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汚屋敷の跡取り  作者: 髙津 央
◆印歴2213年12月27日

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14.目的

 ツネちゃんに促され、ムネノリ君はロリ声且つ子供のような口調で、斜め上な発言をかました。


 ……コイツ、声と内臓だけじゃなくって、本気で頭もおかしいのか?


 三十年も前に行方不明になった女が、何で大掃除したら出てくるのか、脈絡のなさにクラクラしたが、それが一層、憐れみを誘う。

 なんだか色々と可哀想になったので、ちょっと話を合わせてやることにした。


 「いや、大掃除って?」

 「山端(やまばた)のおばあちゃんの足の為でもあるんだけど、大掃除してお家をキレイにして、良くないモノをやっつけて、そしたら、ゆうちゃんのお母さん、見つかるよ」


 ババアの足? あぁ、また入院されたら面倒だしな。


 確かに、廊下は通りやすくなってた。

 流石、王家に仕えるメイドさんの仕事だけはある。キレイな廊下は通りやすい。


 「いや、良くないモノってなんだよ? オバケか?」

 「うん。ゆうちゃん、()えてるの?」

 「視えてたら、こんな状態で放置なんてあり得ないよ。山端の人たちは霊感ゼロだよ」

 ツネちゃんが口を挟む。


 霊感(笑)

 由緒正しい豪農の山端家には、幻覚視えるレベルのキ印なんざいねーんだよ。


 「でも、真知子(まちこ)叔母さんは……」

 「真知子叔母さんは、他所から来たお嫁さんだからな。日之本帝国とか科学文明の国にだって、魔力はなくても霊感だけある人なんて、いっぱいいるし」

 ツネちゃんの説明にうんざりした。


 何だよ。分家の嫁が電波かよ。


 「いや、ツネちゃん、オバケを何とかするって、それ、大掃除の手伝いをするってこと?」

 「元々そのつもりはなかったんだけど、成り行き上、放っとけなくなって……」


 べ……別に手伝うつもりなんてなかったんだからねッ!

 って、ツネちゃん、ツンデレを微妙に間違ってるぞ。


 何でこんな電波共のオヤジが、優秀な瑞穂(みずほ)伯母さんと結婚できたんだよ。

 あの夫婦が生きてたら小一時間、問い詰めたいところだ。

 こんな家に雇われて、メイドさんもさぞかし苦労してることだろう。

 折角、有能なんだから、もっとまともな家に仕えるべきなんだ。

 例えば、この山端の本家とか。



 「他のお部屋は、みんなで協力してお掃除してる最中だから、ゆうちゃんは、ゆうちゃんのお部屋をキレイにしてね」


 クソの役にも立たんアホの子の分際で、オレに指図すんなよ。

 身の程を知れよクズが。


 ……まぁ、オレは大人だから、心臓と頭の弱い奴を怒鳴ったりしない。


 優しく懇懇と諭してやる。


 「いや、いやいやいやいや、それは違うだろう。ムネノリ君、掃除なんてものは、オンナがするもんなんだよ。本家の長男であるオレは、今まで掃除なんてしたことないし、これからする予定も、その必要もないんだ。わかるな?」


 「ご自身でなさらないのでしたら、部屋の中身は私共が全て搬出し、焼却処分致しますが、宜しいですね?」

 外人女が冷たく言い放った。


 「はあ? 何言ってんのオマエ? 何の権限で本家の長男であるこのオレに指図してんの? 他人の物全部燃やすとか、頭沸いてんじゃねーの? 何様のつもりなの?」

 オレは外人女と距離を詰めようと、一歩踏み出した。


 ゴミの上に居た水の塊が、凄い速さで飛んできて、オレの顔を包み込む。

 口の中にまで入ってきやがった。

 相変わらず、ちょっと熱めのお湯だ。

 手で払いのけようとしたが、ぬるりとかわされた。


 お湯はすぐに口から流れ出し、胴を伝って地面に流れた。地を這いながら、切り落とされた髪を巻きあげ、ゴミの上に舞いあがる。


 水の塊は、ゴミの上にオレの髪を吐き出し、清水に戻った。


 さっきから、何なんだよこれ? 


 「何様って……さっきツネ兄ちゃんが言ってたよね? ノリ兄ちゃんはムルティフローラの王族だって。王族の命令で近衛騎士が動くって言ってんの。権限も何も、山端家の俺と真穂の許可があるんだから、問題なんてないだろう」

 賢治が生意気な口をきく。


 泣かす。

 コイツ絶対、後で泣かしてやる。

 ツネちゃんもついでに蔵に閉じ込めてやる。

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【関連】 「汚屋敷の兄妹
賢治と真穂視点の話で「汚屋敷の跡取り」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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