表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月29日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/87

057.分家

 分家の敷地は、農道から玄関に続く部分だけが除雪されていた。

 マー君は、分家の玄関前に車をぴったり横付けにした。

 もう逃げられない。


 だが、まぁ、ジジババとオヤジが居ないだけ、まだマシだ。


 オレは腹を括ってマー君と共に分家の敷居を(また)いだ。

 分家は玄関にも廊下にも、余分な物が何もなかった。揃えて置かれていたスリッパを履いて洗面所へ向かう。


 「ただいまー。ゆうちゃん連れてきたよー」

 マー君が奥に声を掛けながら、玄関を閉めた。

 いよいよ逃げられなくなった。


 でも、まぁ、米治叔父さんだけなら、何とかやり過ごせるだろ。


 手を洗い終わったところで、分家の嫁が様子を見に来た。


 「あらあら、ゆうちゃん久し振り。今夜は水炊きよ。もう食べてるから、急いで」

 随分老けこんで、完全に農家のおばちゃん化していた。まぁ、二十年近く経ってるんだ。劣化して当然だ。



 オレとマー君は、分家の嫁の後に続いて座敷に入った。

 ふたつ並べた座卓の上で土鍋が美味そうな湯気を上げる。

 みんなかなり食べ進めていた。


 全員揃うまで待てよ。


 上座、お誕生日席配置に、床の間を背にして米治(よねじ)叔父さん。

 廊下側の席に上座からムネノリ君、ツネちゃん、マー君の縮小コピー。

 縁側サイドの上座に近い所に空の座布団が二枚。マー君の縮小コピーの向かいに賢治。


 下座卓に男子中学生、真穂、末席に分家の嫁。分家の嫁の向かいに藍がいた。

 上座卓七人に大きな土鍋、下座卓四人に小ぶりな土鍋が配備してある。


 ムネノリ君の背後、オレたちが入ってきたのとは違う(ふすま)の前に卓袱台(ちゃぶだい)を置いて、双羽(ふたば)隊長と三枝(さえぐさ)が差向いに座っていた。


 ……何だよ、この席次?


 「ゆうちゃん、こっち」

 マー君に手を引かれ、ムネノリ君の向かいに座らされた。

 「いただきまーす」と言って、マー君は賢治の隣に腰を下ろした。


 ムネノリ君の膝の上で黒猫が何か食っている。

 分家のペットか? 人間様と同じ食卓で食べさせんなよ。


 双羽隊長は、箸で焼き魚と御飯と漬物を食べ、三枝は、親子丼のようなものをスプーンで食べていた。


 「いや、あの、何であいつら、別メニューなの?」

 「宗教(むねのり)の護衛だから、万が一の食中毒とかに備えて、リスクを分散してるんだよ」

 ツネちゃんが、白菜を取りながら理路整然と説明する。


 分家の嫁、信用されてねーな。


 「いや、あの、メイドさんは?」

 「クロに用事? 今、ちくわ食べてるから、後にしてくれる?」

 ムネノリ君が答えた。


 ただでさえ短い仮名を更に略すなよ。「クロ」とか言ったら、完全に毛の色じゃねーか。

 騎士っつーか、猫でさえ同じ部屋でメシ食えるのに、メイドさんは別室……多分、台所って、身分制度厳し過ぎんだろ。

 メイドさん的には、好物のちくわ食わせてもらえるだけでも「ありがたき幸せ」なんだろうけど、そんなの絶対おかしいよ!


 オレが、絶対に君を奴隷身分から、救ってあげるからね!


 オレは決意を新たにして、鍋に箸を伸ばす。

 その手をマー君にはたかれた。衝撃で畳の上に箸が転がる。

 「ゆうちゃん、どんだけコミュ力退化させてんの? 挨拶の言葉も忘れたのか?」

 「………………」


 「『いたたきます』は?」

 「……………………いや………………その…………い……いただきます」


 「どうぞどうぞ、召し上がれ。お箸、こっちに替えとこうね」

 オレが箸を拾いながら呟くと、分家の嫁がニコニコ笑いながらいちいち返事をして、バットの横に置いてあった箸を持ってきた。


 「ゆうちゃん、久し振り。藍にはもう会ったんだってな。真穂ちゃんの向かいに座ってるの、ウチの長男の紅治(こうじ)。中三だ」


 「初めまして、紅治です」

 米治(よねじ)叔父さんに紹介された田舎少年は、箸を持ったままペコリと頭を下げた。


 オレの知らない間に、二人もイトコが発生していたのか……


 「コウちゃんの隣が、俺の息子の政晶(まさあき)。中二だ」

 「いや、中二って……マー君、幾つの時の子だよ!?」

 「算数も忘れたのか? 大学入ってすぐ結婚して、二回生の時に生まれた子だよ」


 いちいちムカつくヤツだな。学生結婚なんてDQN丸出しじゃねーか。

 でも、マー君の嫁は浮気してなかったんだな。

 つか、完全にマー君の縮小コピーで嫁要素、皆無じゃね?


 「……政晶です。初めまして」

 マー君の縮小コピーは、気まずそうに小声で言った。


 DQN親のせいで可哀想に。


 他の奴らは、黙々と鍋をつつく。

 マー君が肘でオレをつつきながら言った。


 「ゆうちゃん、自己紹介は?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ