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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月27日

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26.運搬

 みんな、出て行ったらしい。

 仕方がないので部屋に戻る。


 オレがまだメイドさんと喋ってんのに割り込みやがって!

 何様のつもりだ!? ムネノリ君め、二度とあんな真似できねーように、後でボッコボコにしてやるからな!


 ムネノリ君の代わりにドア横に積んだ段ボール箱を思い切り蹴ってやった。


 「………………ッ!」

 声も出ない。ひょっとして、爪……割れた? 


 こっちは激痛で苦しんでんのに、段ボールはびくともしていない。ゴミの上に倒れ込み、苦痛に翻弄されるがままになる。


 暫くして、痛みが少し和らいだ。

 恐る恐る爪先に手を触れてみた。爪は無事だった。


 ……さて、そろそろ分家に着いたか?


 平静を装ってゆっくりと立ち上がり、自室から出た。まだ痛むが歩けない程ではない。

 ババアのつっかけに足をねじこみ、鍵の掛かっていない硝子戸を開け、庭に出た。



 誰もいない。

 近所の田畑にも人影は見えなかった。

 どんよりとした雪雲の下、夕日は既に沈み、山の端にうっすらと最後の光が残っている。


 ……もうこんな時間だったのか。


 吐く息が白く凝り、風に流されて消える。

 蔵の前には何もなかった。もう全部燃やして、灰も捨てたのか?


 計画がやや崩れたが、大丈夫だ。

 普通のゴミが十一袋分もあるし、段ボールは開けられないくらいガッチリ、ガムテで塞げば問題ない。



 硝子戸を全開にし、玄関灯を点けて自室に戻った。

 エアコンの風の温かさで、寒さに強張っていた体がほぐれる。

 そのまま布団に潜ろうとして、動きを止めた。


 虫地獄だよ、蟲! 地! 獄!

 今、このベッド! ダメ! ゼッタイ!


 ガムテープを手にとり、一番上の箱の蓋に貼り付けた。

 蓋の継ぎ目三か所をびっちり固定。箱を横倒しにして、さらに回転させ、底面を上に向ける。

 回転の途中で底が抜けるかと思ったが、しっかり手で押さえていたからか、少し開きかけただけで済んだ。

 底面も上面同様、びっちり固定してから、タンスの前に置く。


 同様にして計八個、密林の通販段ボールをガムテで封印した。その上にゴミ袋十一個分のゴミを積む。


 ゴミの中から潰れた段ボール箱を引きずり出し、ママさんダンプの要領で、ゴミを押入れ前の尿ペット群の傍に寄せた。

 細かいゴミや綿埃、虫のパーツ関係は残ったが、床に敷いたカーペットが見え、ドアが全開になる。


 両手にひとつずつゴミ袋を持って階段を降りた。

 片付いていなければ到底できない芸当だ。メイドさんは、ちゃんと先を見越して掃除してくれてたんだな。オレの為に。


 なんて気がきくイイ女なんだろう。

 ババアと後妻と真穂と藍に、爪の垢を煎じて飲ませてやりてぇ。


 すっかり暗くなった庭に出て、玄関から漏れる灯を頼りに蔵の前……今朝、ゴミ山があった辺りに両手の荷物を置いた。息が上がり、背中が熱くなっている。


 すぐに自室にとって返し、ゴミを搬出すること、五往復。


 ふくらはぎがパンパンになり、膝はガクガク、手が寒さ以外の何かで震える。


 玄関脇の壁にもたれ、深呼吸して息を整えようとしたが、苦しくなってマスクを外した。途端に冷たい空気が気道に流れ込み、激しく咳込む。


 「優一さん、大丈夫ですか?」

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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