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ポインセチア

作者: 知多 悠

初投稿です。


至らない点も多いと思いますので、ご教授頂けると幸いです。

よろしくお願いします




「ただいま・・・」


暗い室内に小さく発した声が変に響いた。


机上に無造作に置かれたホワイトボードには、急いで書いたのか不格好な字が羅列している。


どうやら、父と母は帰ってこれないらしい。


沸き出してくる感情を誤魔化すように、紫音はやや乱暴にテレビをつけた。


テレビの中のアナウンサーが、七時であることを告げ、今日の特集を紹介し始めた。


クリスマス当日らしく、『公認サンタクロース』というものの特集をするそうだ。


その話題が今日が約束していた日だと、否が応でも伝えてくる。



「ばっかみたい」


今年こそはみんなでお祝いできると期待して。


「ばか・・・みたい」


ここの所ずっと、浮ついた気分で過ごして、帰りにケーキを買って。プレゼントだって準備して。


「ほんとに、ばかみたいじゃない・・・」


傍目から見ても、紫音が今日の夜を待ちどうしく思っていることが分かるくらいだった。


こうなると心の何処かで予想しつつも、彼らを信じることをやめられなかったのだ。


なんて、滑稽なんだろう。


視界に映る、ポインセチアの赤色が眩い。


唇を噛んで、抑えていた涙がとうとう零れた。


後を追うように次から次へと零れていく。


クリスマスを恨んで、うらんで、やっと今年こそは好きになれると思ったのだ。


毎年、クリスマスは両親に仕事が入り一緒に過ごせることなどなかったのだから。


クラスメイトや友人が両親と楽しく過ごした思い出を語るたび、羨み、恨んだ。


だから、両親が休みを取ったと言った今年のクリスマスに期待をしていたのだ。


やっと、やっと、両親と、クリスマスを過ごせる。否、誕生日を当日に祝ってもらえると、期待したのに。


やっぱり、仕事をとるんだな・・・


物が散乱している室内に、お札が二枚置いてある。


謝罪のつもりなのだろうが、それが更に少女の心を抉ることに、少女とほぼ接しない両親は気づかない。


だけど、来年こそはきっと、と、少女はまた期待を抱えて眠る。


その腫れた目を見るものが誰も居ないことには、気づかないふりをして。




読んでいただき、ありがとうございました。


ポインセチアの花言葉:『聖なる願い』

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