73.身の振り方
「最悪、ヒキニートの飼育が面倒になったら、殺して埋めるかもな?」
「賢治! いくら何でも言い過ぎだ!」
「あーハイハイ。でも、ゆうちゃんには、このくらい言わないとわかんないよ?」
米治叔父さんに窘められても、賢治は全く悪怯れること無く行った。
当時……同居……ジジババとオヤジと、オレ……
米治叔父さんはジジイの従弟の家に養子に出てて、瑞穂伯母さんはお嫁に行ってた。
いや、でも、第三者がオレの家族に罪を被せる為に床下に埋めた可能性も……?
「ゆうちゃん、あのね、さっき言ってた雑妖、もうひとつ苗床があるの、知ってる?」
また、この電波は……今、そんなハナシしてねーだろ。
いちいち相手にするのが面倒で、無言で睨みつけてやったが、ムネノリ君は全く意に介さない。
「人の心だよ。昨日、ゆうちゃんが怒ってた時、ゆうちゃんからいっぱい出て来てたよ」
オレは思わず自分の手を見た。
「もし、あのままずっと本家が汚れたままだったら、ゆうちゃんも、お家にあった物と同じように、誰の役にも立てないまま、ただそこに存在するだけで、病葉のように朽ちてしまうところだったの。体の外に憑いてる弱いのは丸洗い魔法や、普通のお風呂で取れるけど、心の中から出てくるのは、自分で何とかしなきゃいけないの」
オレは別に掃除しろとか頼んでねーよ。恩着せがましい。
他人ん家の物、勝手に灰にしといて偉そうに。
器物損壊罪。犯罪者の分際で何、上から目線で語ってんだ。
だが、こいつに反論したら、今度こそ騎士共に殺されるので、声には出さない。
「ゆうちゃんは、お母さんをどうにかしちゃった家族を許せるの? もし、恨みながら一緒に暮らすなら、ゆうちゃんの心は、アレに乗っ取られちゃうよ」
ゴミ山の化け物がフラッシュバックした。
真穂が蜜柑を剥きながら言う。
「私たちはもう縁を切って二度と帰ってこないけどね」
「どうせ二十年くらい農業ノータッチなんだし、事件起こす前に家、出たら?」
賢治がオレを完全に犯罪者予備軍扱いして言った。
「優一が、おばあちゃんの介護をしたくないなら、おばあちゃんはウチで引き取る。他所で就職したいなら、気兼ねも心配もせんでいい」
米治叔父さんが、座卓に身を乗り出して言った。
三十七歳、職歴なし、学歴高卒、無職、無免許で、どこにどう就職できるんだよ。資格も共通語検定三級しか持ってねえ。
完全に詰んでるコトくらいオレにだってわかる。
わかってるから、仕方なくヒキニート続けてるんじゃないか。
女はテキトーに結婚して男に寄生すりゃいいけど、オレ、男だから。オレを養う稼ぎと度量のあるハイスペックな美女なんて居ねーから。
だが、ババアの介護なんざまっぴらだ。
「アハハ! 介護はイヤだけど、就職もヤダって顔してる~」
藍がオレの顔を見て笑った。
米治叔父さんはどんな躾してるんだ、全く。
「時間が経ち過ぎてて身元の照合に数日掛かるし、警察は任意の事情聴取しかできない。誰が犯人かなんて今更わからないだろうけど、それはそれで精神的に良くないと思う」
ツネちゃんが蜜柑の汁が飛んだ眼鏡を拭きながら言った。
「僕が魔法で強制すれば、本当のことを言わせることはできるけど、どうするのが一番いいのかな?」
ムネノリ君が一同を見回した。
皆チラチラ視線を交わし、最後にオレを見た。
何だよ、オレに何を言わせたいんだよ。
オレに責任を擦り付けよーったって、そうは行かねー。
オレは逆に無言で全員を睨み返した。




