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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2214年1月1日

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82/87

82.奴隷

 オヤジはオフクロを毎日殴っていた。


 オフクロはそれでも何とか、掃除や片付けを続け、料理も洗濯もしていた。今ならオフクロがオヤジに文句を言っていた理由も、オヤジがどれだけクズなのかもわかる。


 オレは、オフクロを殴るオヤジが大嫌いで、子供の頃からなるべく喋らないようにしていた。避けていた。



 なのに、オレはいつの間にか、このオヤジそっくりに育ってしまっていた。



 オヤジの発言は、一週間前のオレの頭の中身そのものだ。

 散らかすだけで家事を一切せず、家事する者を見下して感謝しないどころか、奴隷扱い。

 鏡を見ているようで、胃が痛くなってきた。



 「トヨ、お前さん、あの時、嫁が間男と逐電(ちくでん)しよったって大騒ぎしたげ、あれは真っ赤な嘘かいや?」

 隣保長・大山(おおやま)の爺さんが、身を乗り出すようにして聞いた。


 「今、言った通りだ」

 「あんたら、夫婦仲悪くて有名じゃったげ、さもありなんて信じたが、ありゃ嘘かいな」

 区長の九斗山(くどやま)長老が、目をしょぼしょぼさせながら言った。住職は、数珠を揉みながら口の中で念仏を唱えている。


 「大それたことしでかしといて、ようもまぁ、そんなことが言えたもんだな」

 消防団長・大笹のおっさんが呆れている。

 和田山巡査は黙ってオヤジを睨んでいた。


 ババアが椅子の上で泣き崩れ、他の身内は固い表情でオヤジを見詰める。



 「山端耕作(やまばたこうさく)に質問します。何故、晴海(はるみ)の死を警察に届けなかったのですか。理由を偽りなく言いなさい」


 「山端の跡取りが人殺しなんぞ、外聞(がいぶん)悪いげな。人に知れんように隠した」

 ムネノリ君は、オヤジにも同じ質問をした。


 「家の中の面倒事は、家長が片を付けるもんだげな。俺は埋めるのを手伝っただけで、どうするか決めたのは、家長だ」



 責任丸投げキタコレ。

 ……オレだよ、オレもだよ。オレがそうだよ!



 本格的に胃が痛くなってきた。


 「山端米子(やまばたよねこ)に質問します。山端豊一(やまばたとよかず)の妻・晴海の行方不明について知っていることがあれば、包み隠さず事実のみを言いなさい」

 ババアも二人同様、ムネノリ君に魔法で回答を強制された。ゆっくりと顔を上げて、震える声で答える。


 「存じません。豊一に『嫁は浮気相手と駆け落ちした』と聞かされておりました」

 「あの頃、同居しとったもんは耕作夫婦と長男夫婦と孫のゆうちゃんだったかい」

 隣保長がジジイとオヤジ、ババアとオレを一人一人確認するように見て、言った。

 オレとババアは無言で頷いた。米治叔父さんが口頭で答える。

 「そうです。その通りです。俺は分家に養子に出ていて、姉の瑞穂は帝都に嫁いでいました」


 ……あぁ、そうか、証拠、残さなきゃ。

 録音……喋らなきゃいけないんだ。


 「ゆうちゃんは小さかったげ、ともかく、婆様にも内緒じゃあ? 何ぞいや?」

 「オンナは口が軽いげ、アテんならん」

 隣保長の質問にジジイが短く答えた。


 「先日、印歴二二一三年十二月三十日に、この家の床下から、白骨化した遺体が発見されました。現在、警察が身元の確認を急いでいます。

 山端耕作、山端豊一に質問します。どのようにして罪を償いますか。必ず果たすと約束はできますか。本心を包み隠さず答えなさい」


 「三十年も前じゃげ、そんな大昔のことを今頃ほじくり返して何になる。嫁の実家ももう忘れとるげ、放っとけばええ」

 「とっくに時効になっとるげ、俺は無実だ。償いも何もあるかよ」

 ジジイは眉間に皺を寄せて苦しげに言い、オヤジはせせら笑った。

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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