 はい、ご名答。「-ist」です。

 んで、よく考えてみると、そのふたつの使いわけって


動詞 + er

名詞 + ist


というのが、ふつうじゃないですか。

 名詞に「-er」つけることもありますが。行為者をあらわすばあいは、「-ist」だろうなと。

 とすると、名詞であるマヨネーズ(mayonnaise)につけるべきは「-ist」。


マヨネ + ist → マヨニスト(mayonnist)

マヨネーズをかけるひと → マヨニスト


ではないですか?

 じゃあ、そもそもマヨラーという名称こそ、まちがいなのか⁈


 いや、その結論にはまだ短絡的すぎます。

 なぜならば、われらが日本語には。今回の「マヨラー」or「マヨニスト」のような和製英語以外にも、さまざまな造語をひねりだす、たぐいまれなる創造性があるからです。

 転成動詞。というと、本来のものとちょっとちがうのでしょうが。


 名詞(あるいはその省略形)+「-る」→ 動詞


 ここでは、マヨネーズの省略形「マヨ」から


マヨ +「-る」→ マヨる


と、名詞であるマヨネーズを動詞化します。


 こうすれば!

 名詞用の「-ist」ではなく、動詞用の「-er」を使えるじゃないですか !!


マヨる + er → マヨラー(mayorer)


 これだ!ようやく、腑に落ちましたよ。


 マヨラーってことばは、たんなる流行語の模倣ではなく。


名詞 → 転成動詞化 → 行為者名詞化


と、複雑な手順を経た、芸術品だったんですね(過言)。

 こう考えれば。好きじゃないどころか、このことばに愛おしささえ感じます。

 きちんと理解したその日から。

 はばかりながら、私もマヨラーを自称させていただくことにしました。


 さぁ、きょうはなににマヨネーズかけようかな ♪

 こんなかんじだったり。

 もちょっと、小難しかったり。

 もっと、くだらなかったり。


 そんなふうに、やってこうと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「マヨラー」!、に違和感を覚える感覚が面白いです。 試行錯誤の末に、最後に、答えを導きだされて、妙に感動しました。 いつか、この変換が、なんちゃら活用形みたいに体系かされて、未来の若者が国…
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