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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月30日

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71.祭壇の下

 白バイが白黒のワンボックスを引率して戻って来た。

 「お待たせ致しまして恐れ入ります。殿下、お手数お掛け致します」


 「こちらこそ、お忙しい時期にお呼び立て致しまして恐縮です。恐らく時効が成立済みで立件できず、身元確認だけになるかと思いますが、宜しくお願いします」

 整列して敬礼する警官たちに、ムネノリ君は大人の口調で言って丁寧にお辞儀した。


 ムネノリ君を先頭に双羽(ふたば)隊長、三枝(さえぐさ)、警官、鑑識捜査員、身内がぞろぞろ続いた。

 縁側に沿って庭を歩き、仏間と座敷の前を素通りし、固く閉ざされた引き戸の前で立ち止まった。

 「このお部屋です。室内の骨には触らないで下さい。多分、ここはその骨を閉じ込める為のお部屋です。それに触って何かあっても、僕には何もできませんから、気をつけて下さい。お部屋の入口に近い、床下に埋まっている人を出してあげて欲しいんです」

 幼女のような声が淡々と説明する様が、却ってトラウマになりそうな内容だった。


 「真穂ちゃん、藍ちゃん、あっち行っとこう」

 ヘタレのツネちゃんが小声で二人を呼んだ。

 その三人と分家の嫁がそっと離れる。軽トラの前まで戻り、パトカーの傍に残る警官と何か話し始めた。


 木戸は釘で固定されているらしかった。鑑識が写真を撮る。警官が持参した工具箱から釘抜きを出し、錆びきった釘を引き抜く。


 「おまわりさん、手袋片っぽ脱いで、手を貸して下さい」

 ムネノリ君がスコップを装備した警官の一人に言った。警官は言われるままに左の手袋を脱いだ。

 ムネノリ君はその手を両手で包んで、さっきの呪文を唱え、警官の手を握ったまま言う。

 「お部屋の床下を見て下さい」

 「……ヒッ!」

 「あー、そっちじゃなくて、下、床下、土の中です」

 ムネノリ君に言われた警官は、ガクガク震えながら視線を下げた。


 ……何が、視えたんだ? 


 「その深さです。宜しくお願いします」

 「……は…………はい」

 警官は震える声で返事をして手袋をはめた。引き戸が開き、鑑識のシャッター音が響く。



 壁……いや、家具の裏側が入口を塞いでいた。警官二人掛かりで、古い桐のタンスを除ける。

 六畳くらいの板の間が現れた。

 床には厚く埃が積もり、奥の壁際には祭壇のような物があった。

 他には何もない。


 祭壇には白い陶器の壺が載っていた。鑑識がシャッターを切る。


 「それに触らないように気をつけて、手前の床板を剥がして下さい」

 怯む警官たちにムネノリ君がロリ声で容赦なく命令した。


 釘抜きを装備した警官が縁側に身を置いたまま、手前の床板を剥がし始める。床板はすぐに剥がれ、スコップを持った警官二人が、固い表情で土を掘った。


 誰も何も言わず、スコップの音だけが響く。


 唾を呑みこもうとしたが、口の中がカラカラに乾いていて、上手くいかなかった。


 ……ここ、オレの部屋の真下だよな? 


 「出ました」

 警官の声に続いて鑑識のシャッター音が響いた。

▼山端家の間取り(清掃完了後)

 挿絵(By みてみん)

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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