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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月30日

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73.身の振り方

 「最悪、ヒキニートの飼育が面倒になったら、殺して埋めるかもな?」

 「賢治! いくら何でも言い過ぎだ!」

 「あーハイハイ。でも、ゆうちゃんには、このくらい言わないとわかんないよ?」

 米治(よねじ)叔父さんに(たしな)められても、賢治は全く悪怯(わるび)れること無く行った。


 当時……同居……ジジババとオヤジと、オレ……

 米治叔父さんはジジイの従弟の家に養子に出てて、瑞穂(みずほ)伯母さんはお嫁に行ってた。


 いや、でも、第三者がオレの家族に罪を被せる為に床下に埋めた可能性も……?


 「ゆうちゃん、あのね、さっき言ってた雑妖、もうひとつ苗床があるの、知ってる?」


 また、この電波は……今、そんなハナシしてねーだろ。


 いちいち相手にするのが面倒で、無言で睨みつけてやったが、ムネノリ君は全く意に介さない。

 「人の心だよ。昨日、ゆうちゃんが怒ってた時、ゆうちゃんからいっぱい出て来てたよ」

 オレは思わず自分の手を見た。


 「もし、あのままずっと本家が汚れたままだったら、ゆうちゃんも、お家にあった物と同じように、誰の役にも立てないまま、ただそこに存在するだけで、病葉(わくらば)のように朽ちてしまうところだったの。体の外に憑いてる弱いのは丸洗い魔法や、普通のお風呂で取れるけど、心の中から出てくるのは、自分で何とかしなきゃいけないの」


 オレは別に掃除しろとか頼んでねーよ。恩着せがましい。

 他人ん家の物、勝手に灰にしといて偉そうに。

 器物損壊罪。犯罪者の分際で何、上から目線で語ってんだ。


 だが、こいつに反論したら、今度こそ騎士共に殺されるので、声には出さない。


 「ゆうちゃんは、お母さんをどうにかしちゃった家族を許せるの? もし、恨みながら一緒に暮らすなら、ゆうちゃんの心は、アレに乗っ取られちゃうよ」


 ゴミ山の化け物がフラッシュバックした。


 真穂が蜜柑を剥きながら言う。

 「私たちはもう縁を切って二度と帰ってこないけどね」

 「どうせ二十年くらい農業ノータッチなんだし、事件起こす前に家、出たら?」

 賢治がオレを完全に犯罪者予備軍扱いして言った。


 「優一が、おばあちゃんの介護をしたくないなら、おばあちゃんはウチで引き取る。他所で就職したいなら、気兼ねも心配もせんでいい」

 米治叔父さんが、座卓に身を乗り出して言った。


 三十七歳、職歴なし、学歴高卒、無職、無免許で、どこにどう就職できるんだよ。資格も共通語検定三級しか持ってねえ。


 完全に詰んでるコトくらいオレにだってわかる。

 わかってるから、仕方なくヒキニート続けてるんじゃないか。


 女はテキトーに結婚して男に寄生すりゃいいけど、オレ、男だから。オレを養う稼ぎと度量のあるハイスペックな美女なんて居ねーから。


 だが、ババアの介護なんざまっぴらだ。


 「アハハ! 介護はイヤだけど、就職もヤダって顔してる~」

 藍がオレの顔を見て笑った。


 米治叔父さんはどんな躾してるんだ、全く。


 「時間が経ち過ぎてて身元の照合に数日掛かるし、警察は任意の事情聴取しかできない。誰が犯人かなんて今更わからないだろうけど、それはそれで精神的に良くないと思う」

 ツネちゃんが蜜柑の汁が飛んだ眼鏡を拭きながら言った。


 「僕が魔法で強制すれば、本当のことを言わせることはできるけど、どうするのが一番いいのかな?」

 ムネノリ君が一同を見回した。

 皆チラチラ視線を交わし、最後にオレを見た。


 何だよ、オレに何を言わせたいんだよ。

 オレに責任を(なす)り付けよーったって、そうは行かねー。


 オレは逆に無言で全員を睨み返した。

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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