64.説教タイム
何だ。驚かしやがって。って言うかマジ凍死しそう。
早く説教タイム終わんねーかなー。
「ゆうちゃん、ずっと口応えばっかりで、全然反省してないね」
真穂が仁王立ちで腕組みして言った。後妻が生んだ異母妹の癖に生意気な。
米治叔父さんが立ちあがった。マー君、ツネちゃん、賢治も立ち上がった。
座ってるのはオレだけだ。
「殿下は強大なお力をお持ちだからこそ、ご自身が不当に貶められても、無闇にそのお力を振るわず、自制なさったのです」
「優一、自分で言ってて情けなくならないのか? お前、さっきから暴言と妄言を吐いて、筋の通らない無茶苦茶な言い訳で自分を正当化してるだけじゃないか。
何で現実を直視しようとしないんだ? 自分の姿がちゃんと見えていたら……現状を正しく認識してたら、さっきみたいなことは一言も言えない筈だぞ」
「ゆうちゃん、他人を貶めても自分の立場が下がるだけだよ。王族の宗教を泣かせて、勝った気でいるのかも知れないけど、そんなことないから」
「宗教に訴えられたら最悪、外交問題だぞ? 小国とは言え外国と揉めるくらいなら、この国の政府は、ゆうちゃん一人を見捨てる方を選ぶと思うぞ?」
魔女のババア、分家のおっさん、ツネちゃん、マー君が連続で、上から目線の説教かましやがった。
さっきからお前ら何様のつもりだよ。調子に乗りやがって。
一対多数って卑怯にも程があるだろう。こう言うの、集団いじめって言うんだよ。
寒い。
本格的に体が冷えてヤバい。
こいつら、マジでオレを凍死させる気か?
ここはひとつ「反省してます」のポーズで、説教タイムを終わらせるとしよう。
「いや、オレもホントのコトだからって、ちょっとは言い過ぎた所があったかもな。喧嘩両成敗で水に流して許してやるから、ムネノリ君にも、機嫌直すように言っといてくれ。いや、ほら、オレたちみんな親戚なんだし、もうすぐ正月だし、水入らずで、仲良く年越ししよう。なっ」
座敷の連中は互いに顔を見合わせ、無言で視線を交わし、オレに向き直った。
何、目で会話してんだよ。お前らエスパーか。
魔女のババアが、また湖北語で何か言った。




