ミラとマリア
ようやく書けました。推理小説(?)です。
私は推理小説だと思って書いていましたが、そこそこ推理(?)な部分もあります。しっかりとした推理ものを見たい方は他の人の作品へどうぞ。しかし、日常と推理を合わせたものを見たい方は是非この作品を読んでください!
「マリア、早くしてよ!」
「ちょっと待って。貴女みたいに早く走れるわけじゃないのよ」
華彩園高等学校。今は昼休みでこの高校の廊下を走る二人の女生徒がいた。
「ねぇ、私先に行くよ」
背の小さな女生徒は怒った様子だ。しかし、その大きな瞳と、柔らかそうな頬が威圧感を消している。
「いいよ、先に行っても。購買なんてすぐそこだし、私はゆっくり歩いて行くわ」
対照的にもう一人の女子高生として中くらいの背の女生徒は息が切れていた。小さな目が、さらに細められ、口からは大量の息が漏れている。
「わかった。じゃーねー、また後で!」
背の小さな女生徒は新幹線のような速さで、肩にかからないくらいの黒髪を揺らして、去って行く。
「まったく。なんで、そんなに新発売の焼きそばパンが気になるのかしらね」
残された女生徒は肩甲骨の辺りまである髪を手で梳きながら、ため息をついた。
華彩園高等学校。華彩園とはこの町の名前である。金持ちの娘、息子が通いそうな名前ではあるが、市立の高校。入学するのに必要な偏差値は64と勉強のできる生徒が集まる学校だ。特徴として、三時限目以降は自由に授業を取ることができる。生徒の自主性高めるために、必須科目以外は自由に選ばせるという狙いがあるのだ。
さて、先ほどの少女たち。背の小さな女生徒が、佐藤実羅。焦げ茶の髪の女生徒は鈴木真理明である。実羅のあだ名はミラ。真理明のあだ名はマリアだ。本人たちは片仮名である方が呼びやすいのだ。彼女たちは華彩園高校の一年生であり、小学生からの付き合いである。この物語は、そんな彼女たちが活躍する話である。
「マリア、はいこれ」
ミラが手に持っているのは、焼きそばパンとあんぱんだ。
「あんぱん、ね」
「マリアが走れば、焼きそばパンだったよ」
「いや、いいの。あんぱん、好きだし。それより、新発売の焼きそばパンは美味しかったの」
ミラは少し首を傾げ、難しい顔をした。
「いや、うん、いつもの味だった、かな」
「走ってまで、手に入れたのに」
「いいの! 味が知りたかっただけだし」
マリアはそう、とだけ返して、手に持っていたあんぱんを食べ始めた。
昼食を取った後、彼女たちは四講目の授業を受け、今日はその授業で終わり。彼女たちは学校を出て、帰ることにした。
学校の目の前は坂になっているが、その坂は急ではない。坂の両側には木が植えてあり、さらにその向こうはフェンス、その奥には雑木林がある。フェンスがあるのはそこが坂とその向こうには大きな落差があるからだ。そして、坂を下りると、その先は三方向に分かれている。正面が商店街になっていて、学生に主婦、老人に仕事帰りらしき人などがいて賑わっている。それ以外の方向は右と左に分かれている。右に行くと公園が一つあって、その先は住宅街になっている。彼女たちの家もこちら側にある。左に行くと華彩園駅に着く。駅以外にはコンビニしかないので、この場所から駅に行くという人は少ない。なぜなら、買い物があるときは商店街を通って、コンビニより安い目的のものを買ってから駅の方に行く人が多いからである。その交差点で、彼女たちは立ち止まっていた。
「ミラ、このまま帰る?」
「や、このまままっすぐだよ」
「やっぱり、そうよね」
予想通りという表情をしながら、マリア自身も嬉しそうにミラについていった。
「もうすぐ十二月になりそうというだけあって寒いわ」
「そうだね。コートの人も多いし」
そう答えつつもミラの意識は周りのものに向かっている。しかし、それはマリアにとって、慣れたもので彼女自身も商店街に並んでいる店を眺めていた。
「あ、ミラ。たこ焼きだって。二人で食べない?」
彼女からの返事は返ってこない。マリアは不思議に思って、ミラがいるはずの方を見るが、そこには誰もいなかった。
「まったく。いつもいつも、すぐにどっか行っちゃうんだから」
ぶつぶつ言いながらもミラを探し始めたマリアであった。
はたして彼女は魚屋の前にいた。それも店主らしき人と何か話している。
「へぇ、そうやるんだ」
「そうそう。ここからこうやって、こう」
「おお、綺麗に切れてる。すごい!」
店主の動きからするに、魚の捌き方を教えてもらっているらしい。
「ミラ」
マリアは彼女を見つけると駆け寄った。ミラは店主の話に夢中で全く返事をしないどころか、顔すら向けない。マリアはそれも小学生からの付き合いで慣れてしまっていたので、その話が終わるまで待つことにした。
話は一分もしないうちに終わった。
「あ、マリア。どこにいたの?」
「貴女の後ろよ。ずっと貴女の後ろにいたわ」
「おぉ、珍しく怒ってらっしゃる?」
「怒ってないけど、勝手にどっか行くのやめて。せめて一言言ってって毎回言ってるんだけど」
「ごめんごめん。でも、なんだかんだ言いながらも探して見つけてくれるの、いつもありがとうって思ってるよ」
「そう思うなら、少しは自重しなさい」
「はーい」
ミラは適当に返事した。
その後、たこ焼きを諦めたマリアと魚の捌き方を教えてもらったミラは帰ることにした。商店街から住宅街に抜ける道を通って、自宅の方に向かう。それから、彼女たちはそれぞれの家に帰った。
翌日の放課後。今日も彼女たちは、商店街に来ていた。
「なぁ、ミラちゃん。昨日、玄関ところで財布の中身をばら撒いちまったんだが、どうにも五百円足りんくてな。どうにか見つけてくれんか」
精肉店での話である。なぜ、精肉店の店主の金をミラが探すのか。その理由は一つであった。
「うーん、じゃ、その場所まで連れてって」
「おお、助かるよ。後で、揚げたてのコロッケをあげるぜ」
移動して来たのは、精肉店の二階、つまり、店主の生活する家である。そして、問題の玄関に彼女たちはいた。
店主の家の玄関はいたって一般的な扉で、内側から押して開けるものになっていて、その扉は、隙間なく閉じているように見える。内側から玄関の扉を見るようにして、玄関のすぐ左に金属製のバケツ。右側には箒や火挟が靴箱に立てかけてあり、その後ろには何もなさそうである。そして、その靴箱は足がついており、下は靴が二足分入るほどの空間が空いている。店主の太い手を入れても余裕があり、同時にミラとマリアも簡単に手を入れることができるだろう。それから靴箱には扉が付いていて、それが閉じている。靴を脱いで上がったところには、スリッパを置く棚があり、流石に玄関で財布の中身を撒いたとしてもそこまでは届かないだろうという距離がある。もし、硬貨が転がっていったとしたら、その限りではないだろう。
「マリア、そこのバケツに何か入ってる?」
マリアはバケツの中身を見てから、さらにそれをひっくり返し、バケツの底を叩いて、何も入ってないことを示した。
「えっと、靴箱の下」
「ああ、そこは見た」店主が口を挟む。
「そっか、じゃあ、少し待って」
彼女は考えるそぶりはせずに、その場所を眺めているだけ。そのそぶりは何か探しているようには見えない。そして、一分も経っていない中で、彼女はあ、と声を上げた。
「靴箱の《《中》》だ」
店主が訳がわからないというような表情になって、困惑していた。
「いや、ミラちゃん。靴箱、閉まってるだろ」
マリアが無言で靴箱に近づいた。それから、その靴箱とその扉の間を見つめた。
「あ、なるほど」
彼女はそんな声を上げて店主に顔を向けた。店主は不思議そうな顔をして彼女の見ていた靴箱をみた。
「あー、なるほど」
彼もまた彼女と同じ反応をしていた。
「つまり、ここに隙間が空いているんです。五百円じゃなくても入りそうですね」
彼女の示した場所は、靴箱とその扉の間。五百円硬貨一枚が通り抜けるには広い隙間だった。
「しかし、こんなに隙間が空いていたら調べそうなもんだが」
「まぁ、とにかくこの扉開けますよ」
マリアは店主の返事を待たずに、その靴箱の扉を開けた。すると、靴箱にしまわれていたサンダルの上に五百円硬貨が一枚、乗っていた。
「な、ほんとにあった!」
店主は五百円硬貨を摘み、驚いた顔をしていた。
「では、先ほどのこんな隙間が空いていたら、調べるはず。ということですが」
店主の視線がマリアに向く。それを確認して、マリアが口を開いた。
「結論から言えば、本当に貴方は気づかなかったんです。いつもしっかり閉まっているものと考えていた。だから、靴箱の中なんて調べなかった。扉は閉まっているのだから、そこに入るはずはないと思っていた、と思います」
店主はまだ不思議そうな顔をしているので、マリアは話を続けることにした。
「それに店主さんは、ミラが靴箱の中に五百円がある言い当てた時に、靴箱しまってるだろと言いました。それが思い込みだったんです。そう言ったとき、店主さんは靴箱をしっかり確認しなかったでしょう?」
「あー、確かにな。きっちり閉まっているもんだと思ってたしな」
店主は納得した様子で首を上下に動かした。
「んー、もうこの靴箱はダメだな。閉まらないんじゃ、どうしようもねぇ」
「え、閉まるよ」
店主の言葉を聞き、それに返事したのはミラであった。
「は? いや、壊れてるから隙間が空いてんだろ?」
「五百円が乗ってたサンダルが引っかかってるだけだって」
ミラの言葉にマリアがそのサンダルを奥に押した。彼女は少しだけ抵抗を感じたが、サンダルは奥に入った。それから、扉をゆっくりと閉める。すると、ぴったりと隙間なく扉は閉まった。
「おお、直った」
「直ったんじゃなくて、サンダル押しただけですよ。私は図工、苦手ですから」
「それじゃ、解決だね。おじさん、コロッケちょうだい!」
ミラの笑顔に店主はまいったというような顔になって
「はいよ。色々助かったから、コロッケは三つずつやるよ。さ、店の方に行くか」
と告げた。
精肉店に戻ってきて、彼女たちはコロッケを待っていた。
「ここのコロッケを一度に三つも食べれる!」
「貴女、ここのコロッケ大好きだもんね。スーパーのコロッケは一切食べないし」
「あそこのは美味しくないもん。パサパサしてるし、ソースかけることが前提だし。素材の味が死んでるよ、うん」
グルメ気取りなことを言いながら、目を瞑り、何度か頷く。
「はいよー。それぞれ三つな。それにしてもやっぱり凄いな、ミラちゃんの直感とマリアちゃんの推理は。探し物ならミラちゃんマリアちゃんにお任せって感じだなぁ」
「コロッケくれるなら、いつでもお任せ!」
「まったく。調子に乗らないの」
マリアがミラを窘めたが、ミラは幸せそうにコロッケを頬張っていて、全く聞いていないようだった。
「いや、いい。こんなコロッケで探してくれるなら、ありがたいよ」
「こんなじゃないですよ、本当に。ミラも私もここのコロッケ大好きですからね」
マリアはほら、とミラの方を見た。
「ああ、たしかに。こんな幸せそうな顔されたら、作り甲斐があるってもんだよな」
ミラの笑顔は店主も笑顔にした。
「じゃ、また何かあったら頼むわ。商店街の連中のことも助けてやってくれ」
「ええ、もちろんです。何度もお世話になってますし」
「じゃーねー!」
彼女たちは商店街で頼りにされている女子高生二人組だ。今の精肉店以外の店でも何度か探し物などを解決している。なぜ、彼女たちにそれを頼むのか。その理由は、見ての通り素早く解決するからである。ミラの直感とマリアの推理を合わせて、二人は謎を解く。しかし、彼女自身も気づいていないことなのだが、ミラの能力は直感ではない。無意識に情報を集め、それを無意識に整理しているのだ。だから、そこから導き出される答えが正解に近いものである。しかしながら、彼女自身が全く推理の過程がわからないために、これをマリアが補足するのである。つまり、答えだけを知りたいならミラだけでも良いのだが、答えだけで納得する人は稀。その納得させる、推理の部分をマリアがするのだ。つまり、人を相手に何かの謎を解決するには二人いなくてはいけないのである。
「ねぇ、マリア。コロッケちょうだい?」
「貴女は貴女の分があるでしょう」
「食べちゃったもん」
「じゃ、それでおしまい」
「マリアのはまだ二つあるでしょ?」
ミラとマリアは精肉店を出て、帰路についていた。しかし、コロッケをもらった直後から食べていたミラとゆっくり一口ずつ食べていたマリアではマリアの分が残っていて当然である。
「えー、マリアのけちんぼー。食い意地張ってるなぁ、もう」
「それは貴女でしょ」
流石に好きというだけあって、マリアもこのコロッケだけは渡したくないらしい。
「ねぇ、マリア」
「あげないわよ?」
「いや、違うって。ほら、向こうの、あの人」
彼女の視線の先には紺のスーツに身を包み、顔全体を隠す仮面をつけた人がいた。スーツは女性物なので女性と推測されるが、それが本当かどうか、わからない。
「あの人、テリー女史って人かな」
彼女はこの商店街では有名な人物である。この町で探偵をしていて、彼女が解決できない問題はないと言われているほどで、この町以外でも活躍している。警察にも頼られる程の推理能力の持ち主で、この町の外でも活躍しているそうだ。しかし、そのプライベートは謎で、なんともミステリアスな人物である。
「まさかとは思うけど、話しかけに行くわけじゃないわよね」
「やっぱりダメ?」
「もう帰るのよ? あの人に話しかけてたら遅くなるわ」
「うー、遅くなったら怒られるし。でも、我慢は難しい。このままじゃ眠れない!」
「はぁ。わかったわ。話しかけてきても良いから、遅くなる前に帰りましょ」
「やったー! じゃ、行ってくる!」
今の許可が出た瞬間の速さは今までで一番速かったかもしれない。
「ま、これで私のコロッケは無事ね」
マリアはそう言いながらミラの後をゆっくりと追った。
「テリー女史って人だよね」
ミラは無遠慮に仮面の女性に話しかけた。女性は顔だけミラに向けた。
「ええ、そうよ。何か用なの」
「探偵なんだよね」
「まぁ、そうね。一応、探偵ね」
仮面の女性はミラの不躾な態度を全く気にせずに応対する。
「推理のコツってあるの?」
「推理のコツね。まずは情報収集かしらね。そして、何か違和感があったら必ず調べること。まずはそれくらいかしら」
「違和感?」
ミラの能力は違和感を無意識に感じているため、違和感という言葉は知っていても、彼女自身がそれを自覚しているわけではない。つまり、彼女は違和感を感じることなく正解を導くため、違和感を抱くことはない。
「そうよ。貴女はまず違和感に気づくことね。それがわからないと、貴女自身の能力が勿体無いわ」
「私の能力って、直感のことかな」
「ふふ、まぁ、答えは自分で考えなさい。それじゃ」
仮面の女性はそう言って去っていった。
「私自身で考えるって、どうすればいいの」
彼女の呟きは彼女には届かなかったようだ。
「ミラ、話終わったの」
「終わったけど、自分で考えて答えを出すんだって」
「ん? どういうこと」
「私の能力をちゃんと使うには私自身が違和感に気づかなきゃいけないみたいなんだけど、それが本当かどうかそれ自体を自分で考えなくちゃいけないんだって」
「あー、ごめんミラ。何言ってるのか、流石の私もわからないわ」
「うん」
ミラは珍しくその元気さが引っ込んでしまっていた。マリアはまったく、といつもの口癖が口から出た。
「ほら、これ。あげるから元気出しなさい」
彼女が差し出したのは一口だけ食べられたコロッケだった。ミラはそれを見つめ、次にマリアに顔を見た。顔にありありと、食べて良いのと書いてある。
「食べなさい。一口だけ食べちゃったけどね」
「ありがとう!」
マリアのコロッケをもらったミラは元気に笑って、それを大事そうに食べていた。
「貴女はそれくらいの元気がないと、こっちの調子が狂うわ」
そんな文句を言いながらもマリアもミラの顔を見て、笑っていた。
「マリア、今日はありがとね」
ミラの家に前で、珍しく彼女は真面目な顔で礼を述べた。
「別に良いわよ。いつものことでしょ」
「だけど、毎日毎日、迷惑かけちゃってるみたいだし、私の直感はマリアがいないと誰も信じてくれなかったと思うし。とにかく毎日色々ありがとうって思ったんだよ」
彼女は先ほどのことがあったからか、どこか弱気な様子だ。
「まぁそうね。毎日毎日迷惑かけられてるし、ミラの補足はしなきゃいけないし。自制してほしいことがいっぱいあるわね」
ミラは不安だった。毎日迷惑をかけてしまって、いつか彼女が自分から離れてしまうんじゃないかと考えることもある。でも、自分の好奇心に逆らうことはできないし、もし好奇心を無視しようものなら夜も寝付けなくなるほどだ。だからこそ、マリアがいつか私の面倒を見るのに疲れてしまったら、私はどうしたら良いのだろう。彼女にはそんな不安があったのだ。そして、普段こんなことを言わない彼女がこんなことを言っている。ミラはマリアが離れるのが今なのかと思って、俯いていた。
「でも、貴女といると私も楽しいのよ。貴女の好奇心は私に新しいものを見せてくれるわ。貴女の直感に筋道を立てるのは、頭を使ってる感じがして面白いし。こんなことを言うのは少し恥ずかしいけれど、私も貴女が好きよ」
瞬間、マリアの体に衝撃がきた。
「私も!」
ミラが大きく宣言しながら、マリアに抱きついていた。
「まったく。ほら、もう帰るわ。また明日ね」
「迎えに来てくれる?」
拭いきれなかった不安が彼女にそんな言葉を言わせた。
「毎日、迎えに行ってるでしょ。明日もちゃんと来るわ」
「うん。また明日ね」
ミラはマリアに背中が見えなくなるまで、手を振り続けた。
ピンポーン、ピンポーン。
「……あい、佐藤実羅です。詐欺はお断りです」
インターホンから幼稚園の演劇のような間延びした声が聞こえてきた。
「私よ。鈴木真理明。というか、何その挨拶」
「これさえ言えれば詐欺には引っかからないんだよ」
「誰に教えてもらったの」
「テレビで」
マリアはそんなことだろうと思った。
「もうやめなさいね」
「うん。やっぱり変だと思ったんだ。こんなので詐欺をやめるはずないよね」
「分かってくれて良かったわ。それじゃ、学校行くわよ」
ミラは、はーいと気持ちの良い返事をして、マリアの隣に並び、二人は歩き出した。
今日、ミラは五時限目の授業で終わりで、マリアは六時限目まで授業があるため、ミラは先に商店街に降りて来ていた。
「どうしよっかなぁ。マリア、いないし」
彼女は面白くなさそうな顔をしながら商店街を進むが、少し進んだところで足を止めた。
「やっぱり、マリアのこと待とうっと」
彼女は近くにあったパン屋でバターの良い香りのするメロンパンを一つ買い、書店街の入り口近くにあるベンチに腰掛けて食べ始めた。
「んー、この商店街の食べ物はどれも美味しい。毎日食べても飽きないね」
食通気取りで何度も頷いた。一人でいても落ち着きのない娘である。
マリアを待っていると、一人の少女が近づいて来た。
「おねーちゃん、みらって人?」
ミラは頷く。
「あのね、探し物の達人なんだよね」
「まぁ、そうかなぁ。探し物ならお任せだよ!」
ミラはその言葉で調子に乗り始めた。彼女の悪い癖が出てしまっている。しかし、今はマリアがいないために、彼女のブレーキ役になる人がいない。その結果。
「何か探してるなら、このミラが探しましょう!」
彼女は相手が何を探しているかも聞かずに、得意気に依頼を受けてしまった。
「それで、何を探しているの」
「えとね、金メダル」
「え、金メダル?」
少女は頷いて、そうだと主張する。ミラはまず、七、八歳ほどの少女が金メダルを持っているのか、もし持っているとして、金メダルを外で落とすことなんてあるのかと考えていた。そして、テリー女史が言っていた違和感というものを少しは理解できた気がした。
ミラはまず情報を集めることのした。
「そのメダルはどんなの」
「えっと、キラキラしてて、お花が貼ってあるの。それでね、首からかけれるようになってるの」
「あー、そうなんだ」
ミラは心の中で、それは分かってるんだよなぁと思っていた。新しく出た情報としては、花が貼ってあるということ。これ以上の新しい情報はない。ミラはこう思った。あー、マリア早く来てくれないかなぁ、と。
まだまだ、始まったばかりです。
まだ、特になにもしていないので、私も特になにも言いません。
次回をお楽しみに!




