85.生き直す
分家で古ぼけたスポーツバッグをひとつもらい、荷物を詰めた。
貯金箱、卒業証書等を入れたファイル、着替えと二分の一成人式の自分史。
バッグに入りきらない衣類と成績表の類は、ムネノリ君に頼んで灰にしてもらった。
マー君たちは本当なら、三箇日中は滞在する予定だったそうだが、今夜の内に出発することになった。
ジジイたちとは、もう顔をあわせたくないらしい。
ムネノリ君、メイドさん、騎士二人は移動の魔法で一足先に帰ってしまった。
米治叔父さんが駐在所から戻って参加し、契約書が完成した。オレ、マー君、叔父さん、ばあちゃんが拇印を捺す。
もう後戻りはできない。
いや、しない。
マー君の車に乗り込む。
ばあちゃんが、風邪引かないようにとか何とか、長々と心配ごとを口にする。
もう、ばあちゃんに甘えていられないんだ。
実は、まだ何をどう頑張ればいいのかすら、わかっていない。
でも、もうここには戻らないことと、他人のせいにしないことだけは決めた。
ムネノリ君は、もうどうでもいいって言ってたけど、ちゃんと謝ろう。
あれは、オレを許してくれたんじゃなくって、オレのクズっぷりに呆れて諦めてしまっただけなんだ。
許してもらえないだろうけど、せめて約束を守ることで償おう。
エンジンがスタートし、暗い田舎の夜道が車窓に流れた。
もう二度と戻らない故郷の夜は、静かだった。
本文はここまでです。
予約中 2018/03/03 12時と15時に解説をUPします。




