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霧の中に見えたもの

 薄暗い道を歩きながら、優雨は早苗の手を引いて歩いていった。


 気がつけば、もう入ってきたドアさえ見えない。足元に気をつけながら二人は進んでいく。




 しばらく歩いたあたりで霧の一部が揺らぎ始めた。優雨と早苗は歩みを止める。




 だんだんと霧の色が変わっていき、どんどんあたりが明るくなっていく。


 霧が変化を止めたとき、そこには見慣れた道路があった。優雨たちの家の近所にある道路だ。


 一瞬にして景色が変わったことに動揺しながらも、優雨たちは先へ進もうとした。その時だった。




 道路にあった横断歩道に人が現れた。優雨はの人物の姿を見て、自分の目を疑った。




 横断歩道を歩いていたのは朱音だった。


 大きめのスケッチブックを抱え、少し急ぐようにして歩いている。


 歩行者信号は青だ。安心して朱音の様子を見ていた優雨たち。





 朱音は前だけを見て歩いている。本人にとっての精一杯の歩幅なのだろう。朱音は少し息が上がっていた。


 そんな朱音が横断歩道を渡りきろうとした時だった。





バンッ!





 信号無視をしてきた車に、朱音ははねられた。


 鈍い音と共に、朱音の体が宙を舞う。


 そして朱音の体は勢いよく地面に叩きつけられ、あたりに赤い液体が飛び散る。


 朱音が横たわる場所がどんどんと赤く染まり、鉄のような匂いが充満していった。





 早苗は口を抑え、こみ上げる吐気を堪えながら膝をついた。


 涙を流しながら嗚咽を噛み殺すように息を抑えている。




 優雨もひどい吐き気に襲われていた。





 朱音は少し遠くに飛ばされたスケッチブックに一生懸命に手を伸ばした。


 しかし、スケッチブックは完全に手の届かないところにある。朱音は手を伸ばしたまま、動かなくなった。



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