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専業主婦になります!  作者: まとまと
第一章 これが専業主婦の日常
13/44

最近の小学生ってすごい

―タチバナ ヤヨイ―


私は落ち着きを取り戻した後、リビングに戻ってきてテーブルに着いていた。


「・・・」

「・・・」

「・・・」



すっごい気まずい!!!


理由としては、私が号泣したときの声がアオイちゃんの耳にも入っていたことだった。


一応サツキが先に戻ってきたときにフォローしてくれたみたいだったけどその時のやり取りが


「え、えっとタチバナさんのお母さん・・・の声?だ、大丈夫・・・?」

「え!?えーと・・・ちょっとドアの角に薬指ぶつけたみたいで!」


さすがの私でもそんな器用な指のぶつけ方はしないし、足の指ぶつけて声をあげて泣き叫ぶ31歳というのもどうなの娘よ。

咄嗟のごまかしならまだ私の方がマシだ、なんて誰も知らないところで自分の娘と張り合っているとアオイちゃんが口を開いていた。


「あ・・・こ、この唐揚げおいしいですね」


ごめんねそれ冷凍食品なの・・・。

それにしても小学生の子にものすごい気を遣わせてしまっている。

さっきとは別の意味で泣きそうになっていた。


「あ、ありがとう~・・・」



・・・。

会話が終わってしまった!

せっかく話題を作ってもらったのに。

サツキは私とアオイちゃんの顔を交互に見ながら話題を探しているようだった。



「そ、そういえば明日学校だよね?教科書とか取りに一度家に帰るなら明日送るよ。・・・歩きでだけど」


我が家には自動車というものがない。

免許を持ってる人間がいないから当然なのだけど。

以前何気なく車があったら便利だよね、という話をサツキにしたら


「お母さんが車の運転するの!?人を殺す気なの!?」


と言われてから運転免許を取りにいく気なんてなくなってしまった。

一応とても傷つきました。


まぁ私の場合は車を使うより自分の力で移動した方が圧倒的に速いから問題はない。

日常的に魔力を使って移動するわけにはいかないけど。



「・・・いえ、そのまま学校に行くので大丈夫です」


一瞬悲しい顔をしていたのはたぶん気のせいじゃない。

やっぱりご両親と仲が良くないとか家に居づらい理由があるのだろう。


「あ!やっぱり気になります?」


話題を見つけたと言わんばかりにパァッと顔が明るくなっていた。

ていうか私そんなに気になってそうな顔になってしまっていたのか。


「い、いや・・・そんなことは・・・」


「大丈夫ですよ。ボクのお母さん、やっぱりちょっと変でしたよね?」


変。

正直言うとおかしな人だと思った。

まるで自分の子供に対して何の関心も抱いていないような。

仮に電話をかけてきた人が私ではなく誘拐犯だとしたらどうしていたんだろう。

「はいそうですか」で済ませていたのだろうか。

そんなことを考えてしまう。


「前まではあんな感じじゃなかったんです。お父さんが事故で死んじゃって、それからあんな様子で・・・。それにボクのお母さん本当は男の子がほしかったみたいで」


それで『ボク』か。

きっと母親に気に入られるための、この子なりの精一杯の努力なんだ。

わざわざ私に対して「あんな感じじゃない」と言ってくるということは、お母さんのことを悪く思わないでと言いたいのだろう。

気持ちはわかる。

私だって家族の身にもしものことがあったら正気でいられる自信がない。

事情も知らずにアオイちゃんの母親に対して一方的に悪い印象を抱いていたのを反省はしたけど、それでも子供のことを蔑ろにしていい理由にはならない。

こんな悲しい笑顔にさせちゃいけない。

だとしたら私にできることは・・・


「アオイちゃん。うちでよかったらいつでも遊びに来てね。ね?」


最後にサツキの方を見ると何度もうなずいていた。

かわいい。


「え・・・でもいいんですか?今日だって晩御飯もごちそうになってるし・・・」


冷凍食品だけどね。


「つ、次来たときはおばさん頑張ってもっと美味しい物作るよ!」


私の必死さが可笑しかったのかアオイちゃんは笑ってしまっていた。


「さっきから思ってたんですけど『おばさん』って感じじゃないですね。なんだかお姉さんみたい」


「うぇ?あ・・・あはは・・・」


不意打ちはずるいですよ!

自分の顔を触ってみると少し熱くなってしまっており、きっと傍から見ると真っ赤になっている。

サツキに至ってはさっきからなぜかニコニコ上機嫌だった。


結局小学生に主導権を握られっぱなしで夕飯が終わってしまった。




--------------------


夕飯を終えた後、片づけをしようと立ち上がるとアオイちゃんが


「あ、ボク洗い物やります!」


と言ってくれたので、せっかくの好意を無下にするのも申し訳ないのでその間にサツキとお風呂に入ることにした。

きっとお世話になりっぱなしでは悪いと思ってくれたのだろう。


お風呂場で少しだけサツキにいたずらをしてから早めに上がり、今度はアオイちゃんがお風呂に入る番になった。

リビングに戻ってきてみるときれいに片付けられていた。

うちのサツキも家事については負けていないと思うけど本当にこの子たちは小学生なのか時々疑うレベルだと思う。


アオイちゃんがお風呂に入っている間に寝床の用意をした。

私の部屋に布団を三つ並べて川の字ならぬ小の字で寝るスタイルにしてみた。

もちろん私が真ん中で両脇に子供二人。



程なくしてアオイちゃんもお風呂から上がってきてもう寝ようかという話になった。

一回寝落ちしてしまったとはいえ私もそろそろ限界だった。

今なら某メガネ君並みの早寝ができる自信がある。



布団に入るとサツキが腕に抱きついてきた。

やっぱり怖かったよね。

気丈に振舞ってはいたけど12歳の子供が体験するにはあまりに過酷すぎた。

死ぬほどつらい思いをして、全く知らない記憶を植え付けられて・・・。


「お母さん」


ぎりぎり聞き取れる声の大きさでサツキが話しかけてきた。


「どうしたの?」


「ごめんなさい・・・」


「え?」


何に対してのごめんなんだろう。


「しんじゃえばいいなんて思ってごめんなさい・・・」



あぁ・・・そういうことか。

私はあの少年が言っていたことを思い出していた。


『ちょっとおばさんのことを嫌いになったり死にたくなってもらっただけだよ』



サツキは何も悪くない。

悪いのは・・・。



「じゃあ今はどう?お母さんのこと好き?」


「うん、すごく好き。大好き」


「ん、お母さんもサツキのこと大好きだよ」


右腕はサツキが抱き着いているので左手で優しく頭を撫でた。



やっぱりこの子には私が付いていないとだめだ。

魔力を使う才能があるとかないとかそんなもの関係ない。

もう二度とこんなことが起きないように今度こそ絶対に私が守る。




私の体が壊れるその日まで。

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