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 転生したら『道』だった。

 道? 道ってなんだ? どういうことだ? と思う気持ちはよく分かる。

 だって私自身、一番最初の反応がそれだったからね。


 もうね。最初はすごく混乱したんだよ。


 気づいた時には既に『道』になっていて、驚こうにも『道』なので声が出なかった。触って確認しようにも、やっぱり『道』なので、手が無い。

 もちろん目も無くって、じゃあどうして『道』なのかが分かるかっていうと、こう、魂にこびりついているかのような『我こそが道である』みたいな、確固たるイメージ。

 転生したての私に他に寄る辺もないので、その『吾輩は道である』だけを頼りに、あれこれ考えたりイメージしていくうちに、少しずつ状況をつかんでいった。


 今ではある程度、出来事を知覚することができるようになったよ。

 それは、『道』である私の上に誰かが乗った時だったり、歩いた時だったり、転んだ時だったり、ケンカを始めた時だったり、夜毎(よごと)なあなあと淫靡(いんび)な鳴き声を(わめ)き散らされた時だったり……まあ、とにかく、不便なままであることは疑いようがないよね。

 まだ手とかが生えてくる気配も無いし、はた迷惑な旅人を追い払ったり撫でたりする事も出来ないわけだから。


 それから、私は『道』なので、口も無い。

 なので、これは実際に喋っているわけではなくって、ただの独り言みたいなものなのだ。私の中で反響するだけの、決して外には届かない独り言。

 じゃあ、さっきから誰かに話しかけてる(ふう)なのは何故かって?


 それはねぇ……3つくらいの、大きな理由があるよ。

 核心に迫るところだから、ちょっと勿体ぶって話させてほしいな。いいよね。


 まずは、第三位の理由発表!

 単純に、寂しさを紛らわす為! ←これね。勿体つけてる割にシンプルだけど、これは大事だよ。『道』ってかなりの孤独とのたたかいなんだ。私じゃなきゃ発狂しちゃうね。キミも生まれ変わって『道』をやる事があったなら、私と同じことをやってみるといい。


 さあ、ここまで聞いたら第二位と第一位が気になるよね? ちょっと話が前後するけど、聞いていただきましょう!

 ……まあ、出来るだけ短くスマートに済ませるから。今日こそはどこかへ行ったりせずに、そのまま聞いていて頂戴ね。


 生前の私(人間だった頃ね)は、いわゆるボッチだった。自分から誰かに絡む事がなくって、話しかけられたら初めて応答するみたいなスタンスが丁度良かったんだ。

 で、人間っていうのはやっぱり寂しくなるタイミングがどうしても来るもので、私はラインやツイッターを使って壁打ちをするのが日課みたいになってた。

 私がやっていた壁打ちっていうのは要するに、私一人だけのグループチャットで架空の相手に話しかけてみたり、鍵をかけたまま呟いてみたり……まあ結局のところ、相手のいない一人遊びというやつだ。

 そして、運命の日!

 私はいつものように、スマホを両手でパチパチとやりながら壁打ちをしていた。

 そしたら、なんと壁にぶつかった!

 気がつくと私は道になっていた!


 以上が第二位となります! つまり、私の独り言が独特なのは、生前の『壁打ち癖』が原因なのでした。

 病んでる? 病んでないよ。リスカとか、あんまりしなかったし、自殺したわけでもないからね。

 壁打ちしながら歩いてたら、壁にぶつかって死んで、道になってた。それだけだから。

 なんで道なんだよ! そこは壁になれよ! というツッコミをする余裕は無かったけど。今となっては、ちょっと惜しい思いもあります。


 少し熱が入っちゃったね。

 それで、お待ちかね第一位の理由なんだけど……。

 大丈夫? 帰りたくなってない?

 ここからが最重要だからね。なんなら、今の自分語りは全部忘れちゃっていいんだ。

 これから話すのはキミの事について、だから。


 これを聞いてもらったら、いよいよキミが形になるはずだ。ちょっと慎重にいかせてね。


 ある日、『道』になった私が日課の壁打ち(ひとりごと)をしていると、異変が起こったんだよ。

 なんというのかな……こう、私からキミが生えていたんだ!

 キミは最初、泥みたいに不完全だったけど、いつも以上に壁打ちに力を入れて、キミの存在を強く意識することによって、泥は石に、石は岩に、といった具合で、その存在感を大きくしていった。

 過去一番上手にできたのが三日くらい前で、キミは大体1メートルくらいの壁になっていたね。


 でも、分かるかな?

 今のキミは壁じゃないよね。


 これは継続していかないといけない作業だからね。つまり、私が求めてる相手は、壁なんかじゃなかったんだ。

 ……生前に気付いとけば、私もこんな平べったい思いをしなくて済んだのにね。


 とにかく、私の思いがそのままキミの存在を強くしているというのが分かったんだ。


 さて、これ以降は壁打ちなんて言い方はナシにするね。もうキミは壁なんかではないし。

 私は、キミという『人間』を信じて、こうして語りかけているわけなんだから。


 これが口もないくせに、私がお喋りな理由の第一位!

 どうかな? 難しかったかな?


 そうだねぇ……もっと要約できるかも。


『人間のキミは今、道の上に立っています。これから何をしたいかな? どんな景色が見えるかな? 私と一緒に、この世界を見て、触れて、感じてみませんか!?』


 これでどうだろう!

 私は、あくまでキミのサポート!

 キミは人間で、これから起こる出来事の主人公。

 でも生まれたばかりだから、知らない事も沢山あるわけ。そこを私はサポートしたい!

 経験も分かち合いたい!


 それじゃあ、道の上に佇むキミ!

 きっとまだ、お人形みたいにぎこちないキミ!

 これから、どうしたい?

 しばらく指図はしないから、ゆっくり考えてみて。



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