74.一緒に働こ☆
米治叔父さんが重々しく口を開く。
「俺は宗教君の魔法の力を借りてでも、あの三人に当時のことを確認した方がいいと思う」
冷めきった番茶をすすって口を湿らせ、言葉を続ける。
「何も知らないなら、誰の仕業かはわからんが、少なくとも家族の潔白は証明される。知ってて黙ってたなら、身内の恥だが近所の人たちと、晴海さんの実家にも知らせて、晴海さんの名誉を回復せにゃならん。間男と駆け落ちしたふしだらな女扱いのままじゃ、浮かばれないからな」
オレ以外の全員、中坊二人までもが頷いた。
「い、いや、ちょっと待て、クロだったら、オレら犯罪者の身内で、村八分だぞ!?」
オレは慌てて反論した。
「構わん。本当のことだ」
「私は今県外の大学に行ってて、就職もあっちでするつもりだから」
「俺も別に無理して農業継がなくていいって言われてるし」
「ウチは会社組織にしてあるから、どうしてもダメになったら、田畑は他の社員さんに引き継いで、引っ越して他所に就職するから」
分家の者が口々に言った。
「俺たちは、そもそもここに住んでないからなぁ、縁切りやすいぞ」
「……て言うか、当時三歳児だったし」
「僕はもうすぐあっち行っちゃうから」
巴の三つ子は心底どうでもよさそうだった。
当時生まれてもいなかったマー君の息子は、三つ子の言い分にいちいち頷いている。
「俺、もう遠くの会社から内定出てて、研修の後、海外勤務って言われてるんだ」
「私も、昨日言った通りよ」
異母弟妹も他人以上に冷たい言い草だった。
騎士二人とメイドさんが変身した黒猫は全く会話に参加していない。他人だから当然だ。
何だよ。結論出てねーのオレだけかよ。
ウチらと一緒に働こ☆
数日前にまとめサイトで見た求人広告の残念な美少女キャラの台詞が脳裏を過ぎった。
あ、そうか。
巴家は帝都なんだよな。
だったら、オレがあいつらの家に住んでやればいいんだよ。
そしたら、メイドさんと同居できる。
どの程度の家か知らねーけど、客間くらいはあるだろ。家賃タダだし、多少の不便は大目に見てやるよ。
さっきムネノリ君は、オレを諦めさせる為にわざと、おっさんとか悪魔に変身させてたけど、オレは騙されない。
逆に必死過ぎて確信した。
オレにメイドさんを取られたくないってことをな。
ムネノリ君がムルティフローラに行くまでがリミットだ。
寧ろチャンスだろ。メイドさんを口説いて洗脳を解いて、結婚するチャンスだろ。
マー君の会社にオレを正社員として雇わせてやってもいい。
そしたら就職も決まって一石二鳥。完璧じゃないか。
「いや、オレ、帝都の巴家に引っ越してやって、マー君の会社で働いてやってもいい」
「は? 何言ってんの? ゆうちゃん、アタマ大丈夫か?」
マー君が半笑いで言った。
「優一! それが人に物を頼む態度か!?」
米治叔父さんが掌で座卓を叩いて立ちあがった。分家の家長に視線が集中する。
叔父さんがオレを睨みつけ、みんなの視線がオレに移った。




