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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月29日

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54/87

54.君の幸せ

 つらつら考えている内に、手前のフィギュア類が片付いた。

 その奥から、郵送で定期購読していたアニメ誌が出てきた。


 密林の箱は残り少なく、これを全て入れるのは不可能だ。紐で縛って夜中に庭に出して、上からゴミ袋を被せてカモフラしよう。

 小学生の頃、小遣い目当てで古新聞を束ねる作業を何度もしていたから、これも楽勝だった。二年分くらいずつ束ねる。



 「いや、あの、さ、君、何してる時が幸せ?」

 ドアの陰に雑誌の束を積みながら聞いてみた。

 趣味以外の接点を探そう。


 「ご主人様のご命令を上手にこなせて、お()めに(あずか)った時が一番幸せです。『ありがとう』のお言葉を戴いて、頭を撫でられている時に、自分の存在意義と、生きていることを実感します」

 答えたメイドさんは頰を淡く染めて、夢見るようにうっとりしている。


 洗脳、凄過ぎるだろ。

 魅了の魔法なら、桁違いに強力な……禁術なんじゃないのか?


 「いや……じゃ、じゃあ、二番目は?」

 この話題は危険だ。瞬時に二番手を用意する俺。


 「ご用のない時に、ご主人様にだっこされて、もふもふしている時も幸せです」

 「いや、も……もふもふ!?」



 それは一般的には「ぱふぱふ」って言うんだよ!

 ムネノリ君め!

 ロリ声で何もできねー癖に中途半端に(うらや)()しからんコトしおってからに!


 あのエロガキ絶対泣かす!



 「ご主人様は毎晩、ベッドの中で私をだっこして、もふもふして下さるんです。ご主人様にだっこされていると、とても安心できて、ぐっすり眠れます」

 メイドさんは、心底嬉しそうな声で説明してくれた。



 毎晩……!

 ベッドの中で……!


 だっ……


 だっ…………



 「だあぁあぁぁあぁぁぁぁぁあああッッ!」

 勢い余って雑誌を束ねる紐を引き千切る。血圧が上がり過ぎて卒中とかになりそうだ。



 王族だからって……特権階級だからって……(うらや)()しからん!

 オレたち、従兄(いとこ)弟なのに!

 ずるい!

 ムネノリ君ばっかり! ずるい!

 オレにもメイドさん、ぱふぱふさせろ!



 「何があったのですか?」


 双羽隊長の声で、一気に体の芯まで凍りついた。

 恐る恐る、声のした方に顔を向ける。


 隊長は、窓の外に浮いていた。


 ……魔女って、箒がなくっても、空を飛べるんデスね。


 「ひっいや……! あの! なっななな何でもないであります!」

 「そうですか?」

 疑わしそうな目を向ける隊長に、全力で頷くオレ。


 隊長は、部屋の中を一通り見回して「異常なし」と判断したのか、オレの視界から消えた。ドアの陰に積んであるアニメ誌は、スルーされた。


 ……油断も隙もありゃしねー。

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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