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読むな危険

雨上がりに

作者: 紫乃咲

お題:離れられる距離感で・滑らかな肩をそっと包んで・愚者の恋




「愚者は、最初から愚者だったわけじゃないんだぜ」

「はいはい。いいから黙って」


 夕暮れ時の河川敷。さっきまで降り続いていた雨は、もう止んでいる。

 泥だらけで傷だらけの哲哉は、大の字になって寝そべっていた。

 そんな哲哉の傷の手当てを香澄は慣れた手つきで黙々と初めている。


 哲哉はいわゆる学校のはみだし者で、その大きな体つきと、目つきの悪さのせいか、常に誰かに絡まれる。


 哲哉は、売られた喧嘩は買う主義だ。

 今も、丁度雨の中の乱闘が、終わったところ。

 痛みを伴う大きな体を投げ出しながら、まだどんよりとした曇り空を眺めていた。


 香澄は、哲哉の幼稚園の頃からの幼なじみ。

 生傷絶えない哲哉を放っておけなくて、いつも救急セットを持ち歩きながら哲哉の後を追いかける。

 今も、遠くから喧嘩の様子を見守っていて、終わった所を見計らって傍まで寄ってきたのだ。


「いいか? 考えに考え抜いて、何も考えないことを選んだんだ俺は」

「なんだか、もっともらしい事言うわね」

「いてっ。もっと優しくさわれよ」

「こんなバカなこと毎回しなけりゃ、優しくも出来るけど?」

「ついて来いなんて頼んでねえし。巻き込まれたらどうするんだよ」

「あれ? 心配してくれるの」

「しねえよ! さっさと帰れ」


 哲哉は、そう言ってフイとそっぽを向いた。

 香澄は、ため息と共に肩を竦める。

 チラリと、横目でみつめた哲哉の眼差しに、そんな香澄の仕草が映った。

 泥だらけの哲哉に、躊躇なく手を伸ばす香澄自身も、すでに泥だらけだ。

 哲哉は、香澄から逃げるように再び視線を逸らした。


 いつも、気にかけて哲哉のそばにいる香澄。

 だけど、香澄は普通の高校生だ。いつまでもこんな風にそばにいたら、いつか本当に巻き込んで傷付けるかもしれない。

 哲哉は、それだけは避けたかった。

 だから。


「はやく、かえれ」


 ぼそりと。力なく呟いた。

 香澄は、その声に泥のついた頬をゆるませる。


「終わったらね。一緒にかえろ?」


 いつもの会話の続きのような口調で、優しく声がはずんだ。

 香澄の声は、いつもこんな風だ。包み込むような声。

 聞きなれているせいなのか、いつまでも聞いていたい音。


「……はい。終わり」


 そう言うと、香澄はテキパキと救急セットを片付けて立ち上がる。

 差し出した手は哲哉へ。


「立てる?」

「お前の力で俺を引っぱれるとでも?」

「おうよ! やってみようじゃないか」

「ばあか」


 はずませた声で、胸をはる香澄。

 哲哉は小さく笑うと、香澄の手をにぎり、そのままグイと引き寄せた。

 難なく崩れ落ちる香澄の身体。哲哉は、香澄の身体を抱きとめた。

 香澄の柔らかな髪の匂いが哲哉の鼻をくすぐる。

 哲哉は、香澄の細く滑らかな肩をそっと包むように腕を回した。

 耳元で、息を吐くように声を出す。


「俺のそばにいたら、お前まで学校に睨まれるぞ」


 その声に、哲哉の腕の中の香澄は顔を上向きに。

 じっと哲哉を見つめ


「聞きあきたよ、その言葉。私が、てっちゃんのそばに、勝手にいるだけなんだから、気にしないの」


 そう言って、わざとらしくにっこりと笑う。

 哲哉は肩を竦めた。


「頑固だなお前も」

「お互い様でしょ? さ、帰ろう」

「そうだ、な」


 哲哉は香澄の声に頷いた。

 香澄は、哲哉の肩を借りて立ち上がる。続いて哲哉。

 先を歩く、香澄のうしろ姿に哲哉は眩しげに瞳を細めた。


 本当は、いつでも離れられる距離感がいい。

 いつか、愛想が尽きて香澄がどこかに行ってしまっても、そのほうがすんなり諦められる。

 そう、思うのに。


「……てっちゃん?」


 なかなか縮まらない距離を、不思議に思ったのか。

 香澄が、振り返りながら立ち止まる。


 哲哉は、頭をかきながら大きくため息を。

 諦めたように俯きながら、小さく笑った。


「……今行く」



フリーワンライ三回目。


うっ。

誤字発見(笑)

これ後で修正してもいいんだろうか。

まあ、今回も見事に書きなぐったので、

読み返すと冷や汗しか出ません。

寝転がっていた哲哉は、いつ起き上がったんだろうか(謎)


でも過去二回(実は三回)に比べると

少し形が見えてきたような……。


気のせいか(泣)

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