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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2214年1月1日

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79.親族会議

 米治叔父さんは、歌道寺(うどうじ)の住職、区長、隣保班長、消防団長と駐在さんを呼びに行った。


 おっさん姿のメイドさんが仏間に座布団を並べ、分家の嫁がお茶の用意をする。

 朝十時頃、山端本家の仏間に親族会議参加者とその証人が集合した。

 ジジイたちはまだ戻っていない。



 「あのゴミ屋敷が……」

 区長、隣保長、消防団長が声を揃えて何か言いかけて、続きの言葉を呑みこんだ。感心して、しきりに首を振ったり傾げたりしながら敷居を跨ぎ、仏間に入る。


 住職は一同に黙礼し、仏壇に経を上げ始めた。真新しい畳の清々しい香りに線香の匂いが混じる。


 上座のお誕生日席に、親戚だけど王族でもあるムネノリ君が着き、その膝に黒猫に変身したメイドさん。両脇に双羽(ふたば)隊長と三枝(さえぐさ)

 座敷に近い側の上座から、住職、区長、隣保長、消防団長、駐在さんという証人が座る。

 その対面は身内席で上座から、米治叔父さん、分家の嫁、マー君、ツネちゃん、オレ、ババア。子供らは分家で待たせている。



 叔父さんと住職の間に物置から出してきた火鉢が据えられた。ムネノリ君とババアの席は、畳の上に置いた台所の椅子で、他は先日買ったばかりの座布団。


 全く様変わりしていて、まるで他所の家のようだが、ここはオレが生まれ育った家だ。


 これから起こることを考えると気は重かったが、藺草(いぐさ)と線香の香りのせいか、心は妙に穏やかだった。



 米治叔父さん、マー君、ツネちゃんがICレコーダをポケットに仕込んでいる。

 叔父さんのは自前だが、マー君とツネちゃんのは、賢治と真穂が託して行った物だ。

 待っている間、米治叔父さんが、証人たちに三つ子と騎士を紹介した。



 二杯目のお茶を飲み干す頃、ジジイとオヤジが帰ってきた。



 「何じゃこりゃあぁあぁぁぁぁッ!?」

 ジジイが叫びながらオレの真後ろの障子を開けた。

 仏間の様子と、集まった面々に更に驚いたらしく、「なっなっなっなっ……」と言ったきり、言葉にならない。


 オヤジは、ジジイの後ろで呆然と見ているだけだ。


 「じいちゃん、あけましておめでとう。寒いから、そこ閉めて玄関から回って来てよ」

 マー君がにこにこしながら言うと、ジジイは素直に障子を閉めた。



 二人は襖を乱暴に開け、入ってくるなり怒鳴った。


 「家にあった物どこにやったんじゃッ!!」

 「お前ら何者だ!? 何で外人が居るッ!?」

 ムネノリ君が、二人に杖の黒山羊を突きつけて言った。


 「山端耕作(やまばたこうさく)山端豊一(やまばたとよかず)、そこに座りなさい」

 ロリ声だが、口調も態度もどことなく、双羽隊長を思わせる冷やかなものだった。



 二人は見えない誰かに膝カックンでもされたかのように、不自然な動作でその場に正座した。……いや、正座させられた。オレが隊長にやられたのと同じアレだ。

 呪文を唱えなくても、普通に命令しただけで強制できるのが、ムネノリ君の「力」の凄さなんだろう。


 「あ……ッ! 足が勝手に……!?」

 「目上の者を呼び捨てにするな! 怪しからん!」

 ジジイは普通に驚いているが、オヤジの思考回路はオレの理解の枠を超えていた。今、そんな場合じゃないだろ。



 「山端耕作(やまばたこうさく)山端豊一(やまばたとよかず)、質問への回答以外の発言を禁止します」


 二人はムネノリ君の命令に顔を歪ませた。凄い目付きで正面のムネノリ君を睨みつける。文句を言おうとしたが、口が動かないのだろう。


 仏壇の前で読経していた住職が、区長の隣に戻って一礼した。


 米治叔父さんが座布団から降り、深々と一礼して挨拶を述べる。

 「皆様、本日は新年のお忙しい中お集まり戴きまして、誠に恐れ入ります。二二一四年一月一日、午前十時四十七分、只今より山端家の親族会議を執り行います。尚、この場の発言は記録致します。悪しからずご了承の上、ご理解とご協力をお願い申し上げます」


 ジジイとオヤジ以外の全員が、同意の言葉を口にしたり、頷いたりした。

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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