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Mystisea~運命と絆と~  作者: ハル
一章 反乱軍
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反乱軍のリーダー

 約束の時間がもう少しとなったところでアレンは酒場へ行こうとするが、その前に問題が一つだけあった。

「んん~……おかわりちょうらい……」

 夢の中でも酒を飲んでるのかと思うとさすがのアレンも呆れる。

 どうやらアレンが寝たあと、セレーヌは朝まで飲んでいたらしい。床にはかなりの数の飲み終わった酒瓶が転がっていた。この量を見る限りでは昨日の報酬は全部使われてしまったようだ。もはや怒る気さえ起きなくなる。

 時間は迫っていて、このまま寝かせいくわけにもいかずアレンはセレーヌを起こすことにする。ちなみにこの状態のセレーヌは普通に起こしたんじゃ絶対に起きない。そんなことは長い付き合いのアレンには十分承知だったので、とりあえずセレーヌをベッドから蹴落とした。ゴン!という鈍い音がすると、どうやら頭から落ちたようでその痛さにセレーヌは目覚める。

「いてててっ」

 セレーヌはまだ寝ぼけているようで辺りを見回す。そして散らばっている酒瓶と呆れているアレンと外が暗くなっているのを見て、なんとなく状況が見えてきた。

「もしかして……ずっと寝てた?」

 アレンは無言で頷く。すると慌ててセレーヌは起き出した。

「あー…頭痛い……」

 どうやら信じられないことに二日酔いになったらしく、頭を抑えている。酒豪ともいえるセレーヌにしては、珍しいことでもあった。そんなんで大丈夫かと思ったが、セレーヌのことなので心配はしない。セレーヌは慌しく動いて準備していた。

「早くしろよ」

「分かってるわよ」

 そう言って準備が出来たようでアレンのほうへ歩いてきた。

「悪かったわ。朝まで飲んでてさぁ」

「ったく」

 予想通り朝まで飲んでいたらしい。アレンは何か言いたかったが、早くしないと約束の時間に間に合わないので急ぐことにした。酒場まで歩いている間もセレーヌは痛そうに呟いていた。







 酒場の中へ入ったらすでに三人は準備を終えていた。ぎりぎり時間には間に合ったようだ。

「遅かったな。逃げたのかと思ったぜ」

 ヘイスがそう言って挑発しようとしたが、セレーヌはそれに返事をする気力がなかった。何も言い返してこないセレーヌを見てヘイスは訝しげに思いよく見てみると、セレーヌは少し辛そうにしていた。

「お前どうしたんだ?」

「二日酔いらしいです」

 答える気もないセレーヌに代わってアレンが答えた。

「二日酔い!?」

 さすがに二日酔いということにヘイスだけでなくアイラとグレイも驚いた。その反応を見てアレンは当たり前だよなと納得する。今日はサルバスタ解放の日なのだ。今の反乱軍にとってはそれなりに大きな作戦でもあり、失敗は許されない。それなのにその前日に酒を飲んで二日酔いになるとはヘイスたちは信じられなかった。

 アレンにとってはセレーヌに常識が通用しないことなど分かっていて、大事な日に二日酔いになっていることなどそう珍しいことでもないのだ。しかし彼らにはそうでもない。

「ふざけんなよお前!お前にとっちゃ大したことないかもしれないけど、俺たちにとっては大事な作戦なんだ!……やっと……やっと俺たちふがいない王族や軍が守れなかったこの街の人たちを解放させてやれるんだ……」

 ヘイスはとても悔しそうに言葉を搾り出した。アイラとグレイも何も言わなかったが同じ気持ちだ。こんな日に二日酔いで来るとは今回のことが甘く見られているように思えてならない。

 セレーヌはそんなヘイスを見て意外に思った。こんな風に思っているとは思わなかったのだ。さすがのセレーヌも少し悪かったかなと思う。

「悪かったわよ。けどやることはちゃんとやるわ」

 ヘイスは少し黙っていたが、セレーヌが真剣に言っていることが通じたのか渋々といった感じだったが承諾した。

「分かった」

 アイラはそれを見て今日のことについて切り出した。

「それじゃぁヘイス兄さんとセレーヌは先に砦へ忍び込んで人質をお願いするわ」

「あぁ。任せとけ」

「セレーヌ、分かっているとは思うけど今回の作戦は時間が勝負よ。失敗は許されないわ」

「分かってるわよ」

 やはり未だ頭を抑えているセレーヌが心配でもあった。だがヘイスがいるので大丈夫だろうと思うことにする。

「行くぞ」

 ヘイスがセレーヌに言うと、セレーヌはヘイスに命令されたようで気に食わなかったが、やはり今日は言い返す気力もないので黙ったままヘイスのあとに続いて砦へと向かった。二人を見送ったあとアイラは次は私たちね、と言いアレンのほうを見る。

「恐らく外ではそろそろ反乱軍が待機してるはずよ。街に入れるために門をこれから開けに行くわ」

「分かった」

「少なくとも見張りが数人いるはずだから気をつけて」

 そう言ってアイラとグレイが出て行くのでアレンも後ろをついていった。







 アレンたちは特に問題もなく門の傍までやって来た。

「見張りは三人ね。ちょうど一人ずつだわ」

 アイラは見張りの兵士たちにばれないように隠れながら確認した。アレンも見ると門の前に立っているのは三人だけだ。しかも暇をしているようで、あくびをして半分寝ているやつもいる。これを見て楽勝だなと思いながら、行動に移すことにした。

「行くわよ」

 そう言ってアイラが駆け出し、そのあとにグレイとアレンが続いた。

「な、なんだ!?」

 突然暗闇の中から何かが走ってくる音を聞いて見張りの兵士たちは慌てだした。その隙にアレンは一人の兵士の懐に飛び込み一気に斬りつける。倒れたのを確認してから二人のほうを向いた。どうやら二人のほうもあっけなく終わっているようだった。

「これでいいわね。さぁ、早く門を開けましょう」

 そう言ってアイラは門を開ける。するとその先から一人の男が出てきた。その男はヘイスと同様に美しい金の髪を持っていて、それを見て直感的にアレンはこの男が反乱軍リーダーのセイン=レリック=フューリアだと悟る。

「アイラか?」

「そうよ。セイン兄さん」

 アイラだと分かるとセインはこちらへ近づいてきた。そしてその後ろから続々と静かに反乱軍が入ってくる。どうやら本当に百人のようらしい。

「大丈夫だったか?」

「えぇ」

 セインがアイラを心配そうに見ていた。そのあと何か少し話をしている二人を見ているとセインがアレンに気づく。

「アイラ。そこにいる彼は?」

「え?あぁ、彼の名はアレンよ。旅人だけれど今回の作戦に協力してもらってるの」

 一瞬誰のことかと思ったがすぐにアレンのことだと分かり、アイラはアレンのことをセインに紹介する。するとセインはアレンを品定めするかのように見つめた。

「俺は反乱軍リーダーのセインだ。アレン、作戦に協力してくれて礼を言う」

「大したことは出来ませんが……」

 アレンは反乱軍リーダーを始めて前にして考える。

(この男が反乱軍のリーダー……お手並み拝見というところだな)

「いや、帝国を倒すためにはどんな小さな力でも必要なんだ。よろしく頼む」

「……はい」

 アレンの返事を聞くと、セインは気を良くしたようだった。そのあとはまたアイラに向き直り、今後のことを聞く。

「これから砦へ攻めるんだな?」

「えぇ。けれど敵の半分はフューリア軍の人間よ。今ヘイスともう一人のアレンの仲間が人質を助けに行ってるの。だからそれまでは防戦一方の戦いになるわ」

「そうか」

 二人の顔は真剣だった。サルバスタを解放することは結構大きなことだ。今まではいろいろなところで小さな規模の戦いしか起こっていなかったが、この街を解放することによって恐らく少しずつ争いは大きくなっていくだろう。

「セイン様、私の槍を」

 戦闘が間近になってきたところでグレイがセインに言葉を掛けた。グレイの本来の武器は槍である。今回は潜入任務だったので大きい槍を持つのは不便だったので置いてきたが、こらから戦闘になるのなら自分の槍で戦うほうがいいだろう。グレイはセインに頼んでいた槍を受け取ろうとした。

「グレイ、頼むぞ」

 そう言ってセインは槍をグレイに渡した。その槍は普通の槍とは違っていた。

 素人が一目見ても素晴らしいものだと分かる。アレンはなかなか目にかかれない槍を持つグレイが只者ではないと感じる。王女や王子と一緒にいることからして恐らくは反乱軍でもかなりの実力を持つものなのだろう。その槍さばきを見てみたいと心から思った。

「心得ています」

 グレイは受け取った槍を手に持つと、やはり馴染んだものは違うと感じる。

「これから砦へと攻める!ヘイスが人質を救出するまで凌げばこちらの勝ちだ。心してかかれ!」

 セインは反乱軍たちに向かって大声を出した。彼らもそれぞれ掛け声を上げる。そしてセインを先頭に反乱軍たちは夜の街を駆け抜けていく。アレンもセインのあとを走っていった。

 何か大きな変化が起きるだろうと予測しながらも。


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