合流
優雨が開けた赤いドアの先には、たくさんのドアがある廊下があった。全てを開ける気になれなかった優雨は、とりあえずどのドアも開けずに先へ進んだ。
暗く静かな廊下に優雨の足音だけが響く。単調に響く足音が、優雨の恐怖心を少しずつ膨らませていった。
いくつもあるドアの中には、明らかに偽物とわかるドアが混ざっていた。クレヨンで描いたようなドアや斜めになっているドア。色々なドアの前を優雨はゆっくりと歩いて進んだ。
先に進むに連れて、徐々に優雨の心臓の鼓動が早くなっていった。通り過ぎたドアから何か出てくるのではないかという恐怖と、ここまで来る間に蓄積した疲れが少しずつ優雨の心を蝕んでいっていたのだ。
廊下の壁に等間隔に取り付けられた燭台で燃えるロウソクの火が、ゆらゆらと揺らめいている。火に照らし出された優雨の影が、恐怖に怯える優雨をあざ笑うかのように火の揺らめきに合わせて揺れていた。
ある程度進んだところで、廊下の終わりが見え始めた。
「とにかく早苗を見つけよう…あいつ、大丈夫かな…」
早苗のことを心配してはいたが、正直なところ、優雨は一人で居るのに耐えられなくなっていた。単調なリズムで響く足音と恐怖と疲れが優雨の冷静さをだんだんと奪っていっていたのだ。
(このままだと気が狂ってしまう…)
優雨は深呼吸をしながら、廊下の突き当たりにあるドアを目指した。
もう少しで突き当たりに付く。そんな時だった。
「うぅ…げほっげほっ…」
優雨の真横にあったドアから女性の声と咳が聞こえた。優雨は心臓が口から出そうなほど驚いたが、それと同時に、"早苗がいるのかも"と考えた。ドアを見ると少し開いている。優雨は恐る恐るドアを押した。古びた木が擦れる不気味な音が辺りに響く。ゆっくりとドアは開き、限界まで開いて止まった。部屋の中は真っ暗で、廊下からロウソクの灯りが照らしている入り口付近しかまともに見ることができない。
「げほっげほっ」
部屋の暗闇の中から、また女性の咳が聞こえた。優雨は入り口から目を細めて部屋の中を見渡した。すると、薄らと部屋の奥にうずくまる影が見える。
その影は、ドアが開いたことに気づいて立ち上がった。そしてゆっくりと入り口へ歩いてくる。
影が近づくにつれて激しさをます胸の鼓動。恐怖と緊張で張り裂けそうな胸を押さえながら優雨は近づいてくる何かを凝視した。そして入口付近にたどり着いた何かの姿がロウソクに照らされて顕になる。
「さ、早苗…!よかった…」
「ゆ、優雨…」
暗闇から現れた彼女は、力なく優雨に抱きついた。首元に回された手は氷のように冷たく、この世のものとは思えないほど白かった。合流できたことに安心しきった優雨は、抱きしめながら彼女の頭を撫でる。
「出口を探そう。 一緒に家に帰ろう」
優しく手を握り、優雨は歩き出した。
優雨は手を引きながら、廊下の突き当たりにあったドアへ向かった。二人は言葉を交わすことなく、黙々と歩く。優雨は彼女と合流した時から、じっとりと全身を包むような悪寒に襲われていた。廊下に流れる冷たい空気が全身にまとわりついてくるようだ。優雨は"大丈夫、今は一人じゃないんだ"と心の中で言い聞かせて歩き続けた。
そんな時、何故か優雨は急に昔のことを思い出した。
次回は優雨の回想です!




