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 まだいるかな?


 よしよし、新記録かも。

 これだけ間を空けてもキミがいるというのは、本当に素敵なこと!


 ……でも、まだ生えてきたところから一歩も動けてないみたいだね。

 まあ、生まれたばかりだし、右も左も分からないんだから、仕方ない!


 とりあえず、取っ掛かりが肝心だね。

 右や左よりも、まずキミがどんな人か知るところから始めよう。


 さあ、その場でぐるんと一回転してみて。


 うーん……これは!

 容姿端麗・眉目秀麗・文質彬彬・質実剛健!

 キミはどんな形容詞を並べても足りないくらい、美しい!

 さらに、そんな外見に頼る素ぶりなんかを一切見せない、とても素直で爽やかな性格!

 羨ましいなぁ。嫉妬しようにも、キミの放つ穏やかな雰囲気が周囲を和ませてしまうよ。

 私はキミみたいな素敵な友人をもって鼻が高い!


 ……さて、キミの着る服までは私は用意できなかった。

 この辺りは猫ちゃん犬ちゃんモンスターちゃんばっかりだからね。人間の生活に必要なものが、あんまりないんだ。


 キミは自分の置かれた状況を判断すると、赤面した。

 素っ裸だもの。周りの猫ちゃんみたいに毛皮で守られていない、つるつるの玉肌を晒してしまっているわけだ。生まれたままの姿とはこの事だね!

 私も眼福だと思いつつも、やっぱり見るにたえない! 目は無いけどね!

 何度も言うけど、『道』の上にあるなら、ある程度は知覚できるんだ。人間のキミにはちょっと分かりづらい感覚かもね。


 さあ、猫ちゃんが何処からか拾ってきたボロ切れを装備しようね。

 そう、ぐるぐるっと巻いて、ぎゅっと結んで……いいね! 胸から腰まで上手く隠せたね。

 ただ、ちょっと丈が短いから動くときには注意しようね。運動神経のいいキミのことだから、うまく着こなせるはずだけど。


 服を着たら、ちょっと周囲を確認してみてほしい。

 キミには立派な目があるから、遠くまで見えるはずだ。

 ……どうかな? 何か、いいものは見つかった?

 ……え、草や木ばかりで何も無い?

 ははーん、なるほどね。どうりで人の気配が無いわけだ。


 私はどうやら、道は道でも、人の作ったものではなくって、動物が通ることで生まれた『けもの道』であるらしい。


 キミは人間だから、人里を見つける必要がある。

 でも、この場所は生い茂る草木の真っ只中……。

 キミはまだ、『道』の上じゃないと動けない。

 じゃあどうすればいいか、私は考えたよ。


『道』の開拓だ!

 キミが草木を刈って、土を慣らして、私をぐんぐん伸ばしていく。

 そうしたら、キミの行動範囲が広がる。私の知覚範囲も広がる。二人の好奇心を満たせて、ウィン―ウィンというわけ!


 それじゃ、早速始めようか。

 スコップなんかがあればいいんだけど……無いから、その辺の自然の材料で頑張るしかないね。


 まずは石同士をぶつけて、鋭利な石ナイフを作る。

 そうしたら、ナイフを使って木から皮を剥いで撚り合わせて、ヒモを作る。

 次に頑丈な木の枝を探して、さっき作ったヒモをぐるぐる巻いて先端にナイフを装着。

 簡易スコップの完成だ!


 うーん、キミってすごく器用だね!

 その道具を使って、先に進んでみよう。


 この辺はこわいモンスターが出るから、人間のキミは夜に安心して眠ることもできない。

 サバイバルで何とかしようと思っちゃダメだ。


 キミは華麗なスコップさばきで、バッサバッサと生い茂る草を刈っていった。

 ちょっとでも硬い植物が生えてたら、迂回すれば良い。道は必ずしも直線である必要がないから、簡単なことだね。

 そうして、要領よく『道』を伸ばしていったキミは、よく開けた場所に出た。


 何か良いものはあったかな?


 背の低い草ばかりの広々とした原っぱ。

 うんうん、それから?

 砂利の敷き詰められた道。

 素晴らしい! それはヒトの道だ。

 ちょっと私をそこまで繋げてみてほしい。


 キミのスコップさばきは、すでに神の領域! あっという間に、私を砂利道へとつなげてしまったよ。


 この砂利道はすごいね。どこまでも続いてるみたいだ。例えば、向こう側は大木で隠れてるけど、その後もずーっと続いていて、途中で分岐したりして……あへぇ。

 私の平べったい感覚が、さらにびよーんと引き伸ばされて、ちょっと気を抜くとヒトの心を忘れそうになるよ。

 という事で、知覚範囲はキミの周囲くらいという制限をかけました! 自分の中で!


 さて、キミが向いてる方向は正解の道だ。

 丘になってて見えないけど、そこを下ると村の入り口が見えてくるはず!

 わくわくしてきたね。やっと人に会えるんだよ?

 私もキミ以外のヒトと会うのは何年ぶりだろうか……。

 さあさあ、足を動かして。


 キミは、村についたら何をしてみたいかな?

 ゆっくり考えながら、歩いていこうね。


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