三人の女性
三人の女性に追いかけられる恐怖は尋常じゃなかった。
優雨は目に涙を溜めながら走る。
半笑いで追いかけてくる女性たちは徐々にスピードを上げていっていた。
来た道を戻り、とりあえずドアを目指す。細い道を勢いよく走りぬけ、ドアがあった場所までたどり着いた。しかし……。
「ウソだろ! ドアがねぇ!」
ドアが跡形もなく消えていた。
ドアがあったはずの場所はきれいに壁になっている。すぐに逃げ込もうと思っていた優雨にとっては最悪の事態だった。
二人の女性に壁際に追い込まれてしまったのだから。
逃げ場をなくした優雨は壁に背を向ける。
優雨を見つめ、じりじりと距離を詰める女性たち。
どうしようもないこの状況で、優雨はひたすら考えた。
そんな時、このまま突っ込んで強行突破、という言葉が一瞬頭を過る。
いつもの優雨ならば、リスクが大きすぎる賭けはしない。
しかしこの場合、それ以外の選択肢は「諦めて捕まる」しかないのだ。
ここはどんなにリスクが大きくてもかけるしかない。
優雨は全力で女性たちに向かって走った。
女性と女性の間を抜ける時、つかまれるかと思っていた優雨だが、女性たちは優雨をつかまなかった。
いや、つかめなかったのかもしれない。
優雨は先ほど自分が通った道へ向かおうとした。
しかし、優雨は道に入る直前で入るのをやめた。
なぜなら、道の奥に一人の女性を見つけたから。
先ほど追いかけてきていた三人の女性の内、一人だけが道で止まっていたようだ。
優雨は急いでもう片方の、まだ通っていないほうの道へ走った。
道は薄暗く細かった。
人一人が通れるくらいの幅だ。そんな道を全力で駆け抜ける。
この道に女性の絵がないか、少し不安ではあったが、気にしている余裕はなかった。真後ろに女性たちが迫っていたから。
女性たちは目を血走らせながら優雨を見つめて走っている。
最初は左に曲がり、そして次は右へ。そしてまた右へ曲がって、もう一度右に曲がった。
すると分かれ道が見えてきた。直進するか、左へ曲がるか。優雨はとっさに左へ、曲がった。
しばらく走ると中に何もない額縁が見えた。
(もしかして……)
その額縁を通り過ぎると、また何もない額縁がある。そこで優雨は気づいた。
(ここ、さっき来た道だ!)
この道の先にはドアがあったはず、そう思って優雨は走った。案の定、目の前にドアが見えてきた。優雨は迷わずドアの奥へ逃げ込んだ。