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専業主婦になります!  作者: まとまと
第二章 イツキ家の悲劇
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畳の下には

―タチバナ ヤヨイ―



「あなたたち、こんなところで何をしているの」


「「!?」」



いきなり声を掛けられ慌てて振り返るとそこには今しがた目を覚ましたばかりであろう姉さんが立っていた。

音もなく入ってくるもんだから心臓が止まるかと思った・・・。



「び、びっくりした・・・。あ、そうだ。姉さん体調の方は・・・」


「もう大丈夫よ。昨日はいろいろとありがとう」



嘘だ。

確かに昨日より顔色は良くなっているけどまだ体調万全と言えないことは誰が見てもわかる。

それもこれも全部私のせいか・・・。



「それよりなんでわざわざこんなところに・・・。鍵まで壊して」



そうだ鍵だ。

ここに入る前から思っていたことだけどなんでこんなろくに人も住んでいない場所に鍵を掛ける必要があったんだろう。

こんな人気のない田舎では家にすら鍵を掛けない所も珍しくはないのに。


いくら人がいないとは言え寝たきりの私の父親がいるのだから母屋に鍵を掛けるのはわかる。

でも今私たちがいるこの場所は何もない。

いや、何もないように見えるけど・・・。



「鍵を壊したのは謝る。ごめんなさい。でもなんでこんな場所に鍵なんて・・・。この鍵を付けたのって姉さんなの?」


「え、えぇそうよ。もう・・・こんな所に入ることもないと思ったし見るのも嫌だったから・・・。それはあなたも同じだと思うのだけど」


「そう・・・だね・・・」


私がかつて能力を発症して過ちを犯した部屋の中央辺りを見つめながらそう呟いていた。

ある程度掃除はされているようだったけどそれでも畳には所々赤い染みが残っている。

あれがあの時の男の子の物なのか私の物なのかはわからないけど、見ていて気持ちのいい物ではないことは確かだった。

見たくなければ入ってこなければいいだけの話だけど、それでも鍵を掛けておきたくなる気持ちは痛いほどわかる。



じゃあ鍵を掛けた理由は誰も中に入れたくない、入ってこられるとまずい、なんてことではないんだよね?



「じゃあさ姉さん。もう一つ訊きたいことがあるんだけど」


「な、何かしら」



私は睦月を召喚し、畳と畳の間に刺しこんだ。

サツキと姉さんはいきなりの私の行動に目を丸くして絶句していたけどそれを横目に私は続けた。

睦月を傾けてできた隙間に左手を突っ込み、強引にこじ開けた。

あまりに長い間放置され続けたせいか畳の裏は湿気ており、一部ボロボロと崩れその下にあるものに降りかかった。



そして、『それ』が姿を現した。



「これ・・・なんだかわかる?」



見るからに重厚な赤い鉄扉が地面に埋め込まれている、というのが第一印象だった。

上から見ただけでは厚さはわからないけど一般人が持ち上げようとしても難しいかもしれない。

それどころか下手をすれば腰をやってしまいそうだ。



「こ・・・これは・・・」



ね、姉さん?

なに?その反応は。

私はてっきり心当たりなんて全くないのものだと思っていた。

違う、そう思いたかった。

まさか姉さん、地下の魔力について何か知っているんじゃ・・・。








「床下収納・・・?」



瞬間、私とサツキは盛大にずっこけた。

身構えていただけに脱力感がハンパないよ姉さん・・・。



「でもなんでこんなところに・・・。母屋にあった方が助かる気がするのだけど」



どうやらツッコミ待ちのボケではないようだった。


いやいやこんな場所に床下収納があるわけーとか、こんな重そうな扉付ける必要ないよねーという言葉を飲み込んだ私は内心ほっとしていた。

良かった・・・姉さんは・・・何も知らないんだよね・・・?


地下に魔力が充満しているなんてただ事ではない。

そんなことにあの姉さんが関わっているわけないもんね。


ほっと胸をなでおろした私は扉の取っ手に手を掛けた。

とにかくこの下にあるものの正体を確認しないと。

両手で取っ手を握り、思いっきり持ち上げると・・・。




バキン!




大きな音を立てて錆びついた蝶番が真っ二つに折れていた。



「お母さんまた・・・」


「えぇ!?今度はわざとじゃないもん!」



仕方がないので持ち上げて開けるのではなく扉をずらしてみた。

すると中は古い井戸を思わせるような底が見えない空洞になっており、幅はだいたい畳を二枚並べたくらいの広さはあるだろうか。

そして、下に降りるための金属製の梯子が備え付けられていた。


鉄の扉なんてものがある以上確定事項ではあったけど、やはり人工的に作られたものらしい。



「姉さん、私ちょっとこの中見てくるから外に出ててもらっていい?」


「え・・・え・・・?」



すっかり床下収納スペースだと勘違いしていた姉さんは混乱していた。


サツキは・・・?



「・・・」



黙って私の方を見ていた。

やっぱり一緒に来るつもりらしい。



「ねえサツキ、一つだけ約束して」


「なに?」


「お母さんが逃げなさいって言ったら絶対に引き返して。例えそれがどんな状況でも。それが約束できなかったら・・・サツキをどこかに縛り付けてでも一人で行くから」



正直私には娘を縛り付けて身動きできないようにするなんてことできるわけないけど、私にもしものことがあったらサツキには一人ででも逃げてもらわなければならない。

これくらいの脅しは必要だった。



「わ、わかった」


「絶対だからね」





この鉄扉の状態を見る限りかなり前からこれは設置されていることがわかる。

地下の状況と直結するかはわからないけどこれ以上この家に住んでいる姉さんを危険に晒すことはできない。

魔力の発生源が何かまではわからないけど、もしかしたらある日突然魔物が押し寄せてくるかもしれないのだから。




「よし・・・じゃあ行こう」



私はポケットに入れていたペンライトを手に取って梯子を降り始めた。

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