表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎町の魔女  作者: まー
一章
1/16

探検1

1-1


ノックの音が部屋に響く。部屋の主であるノームは、読んでいた本を閉じる。

「入ってください」

「失礼します」

いつもの事とはいえ、よそよそしい挨拶が少しおかしい。アリスは診療道具の入ったバスケットを机の上に置く。

「大丈夫だった?何か変わったことはない?ごめんね、一ヶ月も留守にして。隣町のお医者様に頼んだとはいえ、あなたの病気は繊細なのに」

アリスは手際よく、それでいて穏やかに、ノームの体を確認する。魔女の診察は医者の診察とは種類が違う。自分の患者を医者に任せるという事自体、アリスは気が気ではなかったのだ。一年程前に彼女が二週間ほど町から離れたとき、ノームが発作を起こしたことがある。アリスの帰還があと二日遅ければ、ノームは今ここには居なかったかもしれない。

「アリス、今度の旅はどうだったの?」

「よくないわね。相変わらず、ヒヤクソウの原産地は荒らされたまま。なんの動物が原因なのかも分からない。あなたを置いてまで行ってきたのに。情けないったらないのだけど」

隣町の医者が置いていったカルテをパラパラと見ながら、アリスは申し訳なさそうに答える。

「あなたの分のヒヤクソウが失くなることはないけど、このままでは値段が高騰するかもしれない。あそこはかなり大きい原産地だったから」

ヒヤクソウは薬草の原料だ。魔女の薬草は、大体全てヒヤクソウを使って作られる。ヒヤクソウを乾燥させ、粉にして、すり鉢に入れて混ぜながら魔法を込める。ヒヤクソウを媒介にすることで、魔女の魔法は体に届くのだ。

「今度の旅の話聞きたいな。ヒヤクソウの原産地ってどんなところなの?」

「魔女学校の更に東、突き出した岩山の更に上に原産地があるの。ヒヤクソウっていうのはたくましい草だから、高地の岩と岩の間にひょこっと生えてて、取りに行くにはかなり体力が必要なのよ。魔女学校の生徒がバイト代わりに取りに行ったりするわ。私も学校にいた頃は、よく行ったの。イノシシが出たりして大変だったんだから」

「いいなあ、私も取りに行きたい。ヒヤクソウ」

「もうちょっと体力つけて、原生地が安全だって分かったら、私と一緒にね」

アリスがノームの歳には、アリスはそんな冒険をしていたのだ。魔女学校に通って、岩山を登って、薬草を集めて、イノシシと対峙して。そんなアリスが、ノームは素直に羨ましかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ