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専業主婦になります!  作者: まとまと
第一章 これが専業主婦の日常
19/44

よろしくお願いします

―タチバナ サツキ―



「えっと・・・お母さん何してるの・・・?」



人形を一刀両断した後、お母さんはなぜか人形の上半身と下半身を横に倒していじっていた。



「いや、弁償しろとか言われたらどうしようかって・・・」



もしかしてくっつけようとしてるの!?


修復不可能なパズルに頭を悩ませていると、先ほどお母さんが出てきた扉の方に二つの人影が見えた。

団長とアオイがこちらに歩いてきている。


・・・身長差すごいな。


わたしと目が合うとアオイがこちらに走ってきていた。


「やったね!おめでとう!」


わたしの手を握りながらお祝いの言葉をくれた。


「あ、ありがとう」


嬉しいけどちょっとだけ照れ臭いな・・・。


人形にむかってうんうん呻っているお母さんを冷ややかな目で見ながら団長も目の前まで来ていた。

テストに合格して団員になるということはこれからこの人の下で働くことになるんだ。


「こ、これからよろしくお願いします!」


わたしは目の前の巨人・・・ではなく団長に頭を下げていた。

横を見てみるといつの間にかお母さんが無言で団長の方を見ていた。


「娘のこと・・・よろしくお願いします」


いつものおっちょこちょいなお母さんではなく、一年前に校庭で見た姿が重なって見えた。

どれだけ真剣に頭を下げているかが伝わってくる。


「あぁ」


団長はそういって頷いていた。

わたしはというとどうしても緊張で体が強張って肩がどんどん上に上がっていってしまったいたけど、今度は団長がわたしたちに向かって頭を下げていた。


「こちらの不手際で迷惑をかけてすまなかった」


きっと規定値の30倍の魔力を注入してしまったことに対して謝罪しているのだろう。


「い、いえ!そんな迷惑だなんて・・・いつっ・・・!」


最後にわき腹を殴られたところがどうしても痛む。

防御もできず、もろに攻撃を受けてしまったので仕方ないことなのかもしれないけど。


「医務室に行くといい」


団長は初めにわたしを見て、次にお母さんの方に視線を移しそう言い、お母さんは無言でうなずいていた。

今のだけで意思疎通ができてるってすごいな。

医務室と一言で言っても、「どの医務室に行け」とまでは言われていないのに。





「迷惑をかけた詫びに夕食をごちそうしよう」


唐突に団長がそんなことを言い出していた。


「焼肉連れて行ってくれるの!?」


お母さんが目を輝かせている。


「焼肉とは一言も言っていないし、お前に言ったわけでもない」


「え?サツキを誘うってことは私も行くってことだよ?」


何を言っているの?とでも言いたげだったけどそれはこっちのセリフだった。

まぁ、こっちとしてもお母さんがいてくれた方がいいけど。


「アオイちゃんも行こうよ」


「ボ、ボクもですか?お邪魔してもいいんでしょうか・・・」


「一緒にサツキをお祝いしようよ!私が出すからさ」


「いい、一人が二人になったところでかわらん」


団長がそう言うとお母さんは「あぁ、そう?」と言いながら財布をチェックしていた。


「あ、私いったんお金下ろしてくるね」


「俺が出すから大丈夫だ」


「え、本当にどうしちゃったの今日・・・」


お母さんは割と本気で心配そうに団長の方を見ていた。


「迷惑をかけた詫びと言っているだろう。まだ夕飯時までは時間があるからとりあえず診てもらってこい。合格通知書は作成出来次第追って連絡する」


その書類が完成してから正式に団員にとして扱われるらしい。

まぁ口頭で合格しましたよと言われて今日から団員というわけにはいかないのは納得できる。

わたしは後日本部にその書類を受け取りに来ることになった。



とりあえずいつまでもここにいてもしょうがないので闘技場を後にしようとしたらお母さんの様子が少しおかしいことに気づいた。

観客席の方を見ているのかな。


「お母さんどうしたの?」


「え?あぁ、なんでもないよ」


お母さんはいつもの笑顔でそういっていたのでわたしはそれ以上触れなかった。



--------------------



団長とはいったん別れ、お母さんに連れられて医務室の前まで来ていた。


「あ、ボクここで待ってますね」


アオイは気を利かせてくれたのかドアの前で待ってると言っていた。

わたしは全く気にしないのだけど。


お母さんが扉をノックすると中から「どうぞ」と聞こえてきた。

失礼しますと言いながら中に入っていったのでわたしも倣って挨拶をし中に入った。

医務室にはだいたいお母さんと同年代くらいだろうか、眼鏡をかけた男性が座っていた。

白衣を着ており、第一印象がいかにも医者っぽい人だった。

・・・まぁ医者なんだろうけど。


「これから娘のことよろしくお願いします」


団長にもやっていたように先生に向かっても頭を下げていた。

これから先わたしが怪我をしたらこの人に診てもらうことになるのだろう。


「団長から聴いています。お任せください」


もう連絡がいっていたようでその場で診察を受けた。

初めに人形の蹴りをガードしたときに使った右腕と最後に殴られたわき腹を診てもらうことになったのだけど、骨が折れているわけでもなかったの特にこれと言って治療が必要というわけでもなかった。

それでもアザにはなっていたので湿布を貼ってもらった。

肉体強化の特訓を経てわたしの体も丈夫になったようだ。


「あれからお変わりは・・・」


今度は突然先生がわたしではなくお母さんにそんなことを聞いていた。


「い、いえ!私の方は大丈夫です!あはは・・・」


若干顔がひきつっていた。

もしかして・・・。


「お母さんどこか体悪いの・・・?」


そう聞くとお母さんではなく先生が口を開いていた。


「いえ、ヤヨイさんが現役時代に僕が担当医だったので訊いてみただけです。相変わらず元気なようで安心しました」


「何不自由なく生活させていただいております」


お母さんは何かホッとしたような顔に見えた。



「お母さんあまり無理しないでね」


「それはこっちのセリフ」


「あいたっ」


お母さんにおでこをツンとつつかれていた。







わたしが警備団に入りたいと告白してからは昔のことをよく話してくれるようになった。





でも・・・





お母さんはまだ何か隠しごとをしているような気がしてならなかった。



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