ファーストコンタクト
三年前、この世界は一度崩壊した。
小惑星の衝突や気候の変化による異常現象などではなく『人間同士の戦争』によってこの世界は崩壊したのである。
核ミサイルや銃弾が飛び交う、そんな地獄絵図のような状況で人類の人口は三分の一まで減ってしまった
そんな世界が終わらずに崩壊でおさまったのは《アルマ》と呼ばれる兵器によるものだった。
見た目はただ人が機会の鎧をまとっているようにしか見えないがその性能は、世界の戦争事情を大きく変える力を持っていた。
機動力、防御力、火力全てが優れていて死角がない。
そんな化物のような兵器が登場したことにより人間同士の戦争は終了した。
だが世界は平和にはならなかった。
戦争でどの国も多くの資源と領土を失い、今度は戦争ではなく資源闘争が始まった、当然その闘争にはアルマが使用されるようになった。
アルマを使った闘争は今までの戦争とは比べものにならなかった
一般兵など手も足も出ず、その勝敗が決まるのはアルマの操作技術によるもの
そのためアルマの操作技術向上を目的としたアルマの専門学校ができた。
今日本には十の専門学校があり。その十の学校は十学と呼ばれた
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
−現在− 第一アルマ専門学校アストラルにて
『うわー派手に壊れてるなコレ、直すのに時間かかるやつだ』
日乃々木 楸はアルマの武装ユニットを眺めそういった
『口を動かすんじゃなく手を動かせ手を』
『う、すみません』
『お前も一応腕利きの整備士だろう、さっさと直らんのか?』
そんな無理なこと言われてもなぁ
上から目線の命令口調で話しかけてくるのは第一アルマ専門学校アストラルの学校長シルフィード=アヴァーフォース
紫の髪で見た目とても凛々しいのだが中身に問題アリな人だ
『でもこんな壊れ方をするなんて珍しいですよ、これを使ってる人ってどんな人なんですか?』
アルマは基本原動力であるコアが壊れない限り落ちることはない
ただこれは全くの逆でコア以外全てが破損している、一体どんな無茶な戦い方をしたのだろうか。
『それ使ってんのはこの学校の中でも五本のゆびで数えられるくらいの強さを持ってるやつだよ』
… …はぁっ!?
『そんなすごい人のだったんですか!?、てかそれ僕に任せたらダメじゃないですか!』
アルマ専門学校では優秀生に通常のアルマよりも性能のいいアルマを使わせている、それは優秀なほどさらに性能がいいものを使わせてもらえる。
さてここで問題になるのはアルマ整備士にも優劣があり、ランク分けされているということ
アルマ整備士はランクでどのアルマをメンテナンスしていいかが決まる。
今整備しているのが学校の中で五番以内の実力者が使っているということだからおそらく整備士のランクはSぐらい必要だろう
だがしかし、僕のランクはAAであと二階級上げないと整備できないのである
『別にバレなきゃなんとかなる、お前は私の中では結構腕のいい整備士だと思っている、自信を持て』
『いや、自信を持て、じゃないですよ
見つかったら俺の整備士免許剥奪ですよ』
はははとシルフィードさんに笑われる、いや笑い事じゃないんだけどね!仕事なくなっちゃうけどね!
『まぁなんだそこらへんは少しくらい融通きかせろよ』
この人の頼みだとそう簡単に断れない。
シルフィードさんは命の恩人だ、三年前死にかけた時に命を繋ぎ止めてくれたのはシルフィードさんでその時に命を助けるかわりに所有物になると約束させられてしまったのだ
『分かりましたよ、でも五番以内の実力を持った人のアルマが何故こんなボロボロなんです?』
何故そんな強い人のアルマがこんなことになっているのか楸には全くもって見当がつかなかった。
『相手が悪かったって言うとこかしら』
後ろからの声に振り向いてみると金髪の美少女が堂々と立っていた。
『なんだ別にこなくても良かったのだが』
シルフィードさんは少し驚いたように声を出したがそのあとやれやれと口ずさんでいた。
『ねぇあんた』
『っ、はい』
いきなり声をかけられたので少し反応に遅れてしまった
『私のアルマ、しっかり直しなさいよ、少しでも整備不良があったら一刀両断するから』
悪い事を何一つしていないのになんか死刑判決されてる気分だ。
『そんな事より校長』
『ん、何か問題でもあったか?』
『現在進行形で問題ですよ、何故こんな下級整備士に私のアルマをメンテナンスさせてるんですか、私のアルマの整備は上級整備士の人にやってもらわなくては困ります』
とてもごもっともであるが僕は悪くない、僕は悪くないはず
『こいつは見た目よりもできるやつだ、確かに今はランクが低いが能力を全体的にみるとSランク以上の整備士並だぞ』
褒めてもらってるのは嬉しいが俺、そんな見た目ダメなやつかな
『ですがっ』
『ですが、なんだ貴様、まさか私に逆らおうとしてるのか?』
怖い、この人すごく怖い
『い、いえなんでもありません』
気持ちはなんだかすげーわかる気がする
金髪美少女はそう言ったあとくるりと周り楸の方を向いて
『校長のお墨付きだからといって調子に乗らないで、私はまだ貴方を認めてなんかない、でもやるからにはしっかりやりなさい』
なんでこんな上から目線の命令口調なんだ、どっかの誰かさんに激似だな
『整備するには全力を尽くすよ、そこは別に心配しなくても大丈夫だけど直すのに結構時間がかかる』
いつも通りの口調でいつも通りの対応をしたはずなのだが
『あっそ、さっさと整備しなさい』
捨て台詞を吐きながら金髪美少女は去っていった
『シルフィードさんあの子なんなんですか、一応この学園で五番以内の実力者なんですよね』
『彼女はフィーネ・ハトムシーク、アーサー王の血縁だそうだ、まぁ悪いやつじゃないんで仲良くやってくれよ』
『ふぇ!?アーサー王!』
俺と彼女のファーストコンタクトは最悪だった