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四話:メルクリスさんと前の勇者さん

 美しい青い髪をしたメルクリスさん。彼女も僕達の旅の仲間である。一国の女王である彼女が何故僕達の旅に着いてきたか。それは、彼女が前勇者の召喚士であり、同行者だったから。

 ちなみに青い髪というのはトリティーナ人に多いらしい。トリティーナに寄った時確かに青系統の髪の毛の人多いなあとは思ったけども。


「ジェラルド君の体、調べさせてもらいますねー」

「ありがとうございます」

「いえいえ、私としても興味深い事象ではありますから」


 ねえ、これ僕がいる意味ある??

 そう思わざるを得ない状況なのだ。そう、今はジェラルドさんの体がどうなっているか、改めてメルクリスさんが検査しに来たらしい。

 大事な事だからもう一度言うね。ねえ、僕がいる意味本当にあるの??

 ジェラルドさんに聞くと「別にお前を追い出す目的でもないからな。それに目の届く場所にいてもらった方が安心だ」との事。

 僕を一体何だと思ってるのさ!そりゃ確かにまだ13のひよっこの若造だけどさーーー。

 ちなみにこの世界では成人は15らしい。15歳から酒類も飲んでいいんだとか。煙草は見かけたことないけど、あるのかな。吸う気は無いけど。

 メルクリスさんの方は「ジェラルド君がいいならいいと思いますよ?」とか言ってるし…。検査ってことは上脱いだりするでしょ!?かと言って退室しようとするとジェラルドさんに引き止められるし!


「そう言えば、女王陛下は前勇者の旅に同行していたのですよね。前勇者はどのような方だったのですか」


 ジェラルドさんが突然メルクリスさんにそう尋ねた。前勇者か…確かに少し気になるな。

 僕よりも大人で、強いひとだったんだろうか。


「ショウタ君の事ですね。懐かしいです、もう40年も前の事になりますから」

「40年…」


 何十年に一度という話は聞いていたけれど40年も前なのか…まあ、同行していたというメルクリスさんが50半ばなのだから納得だけども。


「ショウタ君は良い人でした。召喚のせいで記憶を失っていたとしても私達の為にと立ち上がってくれたのですから。何故勇者はトリティーナが召喚するのにステラミストの預かりになるか、聞いた事ありますか?」

「言われてみれば…。僕が最初いたのはトリティーナとステラミストの国境近辺だったんでしたっけ」

「そうだな。勇者召喚の座標がトリティーナからズレたと連絡が入り、ステラミストの領内であったことから俺が派遣されたんだ」


 あれ若干失敗してたの!?チュートリアルみたいな感じで魔王の軍勢に襲われてるところに飛ばされたものだと思ってた…。


「前回の勇者…ショウタ君に対して我が国トリティーナは非道な行いをしたからこそ、今でもこの世界ではトリティーナの汚名は返上できてないのです」

「…幼い頃に少しだけ聞いたことがあります。ですがその件は貴方様も被害者であられるはずです」


 小説とかでもたまに聞くような、勝手に召喚しておいて用無しになったら迫害したとか、そんな感じなんだろうか。

 僕に対してステラミストの王様があんなに優しかったの、恐らく40年前のトリティーナの王様の件を踏まえてなのだろう。


「魔王を倒したあの日、私は手のひらを返した王国民に連れ帰られ、ショウタ君とはそれ以来会っていません。今更、ショウタ君を探そうだなんて考えてるだけなんです」


 前の勇者さん、まだこの世界にいるのかな。

 いるんだったら、僕も会ってみたいな。

 メルクリスさんでさえも会えてないと言うのだから会える可能性は低いけれど。


「そういう動機でもいいと思いますよ。貴方がいてくれるからこそ俺達は助かってる部分も……」


 突然ジェラルドさんの言葉が止まった。僕はジェラルドさん達の方を見ないようにしているから何が起こっているかわからないけれど、見たらいけない気がする。


「ジェラル子ちゃん、どうかしました?」

「なっ何故貴方までその呼び方を…っ!テイシお前っ!」

「え、ぼぼ、僕!?」


 メルクリスさんに話したっけ!?ジェラル子さんって呼んだ事話したっけ!?

 そうこうしているうちに僕の背中に柔らかい何かが触れる感触がして、頭を引っ掴まれる。


「いたっいたいっていた!!??ていうかジェラルドさん、胸!胸!当たってます!!!!今のご自身の体を!!考えてください!」

「お前だろあのなんか変な呼び名広めたの!チアにも今朝呼ばれたんだぞ!」

「何でえ!?」

「あと大体女の体に興味のあるやつは胸が触れるだけで興奮するだろ!」

「ひえええジェラルドさん怖いです!!頭痛い潰れる!」


 ねえしかも今服きてないよね!?なんか、触感がすごいんだけど!ねえせめて下着来てると信じたいんだけど!?


「これが噂のおねショタとやらでしょうか…」


 メルクリスさんは何言ってるの!?おねショタって何!?ていうか止めて欲しいんだけど!?


「……」


 暫くするとジェラルドさんはちゃんと僕の頭を放してくれた。頭がすごくジンジンするんだけど。一体どれだけ掴んでたのジェラルドさん。


「ていうか何があったんですか…」

「…胸を触られると言うのは不思議な感じだな、と思っていたら女王陛下が唐突に…」

「だってこれ相当大きいですよ?スタイルよすぎじゃないですかジェラル子ちゃん」

「その呼び名だけはちょっと…」


 ちなみに僕は広めてませんからね。多分ジオードさんの仕業ですからね。まあ最初に呼んだのは僕ですけど。


「…僕だって男なんですからそういう話目の前でされると反応の仕方が、その…」


 そう言っているとジェラルドさんが僕の顔をジェラルドさん達の方へ向かせようとしてくる。服着てる?きてる???ねえ着てるの??


「お前には分からんだろうなあ…突然女にされてこんなものが胸についてるって感覚がよお…」

「ジェラルドさん唐突に僕に絡もうとするのやめ…っ」


 必死に後ろを向き続けていた僕だったがジェラルドさんの力には及ばず、振り向かされる。

 咄嗟に目を瞑ろうとしたけれど遅く、だが良かったジェラルドさん流石に1枚は着てた。まあ着てても大きいそれのせいで、その、とても言い難いけど、その、うん。

 でも、やっぱり整った顔してるなあ。この人の顔見てるとドキドキするのなんなんだろ。近所に住んでたお姉さんみたいな安心感があるというか。


 いや、まさか


「…お前に黙られると流石に反応出来ないんだが」

「ふえっ!?そ、そんな……め、メルクリスさあん…」

「まあまあ、私も意地悪しすぎてしまいました。ジェラルド君。大体の事は分かりましたので、私はここで失礼しますね」

「いえ、助かりました。ありがとうございます」


 メルクリスさんは部屋から出ようとしてジェラルドさんに耳打ちする。

 偶然、本当にたまたま僕に聞こえてしまった内容は。


「…ブラジャー、用意しておきますね」


 聞こえなかったふりをしよう。流石のジェラルドさんも困惑している。だがしかし確かに今のジェラルドさんに必要なものである。

 え、待って今つけてないの???じゃあさっきの感触…。

 やめよう。これ以上は僕がただの変態になってしまう。


「テイシ」


 メルクリスさんが退室したあと、一応ちゃんと服を着たジェラルドさんが僕に話しかけてきた。僕が今さっき不埒なこと考えてたなんて、バレてないよね…。


「は、はい…」

「ぶらじゃー…って、何だ」


 童貞かよおおおおおおおおおおおお僕でさえもその言葉知ってるよー!まあクラスの女の子が何故か僕にそれについて相談しに来たって言う謎シチュエーションだったけど!!


「なんでそれ今僕に聞くんですか…」

「いや、女性陣に聞くのは何だか俺が変態になるのではないかと思ってな」

「僕が!今の!ジェラルドさんにそれを話す方が!僕が変態になります!セクハラになっちゃいます!」

「それは、あるかもしれないが…テイシ程の見た目なら女装すれば違和感がないのでは…」

「変声期来てなくてすみませんねえ!!!」

「お前が女だったらナンパしてたからな」

「知りたくなかったそんなこと!!!!」


 え、何それジェラルドさんまさか僕が女の子だったらなーって思いながら今まで旅してたの!?何なの!?


「…ブラジャーって言うのは…女性が胸にあてる下着です」


 なんで着けるのかとか、どうやってとかまでは知らないからね。

 ジェラルドさんは「なるほどな」と納得したようにしていた。どうやら実際なってみるとブラジャーの必要性というものは分かるんだろうな。


「…その、なんか言いづらいこと話させてすまん」

「分かったならいいんです」


 それのどこが恥ずかしいんだ?とか言われたらどうしようかと思った…ジェラルドさんにもその辺は察する能力あったんだね…ただの脳筋じゃなかったんだこの人…言ったら殴られそうだけど。


「ふああ…」


 ジェラルドさんが眠たそうに欠伸をする。流石に男と女の体では体力が違うのだろう。この人の事だから今の体に慣れようと色々と特訓してるだろうし。


「ジェラルドさん、寝たらどうです?どうせ体力考えずにまた剣術の自主鍛錬とかしてたんでしょ」

「そうだな。何かあったら起こしてくれ」

「…」


 ジェラルドさんはそう言ってベッドに入って行った。なんだか、寝てるジェラルドさんの近くにいるとか凄くいたたまれない。

 ジェラルドさんを起こさないように僕はゆっくり部屋から出る。


「あれ、メルクリスさん?」


 部屋の外にメルクリスさんが立っていた。珍しい、どうしたんだろ。


「…ジェラルド君、寝ました?」

「?…はい、疲れてるみたいで、今寝ました」

「やっぱりまだ疲労がついてるのですね…。テイシ君、何か聞きたいことがあるんじゃないでしょうか?」


 メルクリスさんに言われて多分、彼女は勇者の事を聞いて欲しいんだな。と僕は思った。


「…前の勇者さんについて、もっと詳しく教えてください」


 僕としても気になっていたから、ショウタさんについて、もっと教えてもらうことにした。


「ショウタ君は、とても優しい方でした。他人の為だとしても自己犠牲しようとするくらい」

「凄い…でも、それって見てる側辛くないですか?」

「ええ、ですから、ジェラルド君とテイシ君を見て安心しました。テイシ君は無茶するような子じゃないですし、ジェラルド君は安心感がありますから。まあ、謎の魔法具からテイシ君を庇ったのは無茶にも思えましたが、何とかなりそうですね」

「…僕が先走ったせいで」


 ずっと、そう考えていた。

 特に何ともなさそうな顔をしていてもジェラルドさんはとても苦労しているだろう。僕も何か力に慣れればいいのに、何も出来ない。

 ジェラルドさんの背中を追う事しか出来ない。


「いいえ、テイシ君のせいではありません。ジェラルド君もそれを望んでいます。…ショウタ君は、魔王を1度倒したあと…トリティーナの人間に新たな魔王だと、勇者こそが魔王になるのだと、糾弾されたのです」

「え…」

「私が召喚しなければ…私に、もっと力があれば…ずっと、ずっと…そう思っていたのです。逃げて、魔族の人に助けられて、真の魔王は倒したとやっと王国の人に認められたと思ったら…」



「王国の民はあろうことか、私だけを連れ帰ってショウタ君を突き放したのです」


 だから、トリティーナには勇者を保護する権限がないのだ。とメルクリスさんは自嘲気味に微笑んだ。

でも、そんなのってないよ。

 メルクリスさんだって、被害者じゃないか。


「ジェラルド君を見た時…もしかしたらって思ってしまったのです」

「え、どうしてそこでジェラルドさんが?」

「ジェラルド君、似てるんですよ。ショウタ君に。けれど、尋ねてみたらご存知無いようでした。彼もニホン人の母親を持つので、親戚か何かかもしれませんね」


 ジェラルドさんに似てる、かあ…その一言だけでそのショウタって人と僕めちゃくちゃかけ離れてるように思えてしまう。


 もしも会えるのであれば、僕もその前勇者って人に会ってみたいなあ。

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