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Mystisea~運命と絆と~  作者: ハル
二章 ダーナ城奪還
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出会う三人

 アイラは探している人物が見当たらず、野営地を彷徨っていた。

「いないわね……」

 呟きながらも探しているが、全然見当たらずに困っていた。どうしようかと思っていると、一つの声が掛かる。

「あんた何やってんの?」

「セレーヌ」

 アイラはセレーヌを見つけていいタイミングで現れたと感謝する。

「ちょうど良かったわ。アレンを探しているんだけどどこにいるか知らない?」

「アレン?アレンならここから離れたあっちにいるわよ。なんか珍しいことしてたけど」

 予想通りセレーヌはアレンの居場所を知っていたようだった。そしてセレーヌの言う珍しいことに興味を覚える。

「珍しいこと?」

「行けば分かるわよ」

「そう。ありがとう、セレーヌ」

 アイラは早速セレーヌが行った方向へと足を進める。

 その場所は野営地から少し離れたところで、アイラは本当にこの辺りにいるのだろうかと少し思う。すると小さくだが声が聞こえてきた。その声がする方向へと歩いていくと、そこにはアレンと一人の少年がいた。

 何をしているのだろうかと近くにいってみると、どうやらアレンが少年に何かを話してそれを少年は必死に聞いているようだった。これがセレーヌの言っていた珍しいことなのだろうか。アイラはアレンのことは全然知らなかったので、これがアレンにとって珍しいことなのかどうかは分からなかった。

 アイラは二人の近くへ行き、声を掛ける。

「こんなとこにいたのね、アレン」

 その声で今初めて気がついたらしく、アレンと少年がアイラの方を振り向いた。

「ア、アイラ様!」

 少年――ジェイクは自分にとって雲の上のような人物がいきなり現れたことに驚く。アレンの方は驚くことはなく、冷静に答えた。

「よくここがわかったな。何か用なのか?」

「ちょっとね」

 アイラは少し笑みを浮かべながら答える。すると少し親しげな二人の様子を見てジェイクは混乱した。

「アレンさん、アイラ様と知り合いなんですか?」

「まぁちょっとな」

 アイラはそれを聞いていると、大抵一人かセレーヌといるアレンが他の誰かといることなど滅多になかったのでこの少年に興味がわいてきた。

「彼は?」

「あぁ。こいつはジェイクだ」

「は、はじめましてアイラ様!」

 アレンがジェイクのことを紹介すると、ジェイクはかなり緊張した様子でガチガチになりながらもアイラに挨拶をする。

「はじめましてね、ジェイク」

「は、はい!」

 自分では一生話せるとは思えなかった人物に名前を呼ばれてジェイクは少し興奮気味になっていた。そんな様子を見てアレンとアイラは笑ってしまうと、今度はジェイクの顔が真っ赤になっていく。ひとしきり笑い終わるとアレンがジェイクに切り出す。

「今日はここで終わりにするか」

「あ、はい」

 今までジェイクに話をしていたのだが、最初は嫌々ながらも聞いていたジェイクだったが、いつのまにか熱心にアレンの話を聞いていた。そしてアレンはアイラが来たのでちょうどいいと時間だと思い、今日は終えようとする。ジェイクが少し残念そうにしながら頷くのを見て、アレンはつくづく分かりやすいやつだなと思う。

「また今度暇になったら話してやるよ」

「本当ですか!?」

 思った通り今度は嬉しそうな顔をする。それから少し話した後、最後に「絶対ですよ!」と言い残しながらジェイクは帰っていった。

「かわいい子ね。何話してたの?」

 ジェイクを見送りながらアイラが言った。

「ちょっとな。それより何か用があったんだろう?」

 アレンはアイラが自分を探していたことを思い出す。言われてアイラも用があって探していたことを忘れていた。

「明日のことなんだけど……アレンには私の部隊に入ってもらえないかなって」

「部隊?」

「えぇ。百人ずつ五つの部隊に分かれて、その一つを私が指揮するの」

 詳しい作戦は面倒だったので言わなかった。アレンも別に特別知りたいとも思わなかったのでそれ以上は突っ込まない。

「別に俺はどこでもいいよ。出来ればセレーヌと一緒のとこがいいけどな」

「そう。じゃぁ私のところでいいわね。セレーヌも後で誘っておくつもりだったしね」

「あぁ」

 別にそこまでセレーヌと一緒じゃなくてもいいのだが、いたほうがアレンは気が楽だった。

「用はそれだけなのか?だったら辺りも暗くなってきたし俺はそろそろ戻るけど」

「あら?私を送ってくれないの?」

 アイラがからかう様に笑いながら言うと、アレンも参ったと言わんばかりに笑った。

「それではお姫様、どうぞ」

 アレンがアイラに向かって手を差し伸べると、その様子はまるで本物の王子のようだと思いながらアイラはアレンの手を掴み取る。アイラはそのまま立ち上がるが、結局はすぐに手を離した。そのまま二人はまだ少し笑ったまま、話しながら野営地へと帰っていった。

 そこまで離れていなかったので数分で野営地に着き、二人はそれぞれ自分のテントへと向かおうとする。

「それじゃまた明日ね」

「あぁ」

 二人は軽く挨拶を済ませて戻ろうとした。するとその場に一つの声がする。

「アイラ!」

 アイラの名を呼びながら一人の男が走ってきた。

「ロウエン」

「こんなところにいたのか。ずっと探してたんだぞ」

 ロウエンがアイラのすぐ傍へくる。息を切らせて汗を少し流しているのを見れば、本当にずっと探していたことが分かった。何か用事でもあったのだろうかと思い尋ねてみる。

「どうしたの?何かあった?」

「いや。久しぶりに会ったんだし、何か話でもしようかと思ったんだが……」

 ロウエンはアイラと会えるのをずっと楽しみにしていたのだ。落ち着いて会いたかったのだが、軍議とかで二人とも忙しかったので時間もずっと取れなかった。やっと取れた時にはアイラはすでにいなく、今までずっと探していて、ようやく見つけたのだ。

「ところでそこにいる男は誰だ?」

 ロウエンはアイラとさっきまで一緒にいたであろうアレンを睨むような目で見た。アイラは二人が会うのは初めてだったと思い出し、それぞれ紹介することにした。

「彼はアレン。サルバスタで雇った傭兵よ」

「傭兵?」

「アレン、この人はロウエン。反乱軍の幹部の一人でもあるわ」

 互いに紹介し終えると、アレンは一礼する。

「よろしくお願いします、ロウエン様」

「なんで傭兵がアイラと一緒にいたんだ?」

 ロウエンはアレンがアイラと一緒にいたことが気に食わないようで、アレンに突っかかってきた。

「明日の戦いで私の部隊に入って欲しいって言ってただけよ」

 代わりにアイラが答えるが、ロウエンにはまだ納得がいかないようだった。

「アイラの部隊に?何で傭兵なんかを……」

「誰を選ぼうと私の勝手でしょ」

 ロウエンはアイラが自分は王女なのだということをもっと自覚して欲しいと思っていた。アイラの言ううこともその通りなのだが、そこら辺をもっと踏まえて考えて欲しいと思うものだ。いつものようにそれを注意しようとすると、それを察知したのかアイラが先手を打ってきた。

「それじゃ、私は帰るわよ。じゃぁねアレン」

 アイラはすぐさまそう言うと踝を返して歩き出した。

「アイラ!まだ話は終わってないぞ」

 ロウエンも遅れながら急いでアイラを追った。アレンはその際に一瞬睨まれたような気がした。

「恋人か?」

 先ほどのやりとりを見るからにロウエンがアイラを好きなことは分かったが、アイラがロウエンを好きなのかはよく分からなかった。別に嫌いではないようだったので勝手にそう結論したのだが、あながち間違ってもいないだろうと思いながらアレンも自分のテントへと戻って行った。







「マードック様!」

「何だ?騒々しいな」

 ダーナ城を守備しているマードックは大きな部屋で大勢の女に囲まれながら酒を飲んでいた。

「この城より南の平原に反乱軍と思われる軍勢が……」

 伝令の兵士の言葉を聞き、マードックは顔を歪める。

「反乱軍だと?数はどのくらいだ?」

「はっ、およそ五百ほどかと思われます」

「五百だと?そんなちっぽけな人数で我ら千の軍を相手にするというのか。笑わせる奴らだ」

 マードックは本当に笑いながら言う。数の差を聞いた時点ですでに勝敗は決まったと思っているのだろう。

「いいだろう。ブライアン軍の将官である俺様に喧嘩を売ったこと後悔させてやるわ!全軍に伝えろ、戦の準備だ!」

「はっ!」







「ヌーダ様、どうやら明日ダーナ城に反乱軍五百が攻めるようです」

「反乱軍が?」

 ここメレゲン砦にも反乱軍のことは伝わってきた。この砦を守る人物はヌーダと呼ばれるブライアン軍の師団長だ。ヌーダはブライアン軍でも珍しく頭脳を持った人物でもあった。

「反乱軍に対してダーナ城の我が軍は千ですので落ちることはないでしょうが……」

「なるほど……反乱軍五百ですか…」

「ヌーダ様?」

 ヌーダは反乱軍が勝機もなく無謀な戦いをするとは思えなかった。何が策があるのだろう。そしてダーナ城の南に集結しているとなれば、恐らくはあのサーネルもいると予想される。帝国の中でもサーネルは優秀な軍師として要注意されている人物でもあった。それゆえヌーダもこの事態に楽観視することは出来なかった。

「いいでしょう。間に合うようにダーナ城へ援軍二百ほど送りなさい」

「は?しかし我が軍と反乱軍の戦力は倍ほどの差が……援軍を送る必要などないかと思いますが」

「私の言うことが聞けないのですか?」

「いえっ!ただちに伝令します」

 伝令の兵士は援軍を送るという命令を訝しげに思いながらも部屋を退出していった。残されたヌーダは呟く。

「恐らくはあのマードックのことだから勝てると思っているのでしょうが……。全く何であんな馬鹿が将官だというのか……しかしここで恩を売っておくのも悪くはない。そして敵の軍師はあのサーネル=ハルトス、何か策があるはず……だがこの援軍までは見通してはいないだろう」


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