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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月28日

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41.始末

 晩飯は台所に置いてある。

 風呂に入れ。by政治


 油性マジックの力強い文字。


 マー君、脳筋の癖に意外と達筆なんだな。


 メモを剥がして片手で丸めながらドアを開けた。

 部屋の電気消したの、マー君か。メイドさんはムネノリ君の命令をきっちり守って、オレの部屋には一歩も入ってないんだ。


 時間はわからない。


 今夜もここには、オレ一人らしい。

 ネズミの足音すら聞こえなかった。


 トイレに寄ってから、風呂の様子を見に行った。

 湯船は空で、誰かが使った形跡はなく、乾いている。

 風呂場はオレが知るどの時点よりも清潔で、体毛は一本も落ちておらず、床のタイルには、ぬめぬめするカラフルなヘドロも全くない。(カビ)が消えた目地は真っ白だった。


 面倒だが、シャワーだけでも浴びた方がいいのかな。


 脱衣籠にバスタオルが一枚入っていた。どこも破れていない。シミも黴もない。ふわふわで清潔な一枚だ。

 着替えは用意されていなかった。

 要はセルフサービスってことか。


 居間に入ってから思い出した。



 ……汚パンツは全て捨てた!



 電池じゃねえ! パンツ買うって言っときゃよかった!

 ……まぁ、いいか。

 今までは洗濯してない服を何カ月も着続けてたし。

 今着てる奴は体と一緒に丸洗いされてキレイだし。


 オレは風呂を諦め、台所でトンカツ定食的な晩飯を食って居間に戻った。

 ゴミ袋を一パック取り、隣の十畳間に移動する。埃まみれのガムテープを一巻持って、部屋に戻った。



 ヤバい物の始末は夜に限る。

 ゴム手袋をはめ、気合いを入れる。

 オレは、アレな物の袋詰め作業に取り掛かった。

 今夜のターゲットは、本棚と机とパソコンの中身だ。

 オレはメイドさんに相応しいご主人様にならなければならない。

 メイドさんに見られたらドン引きされそうな物は、全部捨てる。



 まずは本棚。

 上の段から順に、フィギュア、フィギュア、アレなDVD、アニメDVD、ゲームソフト、コミックス、ラノベ、薄い本が入っている。

 本棚のフィギュアは全て箱から出して飾っていた為、埃と蜘蛛の巣が堆積し、絶望的な有様に変わり果てていた。


 躊躇なくゴミ袋に入れる。


 碌に見てないから気付かなかったが、今までゴミを飾ってたのか。

 いや、掃除せずに放置して、フィギュアをゴミに変えたのは、このオレか。


 こう言うの、何て言うんだっけ? 不作為犯?

 赤ん坊を放置して餓死させるダメ親みたいな?


 フィギュアは嵩張るからか、二段で五袋になった。


 アレなDVDは勿論、ゴミ袋行き。これは一段で二袋分。

 アニメDVD一段分。エロもあるが、ニチアサの健全な……そもそも魔法の国にはアニメとかなさそうだし……いや「よい子のみんな」が観るアニメをアラフォーのオレが観ること自体、非オタからしたらドン引きだろう。


 他人(ひと)の趣味にケチ付ける奴の方が無粋だが、世間的にはそうなってる。


 メイドさんが日之本帝国の常識をテキストで学習してたら、そう言う目で見られてしまうだろう。


 よし、これも捨てよう。


 特典が重くて嵩張る為、三つに分けてそれぞれ袋を二重にした。



 ゲームソフト。

 本棚にはエロゲは入れていない。CEROレーティングA~BのRPGや恋愛SLGだが、魔法の国にはゲームとか以下略。

 一段で二袋。


 コミックス、ラノベの段に十八禁はないが、ゴミ袋に入れると重量で破れそうなので、段ボール箱に入れる。

 どの本も埃を被って灰色になっていた。

 本文の紙も茶色に変わっている。ゴキブリの糞がこびり付いているものさえあり、読める状態の本は一冊もなかった。



 最後に薄い本。


 こんなん絶対見せられん! 


 段ボールに詰め、ガムテで厳重に封印する。

 押入れ前のスペースにゴミ袋十一袋、段ボール九箱が積み上がった。箱の数が多いのは、薄型しかなかったからだ。

 ひとまず、本棚の中身を庭に出しに行く。



 玄関に降り、運動靴を履きかけてやめた。

 面倒臭い。ババアのつっかけで庭に出る。


 雪がしんしんと降っていた。

 既に足首まで積もっている。


 それでも、退く訳には行かなかった。


 つっかけの足が雪で()みたが、蔵の前にゴミ袋二つを置き、ダッシュで玄関に戻った。



 戸を閉めて二階に戻る。

 硝子窓だけを閉め、寒さで強張った体をエアコンの温風でほぐしながら考える。


 効率よく、安全に処分するには、どうすればいいんだ? 


 いちいち靴を履く?

 いや、どうせすぐに足首より深く積もる。長靴はない。


 まず、全部玄関まで降ろす。

 それから、靴下を三枚重ね履きして防寒。ダッシュでゴミを捨てる。

 よし! これで行こう。



 早速、ゴミを玄関まで運んだ。


 ……そうだ、どうせなら机のも出そう。

 寒い作業を二回に分けるのは非効率だ。


 学習机付属の棚には、エロゲの特典と攻略本とキャラクター設定資料集が入っていた。特典一袋と書籍類が三箱分。

 学習机の横の棚には、エロゲ。上に積んでいて部屋の入り口から見えそうな物は、昨日捨てた。

 残っていた棚の中身は七袋分だった。

 色褪せたポスターも剥がして捨てる。

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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