4
おはよう。そして起きてくれてありがとう。
キミはどんな夢を見ていたのかな?
強くなって大きなドラゴンをやっつけて大金持ちになる夢?
みんなに愛されて、ニコニコと笑顔の絶えない世界の夢?
動物いっぱいでもふもふに包まれる夢?
じつはね、どれも実現可能なんだよ。
人はね、見た夢をそのまま実現させる事ができる。キミがもっと具体的な夢が見れるように、私はサポートに努めるね。
キミは今、馬小屋のぽかぽか暖かい藁の中から目覚めた。
牛や馬、ニワトリたちが騒がしいね。よく今までぐっすりと熟睡できたもんだ。
体にひっついた藁を落として外に出ると、今度は村の人々が騒然としていた。
一体、何事なんだろう?
キミは、面識のある防具屋のおじさんに声をかけた。
防具屋のおじさんは、誰よりも慌てた風に
「ああ! ああ! 大変だ……。うちの一人娘が拐われちまった! ゴブリンだ! ゴブリンの奴らに決まってる」
と、まくしたてるように言った。
これは大変だ!
おじさんはキミに良くしてくれた、赤毛の少女のお父さんだったね。だから、こんなに慌てるのも仕方がないこと。それに、あの子は村の人気者だったみたいだ。みんなが大慌てで、防具屋のおじさんの周りに集まりだしたよ。
村の住民は、お爺さんやお婆さんばかりで、モンスターと戦えそうな人は見当たらない。
キミは……どうする?
もう答えは決まってるよね。
キミは、防具屋のおじさんの肩に手を置いた。
おじさんは
「なんだって!? 会ったばかりのあなたが引き受けてくれるのか! ありがたい……」
と、言った。
えらい! キミは勇者だね。
みんなが困っている中、大変な仕事を率先して引き受けるというのは、誰もが出来ることじゃないよ。
感動した村の人々は、キミに装備品を託そうとしているみたい。
防具屋のおじさんは元々キミの為に作っていた物があったね。
おじさんは一着の衣装を店から持ち出して、
「これは誠心誠意を込めて作ったものだ。動きを阻害しない程度に板金を入れてある」
と、言った。
キミに渡されたのは……ドレスアーマーだ!
おじさんの言う通り、重たくない程度に胸部を守るプレートと、美しい刺繍が合わさった素敵なデザインの防具だよ。ひらひらとしたスカートが足さばきを阻害しないように……ってあれっ?
まだ聞いてなかったけど、キミって男の子? 女の子?
うーん……どっちでもいっか! さっそく、装備してみよう。
キミは物陰に隠れて、ささっと着替えたあと、再び村人たちの前に姿を現した。
中性的なキミの見た目は、武勇と優雅の二つの要素を併せ持つドレスアーマーに、見事にフィットしていた。
村人たちはキミを見て、熱狂的な反応を示したよ。勇者様だ! なんて声をあげる人もいたくらい。
実際、すごく似合ってると思うよ。
格好良くて、可愛い! まるで蝶のように舞い、ハチのように刺しそうな……うーん、でも鎧だけじゃ戦えないね。
もし、今のキミの戦闘力を数値で表すとしたら
攻撃力:3 (手作りスコップ)
防御力:20(武優のドレスアーマー)
回復薬:やくそう
といったところかな。キミはスコップを扱うのは上手だけど、さすがに戦闘に使うには無理があるね。
──おや、村人が他にも何かくれるみたいだよ?
次に武器屋の無愛想なおじさんが出てきて、
「この剣を使ってくれ。代金は要らん。あんたがゴブリンを倒してくれれば、看板になるからな」
と、キミに一振りの剣を渡してきた。
その剣は、昨日見かけた飾り気のないロングソードの一つだった。
鞘から抜いてみると、銀色の刀身が柔らかく輝いた。
キミはそれを右手にもって、何度か素振りをしてみることにした。
木と革で丁寧につくられた剣柄は握りやすく、あっという間に手に馴染んだ。
剣の重心は手元に近く、やや重たそうな見た目とは裏腹に、宙空で方向を変えて切り返す、という動きを何度も繰り返すことができる。
おお、サマになってるねえ! キミは今、夢中になって剣を振ってることに、気づいてるかな?
キミが剣を振るたび、銀色の刀身が日光を受けて反射する。空を切る音とともに、剣が閃く。
軽快に、それが自分の体の一部であるかのようにして、キミは剣のワルツを踊った。
キミはふっと一息ついて、剣を鞘に戻した。
静かに剣舞を見守っていた村人たちが、堰を切ったように声を上げ始める。
「おお! ほんに勇者様じゃ! ありがたや!」
「これならゴブリンどころか、世界中の魔物をやっつけてくれそうじゃ!」
など、思い思いに称賛の声を浴びせてきた。
剣舞に夢中になっていたキミは、村人たちの声で我に返った。気恥ずかしくなったので、とりあえずお辞儀をしてみせた。
すると、遠くから薄汚れた犬が走ってきた。
それを見た少女のお父さんが
「ポチ! 娘の居場所を知っているはずだ。この勇者様に案内を頼む!」
と、言って犬の身体を拭いた。
ポチは泥だらけだね。女の子と一緒に捕まったあと、隙を見て逃げ出したんだろう。
ポチは激しく身体を振ったあと、大きな声で一度だけ鳴いた。
キミは直感的に、「着いてきて!」とポチが言っているように思った。
ポチが村の出口に走り始めると、キミはその後を追った。
さあ、キミ。
もうすぐバトルが始まるよ。準備は万端かな?
キミはさっきの鎧に加えて、手によく馴染む剣まで手に入れることができた。
今の戦闘力を数値で表すとするなら……
攻撃力:35(日光のロングソード)
防御力:30(武優のドレスアーマー)
回復薬:やくそう
ってところかな。
なんで防御力も上がってるのかって?
それはキミに剣の才能があるからだよ。手足のように動くキミの剣は、敵を打つ武器であると同時に、身を守る盾にもなる。かっこいいね!
さあ、キミ。いくら強くなったとしても、不意を突かれることは当然ある。
あらゆる事態を想定しよう。
この先に待っているのは、どんなゴブリンかな。 一体かな? 二体かな? ゴブリンはどんな武装をしているかな?
赤毛の少女はまだ、無事でいてくれるかな?
さあさあ、先を急ごう!