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専業主婦になります!  作者: まとまと
第二章 イツキ家の悲劇
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寝て起きて

―タチバナ サツキ―



「ああああああああああああああああああああああ!!!」




「ん・・・?なに・・・?」


叫び声で目が覚めたわたしはまず隣にお母さんがいないことに気づいた。

襖が少し開いているということはトイレにでも行ったのかな。

でもそうだとしたら今の叫び声はいったい・・・。


枕元に置いてあった懐中電灯が一つなくなっているということはお母さんが持って行ったのか。



そんなことよりさっきの叫び声はお母さんだ。

何が起きたのかはわからないけどとにかく行かないと。


懐中電灯のスイッチを入れて中途半端に開いていた襖を開け放ち廊下に出た。

台所の方を照らしてみても誰もいない。

じゃあやっぱりトイレかなと振り返って照らしてみるとそこには・・・



「お、お母さん!?」



懐中電灯を片手に床に倒れて気を失っているお母さんの姿があった。



--------------------





「お母さん。ねえお母さん」


「・・・ん・・・んん・・・。あれ、ここは・・・布団?あぁそっか戻ってきたんだ」


「え・・・ちょ、ちょっとしっかりしてよ。お母さん廊下で倒れてたんだよ?それに叫び声が聞こえたし・・・」


「さ、叫び声って・・・?誰の?」


「誰のって・・・お母さんのだよ!ねえ本当に大丈夫!?」


「お母さんの・・・?え・・・っと?」



まさかお母さんとは別の誰かが叫んだ?

いや、それだといろいろおかしい。

この家には今、わたしとお母さんとナツさんとお爺ちゃんしかいない。


お母さんを担いで戻ってくる途中でナツさん達が寝ている部屋を覗いてみたけどまだ寝ていた。

あの叫び声でも起きないということはよほど疲れていたということなんだろう。

同時に叫んだ主は別の人ということになる。

悪夢を見て叫んでしまった、ということも考えられなくもないけどそれだったらすでに起きていないとおかしい。


そもそもわたしがお母さんの声を聴き間違えるなんてことあるはずがない。

考えられるとしたら・・・



「なに、もしかして幽霊でも見・・・」




あ、しまった。




「・・・うぅ・・・」



枕を抱きしめて涙目でこっちを見ている。

と思ったらまた布団に潜り込み掛け布団を頭から掛けて縮こまってしまった。


「も、もう寝る!」


「ご、ごめんごめん。ねえ、本当にさっきの声お母さんじゃないの?」


「うん。だって覚えがないもん。それよりお母さん本当に廊下で倒れてたの?」


「ナツさんがいる部屋の前辺りでね・・・。あ、そうだ。バス降りる時気分悪そうだったけどそれが原因だったりしない?」


「う、うーん・・・。でもいきなり気を失うほどでもないし・・・・そもそも気を失った覚えもないし・・・」


お母さんは嘘をついているようでもわたしをおちょくっているようでもない。

やっぱり本当になにかいたんじゃ・・・。

でもそれを言うのはさすがに可哀そうか。

ちょっと見てみたいけど。



「お母さん・・・。また気分悪くなったりしたら言ってね」


「心配してくれてありがとう。お礼に抱き着いてあげよう」


「ちょ、ちょっと・・・。まぁいっか・・・」



今はおとなしく抱き着かれておこう。

正直ちょっとわたしも怖くなってきたし。





さっき時間を見るとまだ2時すぎだったのでそろそろ寝よう。


結局この時なぜお母さんの声が聞こえてきたのか、なぜ倒れていたのかわからないままだった。






・・・本当に何か出たわけじゃないよね・・・?




--------------------



――翌日



ピピピピというケータイの目覚ましの音と共にわたしとお母さんは同時に起き上がっていた。

電気が通っていないということはわかっていたので、基本的に電源は切っているのだけど今は目覚まし時計代わりに電源を入れていた。

一応予備のバッテリーは持ってきているけど。


「おはようお母さん」


「うん、おはよう」


わたしとお母さんは寝起きの良さには定評があるので一度のアラームで難なく起き上がることができた。

朝の7時ということもあって少し肌寒い気温だけど逆に目を覚ますにはちょうどいいようにも感じる。


朝起きてまず何をしたかというとナツさんとお爺ちゃんの様子の確認。


「・・・すぅ・・・すぅ・・・」


ナツさんは静かな寝息を立てて寝ていた。

もうすでに10時間以上は寝続けているにも関わらず、まだ一向に目を覚ます気配がない。


「姉さんって普段はすごく規則正しい生活してるんだよ。その姉さんがまだ目を覚ましてないなんて・・・。やっぱりそれだけ疲れてるんだよね・・・」


「お母さん・・・」


お母さんは唇を噛んでいた。

きっと今までのことを悔いているのだと思う。



『私が早く姉さんに手を差し伸べていれば』



そうしていればここまで追いつめられることはなかった。

過労でいきなり倒れるなんてことはなかったはず。

でもねお母さん、きっとナツさんはお母さんにそんな顔してほしくないはずだよ。



「お母さん、きっと大丈夫だから」


「・・・うん」


「さあ、朝ご飯の準備をしに行こうよ」



わたしはお母さんの手を引いて台所へ歩き出した。


とにかく今日一日ナツさんにはとびきり楽をしてもらうことにしよう。


今後についての話し合いは少し落ち着いてからでも遅くはないはずだから。

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