脱出
走り出したはいいものの、よく見ると足元のいたるところに花が生えている。
どこに逃げようと、花が近くにあったら意味がないのだ。しかし、障害物の無い場所を走っている今は立ち止まれない。
優雨たちの地面を踏みしめる音が影の主を誘導してしまっていた。立ち止まれば捕まってしまう。
しかしこのまま闇雲に走っていても体力を消費するだけ。もう少し考えて行動すべきだったと優雨は後悔した。
影の主は優雨の想像以上に足が速く、少しずつ距離を詰められていく。
霧の中を早苗の手を引いて走り続ける優雨。だんだんと早苗の走る速度が落ちてきて、体力の限界が近いことが伝わってきた。
(これはもう、行ってみるしかない)
優雨は決意し、走る方向を一気に変えた。出口のドアに向かって全力で走る。
それに合わせて影の主たちも走る速度を上げた。ドアの方向にいた影の主も、優雨をたちの方へ走ってくる。
だんだんと正面から影の主が近づいてきて、優雨たちに接触しそうになった。
その瞬間、優雨が影に向かって体当たりをした。
思いっきり体当たりをしたつもりが、優雨の体は影をすり抜け、そのまま直進した。影をすり抜けた瞬間、優雨は胸が苦しくなる感覚にとらわれる。
しかし、その感覚はすぐになくなった。
影の主には実体がなかった。しかし、足元の斧のようなものを引きずった跡は残っている。斧には実態があるようだ。
二人は必死にドアに向かって走った。
優雨は早苗よりも一足先にドアの前についた。乱暴にドアを開け、早苗が来るのを待つ。
早苗は影に捕まるぎりぎりのところでドアに飛び込んだ。その瞬間優雨がドアを閉める。
二人はその場に座り込んで息を整える。早苗は胸を撫で下ろし、軽く深呼吸をする。そして優雨の方を見た。
その時、早苗は優雨の様子がおかしいことに気が付いた。




