落した物の行方
ジリジリと首を絞められて、早苗は意識が薄れていっていた。抵抗してみたものの早苗の首を掴む手は微動だにしない。
早苗は呼吸ができず、無意識に手に力が入った。その時、カチッと音がした。
その瞬間、小さな光が現れて早苗の顔の前に浮遊した。光に照らし出され、早苗を襲った何かの姿が顕になる。
光は早苗と早苗を襲う何かの間で弾けた。
「ギャアァァ!」
早苗を襲っていた何かは目を覆っての仰け反る。それと同時に何かを落とした。
落とされたそれはその場を浮遊し、そして壁の方へと飛んで行った。そして壁をすり抜けて姿を消した。
「げほっげほっ」
早苗は咳をして呼吸を整える。そして抑えられていた首の痛みで表情を歪めた。
目の前でのたうち回っているものを見て、早苗は絶句した。ドロドロの赤い液体で濡れた腕。あらぬ方向へ曲がった足。ぼさぼさの頭髪。肌のところどころが擦り切れ、裂けている。
早苗はのたうち回る何かの正体にすぐに気がついた。
「朱音……」
早苗の前にいたのは、事故直後の姿をした朱音だった。
「お姉ちゃんのせいで……落としちゃったじゃない!」
朱音はフラつきながら腕だけを使って早苗に迫った。
早苗はとっさに背後にあったドアを開けて外へ出る。先ほど通った廊下に出るはずが、見たことのない通路へ出た。
通路は分岐点が何箇所もあり、迷路のような作りになっているようだった。
何も考えず、早苗は走り出す。とにかく朱音と距離を取らなければ殺されてしまう。その考えが早苗を焦らせる。
早苗が一つ目の角を曲がった時、ドアを壊して朱音が這い出てきた。
「待ちなさいよぉ……ねえ……」
朱音はゆっくりと這いつくばって早苗を追う。朱音が通った後にはべっとりと赤い液体が残っていた。
その頃、朱音が落とした何かが優雨の周りを漂っていた。それは優雨の顔の前を数秒浮遊した後、胸の黒い穴に入っていった。そしてどんどん胸の黒い穴は無くなっていく。
「……うっ」
優雨は意識を取り戻した。




