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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月29日

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44.炎の魔法

 【12月29日午前2時21分現在……床可視率53%、堆積層なし、棚類の内容物なし】


 誰にも起こされることなく、自主的に目を覚ました。

 何故か体中が痛く、耳が痛痒い。

 だが、不思議と気分はよかった。


 ぎくしゃくする関節を無理矢理動かして、起き上がる。

 また、ドアノブにメモが貼ってあった。


 昼飯は台所に置いてある。by政治


 昨日と同じ、流麗且つ力強い油性マジックの文字だった。


 窓と網戸を開け、雨戸を開ける。

 雪は止んでいたが、畑には一メートル近く積もっていた。どんよりとした厚い雲の下、見渡す限り白銀の世界。


 ウチの庭だけは雪がない。

 庭にはメイドさんとムネノリ君、三枝(さえぐさ)、藍が居た。



 ムネノリ君が、杖を引きずりながらゴミ山の周りを歩いている。

 一周して立ち止まり、杖の黒山羊をゴミ山に向け、一言、二言何か言った。


 蔵の前のゴミ山が、闇に包まれた。

 杖を引きずった通りの(いびつ)な円に囲まれた範囲が墨を流したような漆黒に染まる。


 ムネノリ君がもう一度、何か言った。

 闇の領域に白い炎が現れ、内部で渦を巻き、ゴミの山を呑みこんで消えた。闇もまた、現れた時と同様、唐突に消える。


 後には、白い灰だけが残った。

 ムネノリ君の横に立つ三枝が向かいの畑に何か言うと、雪の塊が飛んで来た。


 こいつも丸洗い魔法が使えるのか。


 溶けた雪が灰を溶かし込み、宙を舞う。

 メイドさんが段ボールに透明ゴミ袋を被せると、水はその中に灰を吐き出した。灰でいっぱいになった袋を交換すると、水はまた、灰を排出する。


 ゴミ山は、45L透明ゴミ袋三杯分の灰になっていた。

 メイドさんは、灰袋を持って倉庫の方へ歩いて行く。


 「ゆうちゃん、やっと起きたー! もう三時過ぎよー? ご飯は? 食べたの?」

 ブルーシートの上でガラクタの仕分け作業をしていた藍が、オレに気付いた。


 三時過ぎ……十二時間以上寝てたのか。


 オレは無言で窓を閉めた。

 痛む体を引きずって、まずはトイレへ。


 台所のテーブルには、親子丼とおでんと味噌汁が置いてあった。

 分家の嫁の料理は、メイドさんには負けるが、ババアには勝っていた。オフクロの飯がマズかった記憶はない。

 中高生の頃に食った後妻の飯も、美味くはなかったが、特段マズくもなかった。

 昨日のフードコートのモダン焼きも、ババアの飯よりはマシだった。


 もしかして、ババアは料理が下手なんじゃないのか?


 過去に食った料理の味を思い出しながら、昼飯を食べ終えた。

 食器をシンクに置いて、部屋に戻ろうと方向転換する。


 「うっうわあぁあぁぁぁッ!」

 思わず横に飛退(とびの)く。


 いつの間にか背後に双羽(ふたば)隊長が立っていた。

 隊長は俺に一瞥もくれず、シンクに近付いた。何か呟きながら蛇口をひねる。

 水は下に流れず宙に浮き、隊長の横に溜まっていった。風呂桶一杯分くらいの塊ができたところで水を止める。


 魔女でも水道、使うんだな。


 「自分の手で洗わないのですか?」

 「いっ……いや……あの……なっ何を……でしょう?」


 (とが)めるような口調に怯えながら、何とか質問を発することが出来た。


 隊長、肝心な部分を略さないで下さい。わかりません。

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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