表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好奇心のもの  作者: リクルート
4/7

夜の学校を暴け

 ミラはきっかけを探し、マリアはその寒さで体を震わせていた。担任はスマホのメモ機能でその教室の問題をメモしている。波川と阿部は教室の外で待機している。


「ミラ、私この教室から出てもいい。もうなんかさっきより寒くなってる気がして」

 ミラからの返事は帰ってこなかった。マリアの先ほどより寒くなっている気がして、というところが気になったのだ。そこが彼女にとって違和感となった。

「マリア、もっと寒くなってるってどのくらい」

「え、そんなこと言われても、温度計とか持ってないし、わからないわ」

「そっか。でも、言われてみれば、寒くなっている気がする」

 長時間寒いところにいれば、体は冷えていく。そのことを判っているからこそ、彼女たちは気づかない。実際、その教室の温度は時間が経つにつれて、ほんの少しだけ温度が下がっている。


 ミラが部屋を一通り見て、黒板の前に立った。黒板に向かって、左の壁の上にエアコンが付いている。それがもし誤作動を起こしているのだとしたら、明らかにこれが原因である。しかし、担任に聞くと、当直の教師が職員室や他の場所に誰もいないのを確認してからエアコンの元の電源を切るらしい。つまり、このエアコンがもし壊れていて、電源が切れずに動き続けていても、寒い空気を送り出さない。もし動いていても元の電源装置がその誤作動を伝えてくれるらしい。そして、その故障しているエアコンの事は朝に行われる職員会議で知らされるらしい。可能性としては今、壊れたということだろうが、そもそも今壊れたのなら、寒い空気を出すことはできない。なぜなら、元の電源が切れていて、正常な時にその電源を落としたのだから、壊れたとしても暖房にしろ冷房にしろ、空気を送り出す機能は止まっているはずだからだ。それこそ、ポルターガイスト的なものがあって、エアコンを動かすというのだったらわからなくもないが。

 そして、次に教室の扉だが、この扉は立て付けが悪いのか、全くしっかり閉まらない。少しだけではあるが、隙間が空く。では、そこから寒い空気が流れ込んできて来ているのではないか、とミラは思った。しかし、そもそもこの教室がこれだけ寒いのなら、廊下の方も同じくらい寒いはずである。この教室がこれだけ寒いのに、廊下はほとんど寒さを感じないというのだから、この説はおかしい。そして、窓も扉同様立て付けが悪く、隙間が空いている。問題はここだとミラは確信した。しかし、少しおかしな点がある。それは外より、この教室が寒いということだ。先程、校舎に入る前に外に居たときは優しく風が吹いていたが、この教室ほど寒くなかった。そもそもマリアが外では一言も寒いと言わなかったのに、この教室に入ったときに寒いと言った。つまり、この点からも外より寒いという証拠になる。それ以外におかしな点はない。黒板側ではない方には掲示板があるが穴が開いていたり、おかしな仕掛けがあったりするわけではなかった。


「窓に何かあると思うんだけど、何かわかんない」

 ミラは両手を肩の高さまで上げて、掌を上に向け、わからないとポーズで示した。

「窓ね。あまり近づきたくないけど」

 そう言いながらも、マリアは窓を見た。隙間からは部屋の温度よりも冷たい空気が入ってきている。

「ミラ、ここでしょ」

 ミラは頷く。

「なんかわかったか?」

 担任が彼女たちにそう問うた。マリアがとりあえず、この隙間が原因だということだけを伝えた。しかし、担任は首を傾げた。

「なぁ、外ってこんなに寒かったけか」

 そう、二人と同じ疑問を持っていたのである。

「なんかあったっけ。こんなに寒くなる原因って」

 教室内にいる三人は寒い中、首を傾げ、辺りを見回しながら、その原因を探す。


「あ」

 そんな中、ミラが短く声を上げた。ミラ以外の二人が彼女に注目した。

「もしかして」

 そう言いながら窓に近づいていく。

「先生、窓開けていいよね」

 そう宣言し、返事を聞かずに彼女は勝手に窓を開けた。

「やっぱり、ここだった」

 ミラがそう言い、それがどういうことなのか確認するために、二人も窓に近づいた。そして、窓から首を出して、辺りを確認すると今いる教室がどの位置にあるのか、そして、そこにあるからこそ寒くなるのだということを理解した。

「つまり、前にミラが気になるものがあるって言ってた校舎裏側にこの教室があって、更に窓もちゃんと閉まらないから、寒い空気が入ってくる。それがこの時間まで続くと、こんな寒さになるわけね」

 マリアがまとめると、ミラが頷きを返した。

 担任はそれをスマホに打ち込んでいるようだった。原因なんて聞かれることはないとは思うが、それでもメモするのはやはり、几帳面な人なのだろう、とマリアは考えていた。

 そんな中、問題の一つが片付き、あと残り二つの怪談の真相を知るために、ミラは早くも教室から出ていった。それを慌てて、マリアが止める。しかし、待つことができないミラは早く行こうとしていた。

「ちょっと待って。一人で行動するのは危ないの」

「でも、早く次のやつ見たいし」

 言っても聞かない性格というのは知っているため、会話で何とか引き留める。会話している間は、止まってくれる。しかし、それも長くは続かない。というのも、特にミラが走り出したとか、ミラが何かしたわけではなかった。何かの音が聞こえてきたのだ。それもあまり大きくないのに、耳によく通る音だった。とにかく、その音にミラもマリアも黙る。それから、音が止むと彼女たちは二人、目を合わせた。その音は怪談に出てきた音と同じようなものだったからだ。つまり、二つ目の謎は校内を彷徨う怪物というわけだ。


 ちなみに、波川と阿部は教室の外で座ってじっとしている。波川が安部に話しかけても、一言二言しか返ってこない。そんな状況だった。波川は流石に邪魔になるだろうと考えていた。

「ねぇ、あの、私たちもう帰ってもいいかな。流石に、ね」

 波川は心配そうに阿倍の方を見ていた。

「ああ、そうだな。苦手な人はほんとに駄目だっていうからな、こういうの。俺が玄関まで送るよ。というか、家まで送った方がいいか?」

「いや、玄関までで。……じゃ、ごめんね。二人とも。また明日ねー」

 そう言うと、波川は阿部の手を引きながら玄関の方に向かっていった。彼女たちを先導するのは担任だ。

 つまり、今、この場にいるのはマリアとミラだけだ。

「マリア、早く行こうよ。先生とか待ってられないよ」

 マリアはそう言うだろうと思っていた。そして、担任にはあらかじめ、ミラがこうするかもしれないということは言ってあるので、実はこの場にいなくても問題はない。

「まったく。仕方ないわね」

 そう言って、担任を待たずに二人は校内の怪物を探し始めた。


「探し始めたのはいいけれど、ミラ、何か当てがあるのかしら」

「えと、多分だけど、本物の怪物はいないと思うよ」

 それはそうだろう。彼女たちのいる場所はいたって一般的な学校の校舎だ。もし、夜限定だとしても、怪物が徘徊しているなんてことになっていたら、少なくともちょっとした騒ぎになっているだろう。そもそもそんなことが起こると学校側が知っていたら、夜に何人たりとも校舎の中に入れたりはしないだろう。

「そうね。いたら大変だもの」

「それにこの怪物の鳴き声ってどこかで聞いたことがある気がするんだよね」

 怪物の鳴き声。二人の耳に聞こえている音はジジジと表現できるような音で、どの生物に近いかと言えば、虫の仲間にこんな鳴き声のものがいたなというようなものである。しかし、虫の鳴き声というならば、きっと怪物にはならないはずである。なぜ怪物とまで言われているのかと言えば、ジジジという音に被せて、風が吹き抜けるようにサァーという音を同時に出しているからだ、ということをそのとき二人は初めて知った。二人きりになって、会話をせずにこの音がどの方向から聞こえている、その予測だけでもつけようとしていたときに理解したことだ。

「なんかさ、少し音が多い気がするけど、下の方じゃないよね。聞こえてくるの」

「んー、確かにそうね。でも、廊下で音が反射してたらちょっとわからないわ」

「ちょっと進んでみよう。私の勘がこっちって言ってる」

 この時の彼女の勘は本当の意味での勘で無意識の推理とは別物だった。しかし、彼女の勘というものは、あまり外れなかったというのもあって、マリアは彼女に疑問もなくついていく。まぁ、どちらにせよミラ自身が自分の思った道を進むため、マリアはそれに従うしかないのだが。


二人はミラの勘を頼りに校内を進んでいく。二人は周りを注意深く見まわしていたが、何かヒントになりそうなものも無かった。どれだけ進んでも校内に広がっている音の大きさが変わるわけではなかった。つまり、音だけを頼りにするのであれば、近づいてもいなけば、遠ざかってもいないということになる。

 先ほどの寒い教室の前にある廊下を進んで、廊下の端にある階段まで来た。

「ねぇ、ミラ。あんまり歩いてないけど、音の出どころがあんまり変わってないよね」

「うん。でも、一回下に降りてみよう」

 二人は階段を下りていく。階段を下りている間も、怪物の声は音量は変わらない。


「ああ、二人ともここにいたのか」

 声のする方見ると、担任が階段を下りてきていた。

「先生。わざわざ遠回りしてきたんですね」

 彼はミラとマリアが寒い教室の前にいると思ってはいなかったが、もしかしたら待っているかもしれないと考えたため、その教室の前に向かった。案の定、彼の予想通り二人はその場にいなかったので、そのまま彼が来ていない方の階段を下りてきた結果、階段を下りたすぐそこに彼女たちがいたというわけだ。

「それはいいんだけど、この変な音って何?」

「ああ、それは俺も気になってたんだけど。でもさ、この音、どっかで聞いたことないか」

「なんか虫の鳴き声っぽいなと思ってたけど」

「虫よりも聞いたことあるはずだろ。あ、でも、普段使わなかったらわかんないか。この学校じゃあんまり使われんしな」

「どういうことですか?」

 マリアは彼がもったいぶって教えてくれない気がして、少し責めるように声を出した。

「ラジオの雑音だよ。ラジオ流してたら、雑音入るだろ。それに似てる気がするんだけど」

 ミラとマリアは確かに、と思った。ラジオなどの音声を流す機械に出るノイズのような音だ。

「ラジオとかの機械があるのは放送室だよね」

「そうね。とりあえず、行ってみましょうか」

 そう言うと、担任の言葉を聞かずに放送室に向かった。


 放送室は校舎の二階で、実は一階に降りてくるときにこの教室の前を通っているのだが、そのときには全く気にも留めなかった二人だった。しかし、いざ、この教室の前に来ると何かある気がしてならないと考えてしまっていた。

 放送室の扉には全く違和感はなく、他の教室と違うところと言えば、防音効果のある扉を使っているためにその扉は頑丈そうに見えるということだろう。それ以外に違うところと言えば、そこが何に使われる教室なのかを示すプレートが放送室と書かれているところだろうが、そんなことを言えば全ての教室が違うプレートを掲げているので、それは一般的なことと捉えられるだろう。つまり、そこに違和感を抱くことはないということである。

 ミラは放送室の扉周辺を見回した後、その扉のノブに手を掛けて、奥に押すときぃっと音を立てて、放送室の中に入った。そのあとに二人も続いた。

 

 中はそれほど大きくないように感じる。一般的な教室の半分程の広さで、そう感じるのは、放送用の器具があるからだろう。その器具は数字や、漢字の書かれた操作盤になっているようで、操作盤にはマイクが付いていた。その操作盤の前にはパイプ椅子が二つ並んでいるが、埃が積もっていて、最近誰かが使った様子はない。他には特に何もなく、最近誰かが長時間ここにいたような形跡を二人は見つけることができなかった。

「特に変わった感じはしないわ」

「そう、だね。気になるのはあの操作盤だけかな」

「それって、校内スピーカー使ってみたいだけじゃないの?」

「うん。まぁ、そうだよ」

 そう言いながら、ミラは操作盤に近づいていく。流石に埃の積もった椅子には座らなかったが、彼女は操作盤をじっくり眺めていた。

「ミラ、もう夜中だし、押しちゃダメよ」

「うん。それはいいんだけど。そうじゃなくて、なんか変じゃない、これ」

 ミラがじっくり見ていた操作盤をマリアもじっくりと眺めて見ると、確かに違和感があった。それは綺麗なボタンと薄汚れたボタンがあるということである。それに加え、綺麗なボタンは一つだけで、それ以外のボタンは埃が被っているのか、薄汚れている。綺麗なボタンの下には「入/切」と書かれたテープが張られていた。

「これって電源ボタン?」

「そうだと思うんだけど。でも、それだけが綺麗になってても普通でしょ」

「まぁ、この学校はスピーカーほとんど使わないからね。でも、最近放送あったわよ」

「あー、そう言えばそうだっけ」

 ミラはこの場所に正解があると予想はついていたのだが、彼女にはその操作盤がいかにして使われているのかということが全く知らなかった。一般の生徒は全く使わせてもらえないものだから、ミラが知らないのも当然だった。

「んー、これだと思うんだけどなぁ」

「どうしたんだ?」

 今まで黙って、この部屋を眺めていた担任が唐突に口を開いた。

「これってどうやって使ってるの?」

 ミラは担任がいたことを思い出したように、彼にそう訊いた。実際、彼女は担任の存在を忘れていたのだ。

「これか。これはスピーカーの電源入れるだろ」

 そう言って彼は先ほどの「入/切」のテープが張られた上のボタンを指した。

「それから、こっちのダイアルで音を大きくする」

 次に彼が指したのは円柱のボタンだ。しかし、それはボタンではなく彼が言う通りのダイアルで、押すのではなく回すものである。

「そして、マイクの近くで伝えたい内容を話す。話し終わったら、音をならないようにして、最後に電源を消す。そんな感じだな」

 ミラはなるほどとだけ答えて、また操作盤を眺め始めた。それから彼女はある疑問を持った。

 この操作盤の電源が入っているときと入っていないときはどうやって見分けるのかということである。この操作盤にはそれがわかるようなところがない。機械のほとんどはその電源が入っているということがわかるようになっている。大体、「電源」や「power」などの言葉が入っていて、その付近に電源がついているか消えているかがわかるようになっていると思うのだが、この機械にはそれが見当たらないのだ。

 ミラはその疑問を解決しようと、操作盤の横や立っているときに視界に入らない場所をくまなく見ていく。そうすると、操作盤を正面にした時の下の方、つまりは立っていると視界に入らない場所に「power」と書かれている場所を見つけた。そして、その文字の上にある小さな透明なガラスは緑色に光っていた。機械の電源が消えているときにはこの光はつかないはずだとミラは考えた。

「マリア、これ電源ついてる」

「え、ほんと?」

 ミラはその電源の事をマリアに伝えた。

「あ、ほんと。やっぱりこれのせいなのね」

「多分」

 そう言うと、ミラは音を大きくするボタンを左に回した。しかし、あまり大きくは動かずに三十度も回転させずに、回らなくなった。次にそれを逆に回すと大体四分の三回転し、放送室のスピーカーからジジジという音が聞こえてきた。それは廊下に流れていた音と同じ音だと思われるものだった。

「あー、やっぱりこれだった」

「廊下だと、小さな音でも反響して、微かに聞こえる程度の大きさになってたのね」

「んー、最後にこれ使ったの誰だ。ちゃんと電源消せって言われているのに」

 ミラは原因がわかって満足そうな顔をしていて、マリアは少し疲れた表情をしていた。担任は放送室の事をメモしていた。ここまで見てきて、彼が意外とこまめな人なんだなとマリアは思っていた。


「最後に調査したいのは図書館の透明人間」

 図書館の透明人間は図書館にて起きている怪談で、その怪談の中身はあまり怖くないと言われている。その内容は、図書館のある席に本を放っておくと、その本を読む透明人間が出るという話で、その透明人間が何をしてくるわけでもなく、ただその透明人間は読書をするだけである。しかしながら、その読書の邪魔をすると、その邪魔をした人間を透明にし、この世界の人々全員がその人の事を忘れるという。要するに読書の邪魔さえしなければ、何もしてこないということで対処の方法がわかりやすいので、あまり怖がられないということだ。

「なんか、やっぱり、私が聞いた時よりも、グレードアップしてる」

 マリアが波川と阿部に聞いた内容の中には読書の邪魔をしたら、という話はなかったはずである。あまり日が経っていなくとも、こうやって怪談が作られていくんだなぁと彼女は思った。

「じゃ、とりあえず、図書館に行こう!」


 図書館の扉の前には「閉館です」と書かれた看板が立っており、その扉には鍵がかかっていた。しかし、担任が鍵の束を持ってきていたので、図書館の扉は簡単に開いた。

 図書館の中は落ち着いた赤色の絨毯が敷いてあり、本棚には本がぎっしりと並べられていた。そして、本を借りるためのカウンターがあり、返却するための返却箱がある。カウンターの前には大きな机が三つ並んでおり、結構な人数が座れるようである。更にその机を取り囲むように本棚があり、その本棚もたくさんの本であふれていた。そして、机の上には本は一冊もなく、怪談で語られているような場所に本はなかった。ミラとマリアは知らないがそもそもこの図書館を管理しているのは事務員と図書委員である。そして、図書委員はこの場所を閉館するときに、本の放置がないかを確かめているので、そもそもこの怪談が生まれるはずはなかったのである。しかし、現にこの怪談が有るということは少なくとも元になる何かがあったことは明白である。

「とりあえず、机の上に本置こう」

 ミラは近くの棚にあった本を取り出すと、その本の途中から開いて、噂されている場所だと思われるところに置いた。それからしばらく待ってみるものの、本が勝手に動き出すといったことはなく、ただただ時間が過ぎていく。

「やっぱりただの噂だったのかなぁ」

「動かないならそれはそれで安心できて良いじゃないの」

 マリアとミラは本から視線を離して、しゃべり始めた。

「おい、二人とも」

 担任が声を上げ、本を指差した。二人はそれを見て、ミラは目を輝かせ、マリアは口を開けて驚いた。

 そう、本のページがゆくっりとめくられていた。透明人間が速読しているようで、しかし、その人物がそこに書かれている文章を楽しんでいるのがわかるような速さ。透明人間が読書しているのがわかるのである。

「おお、ほんとになってる!」

 ミラはテンションをあげて、声を上げていた。

「まさか、本当に透明人間なのかしら」

 マリアも少しであるが、透明人間がいるような気がしていた。

「いや、そんなのいる分けない」

 担任は現状を前にしても、その存在を疑っていた。


「もし、理由があるなら探さなくちゃ。透明人間ならどうして透明になれるのかとか、目は見えているのかとか。透明になってからどう生活しているのかとか。色々聞きたいこと、あったんだよ」

 ミラはその高いテンションのまま透明人間の方に向かっていく。本はいまだにめくられていた。そして、ミラが透明人間の横に立つと、本のページをめくるのを止めた。その光景はいよいよ透明人間がいるんじゃないかと思わせる。彼女たちはすでに、読書の邪魔をするとこの世界から消えるという噂の方は忘れていた。

「ねぇ、そこの人。透明なの?」

 透明人間の近くによっていったミラが聞くものの返事は返ってこない。それから彼女はいくつかの質問をするも、返事は返ってこなかった。

「やっぱり、透明人間なんていないわよね。少し驚いたわ」

 マリアが安心したように呟いた。

「透明人間じゃないなら、どうして本のページがめくられるんだろう」

 マリアは彼女がそう言うだろうと思っていた。だから、目で見えるところだけではあるが、この場所を調べていた。

「まず、何か意図的な仕掛け、つまり、何かのからくりを使っているとか、紐で引っ張っているとか、そういうようなものはないみたいね」

「それは見ればわかるよ。紐だって見えないじゃん」

「そう、なら見えないところを探しましょう」

 そういって、二人はテーブルなどを調べるがテーブル、椅子、近くの本棚には仕掛けはされていなかった。

「二人とも、そろそろ学校を出よう。あまり遅くなるといけない」

 担任は二人に帰るように促した。図書館の時計はすでに十一時半を示していた。担任も本当なら十一時には帰そうと考えていたのだが、彼女達が勢いで進んでいくものだから止める機会がなかったのである。しかし、日付が変わるとなると機会を伺うとは言っていられない。遅くに帰って何かあってからでは困るのだ。

「な、遅くなると危険だろ。一応、送っていくからさ、もう帰ろう」

「待って、今帰ったら眠れなくなる」

 ミラのその言葉にマリアは、確かに、と呟いて返事した。

 彼女のその好奇心が満たされない限り、彼女は一生悩み続ける。全く厄介なものである。

「そうは言ってもな。そろそろ日付も変わるだろ。本当なら学校で肝試しなんてするべきじゃないんだよ」

 担任は怒ることはないものの、その様子から二人を純粋に心配しているというのはわかる。しかし、マリア以外の誰がなんと言おうと、ミラが言うことを聞くわけがないのだ。つまり、謎解きを手伝って、解決したほうが早いのである。担任にその事を伝えると、彼もそのことを理解したのか、わかったといった。

「でも、十二時になったら強制退場だからな」

 二人はそれに頷いた。

「じゃ、手がかり、探しましょうか」

 そうして三人は図書館のいたるところを探索し始めた。

今のところ、七話で終わる予定です。

読んでくださっている方はお付き合いいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ