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田舎町の魔女  作者: まー
一章
4/16

探検4

1-4


「それじゃ、体を診るわね」

カルテを読んでいた手を止めて、アリスがノームの体に触れる。魔女の魔法は、対話によって成り立っている。病の体と、動物と、空と、大地と対話するのだ。体を診るときには、体自身にその様子を聞く。動物を従わせるときには動物と交渉する。天候を変えるときには風や雲に頼みこむのだ。そうであるから、魔女はあらゆるものに敬意を払わなければいけない。どんなものであれその心を動かすには、恐怖によって支配するか、良い関係を築く他にないのだから。

「問題はなさそうね。だいぶ良くなって来てるみたい」

「本当?それなら、魔女学校の町に行ける?」

「そうね、ご両親に頼んでみてもいいかもしれないわね」

来月には、ノームの十五歳の誕生日がある。その誕生祝いとして、ノームは魔女学校の町に連れていってもらうことをお願いしていた。アリスも初めは渋い顔をしていたが、毎日のように頼み込むことで、「体調が良かったならば」という条件付きで承諾してくれた。

 ノームはこの田舎町から出たことがほとんどない。生まれつき肺に疾患を抱えていたノームは、少し運動をしただけでも呼吸ができなくなることがある。咳き込みながら呼吸も覚束ないノームの姿は、両親を過保護にするのに十分なものだった。しかしながら、両親は絶対的な信頼をアリスに寄せている。それまでのノームは定期的に発作を起こし、その度に生死の境を彷徨っていた。その発作が続く間、ノームはいつ終わるとも分からない苦しみに苛まれていたし、両親は自分自身の無力さに打ちひしがれるしかなかった。しかし、アリスが町に来てからは一度しか発作を起こしたことがない。それも、アリスが町を離れた一年前のことだけだ。久々の発作に苦しむノームを、アリスは奇跡のように救ってくれた。それ以来、両親は絶対的な信頼をアリスにおいていた。アリスをよそ者として見ていた住人の目が変わったのも、その頃だったと思う。その力を町のために発揮する必要不可欠な魔女として、アリスは本当の意味で受け入れられたのだ。そのアリスの言葉ならば、ノームの両親も聞き入れるに違いなかった。

「約束だからね」

憧れの魔女学校の町がもうすぐそこにある。魔女学校の町のほど近くには首都もある。うまくいけば、首都にも連れていってもらえるかもしれない。アリスにも言っていないが、これは下見も兼ねていた。もう少しで始まる大冒険に、ノームの心はこの上もなく弾んでいた。

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