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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月30日

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69.黒江さん

 「ゆうちゃん、そんな所で何してるの? 風邪引くよ?」

 ロリ声が普通に話し掛けてきた。

 夢かと思ったが、この地面の冷たさは現実だ。


 何でオレの居場所が……?

 服の裾がはみ出してる? いや、ジャージ上下でそれはない。

 どっかから見てた? いや、まだ真っ暗な内に入った。それもない。


 「えっ? ゆうちゃん、崩れたゴミの下敷きになってんの?」

 「間抜けねー」

 真穂と藍が呆れた声で言った。


 違う! オレは自分の意思でここに居るの!


 「黒江(くろえ)、本棚を()けて、ゆうちゃんを出してあげて」

 「かしこまりました。ご主人様」


 野太いおっさんの声が返事をして、本棚が動いた。ジャージの襟首を掴まれ、ゴミ山から引きずり出される。


 スーツをきっちり着こなした執事っぽいおっさんが、オレを片手で吊り下げていた。

 琥珀色の瞳がオレを見てから、ムネノリ君の方を向いた。五十絡みの落ちついた雰囲気が漂う燻し銀系の男前。


 紳士服屋の広告モデルみたいだな……


 「黒江、ゆうちゃんを降ろしてあげて」

 「かしこまりました。ご主人様」

 襟首から手を放されたオレは、そのまま地面に座り込んだ。


 執事の名前もクロエかよ。

 ムネノリ君、ネーミングセンス無さ過ぎ!

 ……いや、待てよ。この人は本名「黒江」の可能性もありそうだな。


 「ゆうちゃんは自分のクズさ加減に気付いて、ゴミの仲間入りしてたのかもよ?」

 「えーっ? 流石にそれはないんじゃないかなー?」

  マー君がニヤニヤ笑いながらオレを見降ろしている。真穂が半笑いでそれを否定した。


 「ゆうちゃん、もうすぐ警察の人が来るから、立ち会い宜しくね」

 「は?」


 問答無用で処刑するんじゃないのか。いちいち駐在呼んで調書取るのか?

 ……と言うことは裁判するんだな。なら、冤罪を晴らすチャンスだ。


 庭には三つ子、騎士二人、賢治、真穂、藍、分家の嫁と執事のクロエ。

 メイドさんの姿は見当たらない。

 ここを離れる前に彼女の誤解だけでも解いてあげなきゃ。


 「いや、それより、メイドさんは?」

 「クロエ? そこに居るけど? ゆうちゃん、疲れてるみたいだし、お掃除は後でいいよ」

 「いや、掃除じゃなくって……」

 「宗教、ゆうちゃんは説明の時、居なかったからわからないんだよ」

 「あ、そっか」

 ツネちゃんに言われ、何かに気付いたらしい。


 「ゆうちゃん、黒江を見ててね。クロエ、女中になって」


 ポンッ


 紙袋が割れたような音に続いて、おっさんの姿が消えた。

 次の瞬間には、メイドさんの姿がそこにあった。


 何をどう……反応も判断も理解もできない。

 フリーズするオレに、ロリ声が解説する。


 「クロエは僕の下僕なの。お掃除とか頼む時は女中の形で、他の用事の時はさっきの形で、用事のない時と寝る時は、にゃんこの形にしてるの。ホントの形も見てみる?」

 聞かれて反射的に頷いてしまった。


 「クロエ、元の形に戻って」


 ポンッ


 メイドさんが立っていた場所に、巨大な鳥の足が現れた。


 逞しい猛禽類の足を見上げると、膝から上は、全身が黒い毛皮に覆われたマッチョなおっさんボディだった。猫科っぽい滑らかで光沢のある毛皮に覆われた手は、人間のような形だが、鉤爪が生えている。

 頭部は巨大な猫のような形で、琥珀色の瞳がオレを見降ろしていた。


 身長は、二階の屋根よりも高い。


 化け物は、猛禽類を思わせる暗褐色の翼をバサリと広げ、消防ホースのように太く力強い猫の尾を左右に振った。


 「クロ、おいで。だっこしよう」


 ポンッ


 巨大な化け物が消え、黒猫がしっぽをピンと立て、軽快な足取りで、ムネノリ君に駆け寄った。

 ムネノリ君が、飛びついてきた漆黒の獣を抱き上げ、頭を撫でる。黒猫はメイドさんと同じ色の目を細めて、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。


 「……………………」



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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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