60.罵詈雑言
「ムルティフローラは魔法の国だから、魔力がない人は国籍を取得できないんだ。巴の親族は王家と血縁があっても、宗教以外、誰も魔力を持ってないよ」
またツネちゃんが説明した。
謎は解けた。ムネノリ君だけが「当たり」だった訳だ。
魔法使いなのは認めざるを得ないし、メイドさんが嘘吐いてるとも思えないしな。
マー君は、土鍋の中から鳥のささみをかき集めている。
水炊きにささみ? 分家の嫁は料理の常識も知らねーのかよ。
「いや、でも障碍年金もらってんだろ? やっぱ、税金泥棒じゃねーか!」
「えっ……だって…………」
「ゆうちゃん、この国に住んでる人は、外国人もみんな年金加入の義務があるんだよ。宗教は、十八歳までの国籍は日之本で、父さんが生きてる間は扶養家族だったし、受給用件も満たしてる。税金泥棒じゃなくて、正当な権利なんだよ」
言葉に詰まるムネノリ君に代わって、ツネちゃんが説明した。
「いや、もし仮に、帝大の准教授だったとしても、魔道学部なんか卒業したって就職できねーだろ。折角、帝大なのに、世間の役に立つならともかく、クソの役にも立たねーアホー学部って……Fランク私立の医学部とかの方がまだマシだろ。日之本帝国は科学の国なんだから、魔法の研究なんか役に立たねーし! 国費の無駄遣いしやがって! 国立大の予算ってのはな、国民が一生懸命汗水たらして働いて納めた血税なんだよ! 税金泥棒! しかも手帳持ってるってことは、この国に医療費とか、集ってんじゃねーか! 税金泥棒! どうせムルティフローラでも、王族ってだけで、国民の血税で贅沢三昧してんだろッ? ババアの骨折も治せねー癖に、癒し系気取って調子こいてんじゃねーぞ! 税金泥棒! そもそもお前、余分に生まれた要らん子じゃねーか! 無駄飯食って日之本帝国とムルティフローラの税金食い潰す寄生虫の分際で、メイドさんだけじゃなくて、女騎士まで侍らせるとか、生意気なんだよ! 声変わりもしてないキモいロリ声で、何もできねー分際で、女二人もキープとか、生意気なんだよ! 税金泥棒のエロガキが! そう言うことは他人様の役に立つ仕事をして、男として一人前になってからにしやがれ! 税金泥棒の分を弁えてさっさと死ねよ! 穀潰し!」
ムネノリ君は、声を出さずに大粒の涙をぽろぽろ零して泣きだした。その膝の上で黒猫がオレに向かって威嚇する。
オレの意見を誰も遮らず黙って聞いてることが、すなわち、オレの正しさの証明だ。
穀潰しのムネノリ君に追い打ちをかける。
「ちょっとホントのコト言われただけでメソメソ泣きやがって! 三十路にもなった大の男が情けない! 豆腐メンタルが! 打たれ弱過ぎだろ! 過保護かッ?」
「宗教、今日は疲れたろ? もう休ませてもらおう。な?」
ツネちゃんが優しく言った。
ムネノリ君は、タワシみたいになった黒猫を抱き上げ、三枝に支えられながら、のろのろとした動作で立ち上がる。
双羽隊長が共通語で何か言い、ムネノリ君がそれに短く答え、ツネちゃんと三枝が頷いた。
また、共通語でこそこそ内緒話か。日之本帝国語で堂々と喋れよ。
「ごちそうさまでした。おやすみなさい」
「お……おやすみ……なさ…………」




