太陽
優雨は、ゆっくりとドアノブを握り直して深く息を吸った。
さっきより、心なしか手の震えが治まってきている。早苗の笑顔が、優雨の心を落ち着かせたのだろう。優雨は力強くドアを開けた。ドアの先には明るい景色が広がっていた。
「ここ、室内だったよな……?」
ドアの先に広がっていたのは、明るく爽やかな雰囲気の草原だった。さっきも花が生えている部屋はあったが、あの部屋は室内に花がある、という状態だった。
この部屋はまるで外に出てきたかと錯覚するほど、広くて明るい。見た目は草原だし、太陽もあって、風まで吹いている。早苗は優雨の前に出て、あたりを見渡した。
「すごい、ここって外みたい。 もしかして外に出れたのかな?」
「それはない。 俺たちは地下にいるはずなんだ。 まだ階段を上ったりしていないんだから、外に出れるわけがない」
最初に階段を下って、更に穴に落ちて下まで来ているのだ。地下二階くらいにいると考えていい。
草原の中に一本の道があった。とりあえず二人はその道を進むことに。
その道は、ちゃんとした道ではないが、不自由なく歩ける程度の道だった。草原を見渡しながら、二人は歩いていく。少し進んだところで、早苗が突然しゃがみ込んだ。
「優雨君! 花が生えてるよ。 小さくてかわいい」
優雨は早苗が見ていた花を覗き込んだ。青い花びらのきれいな花だ。花を見て微笑む早苗を見た優雨は、少しほっとする。
怖い思いをして精神的に追い詰められているかと心配していたが、まだ笑顔を見せる余裕が早苗にはあった。そんな早苗を見て優雨は微笑む。その時だった。
『花たちはあなたを見ている』
優雨は花が生えていた部屋の立札を思い出した。そして、急いで早苗を花から遠ざける。いきなりの事に戸惑う早苗は、優雨を見て首をかしげた。
「どうしたの?」
「ここの花は危険なんだ。 近づかないほうがいい」
早苗はきょとんとしながらもうなずいた。そしてゆっくりと歩き始めた。優雨もその後ろから歩いていく。
部屋に入った時に優雨は、太陽があることに気が付いた。室内に太陽がある時点でおかしいのだが、もう一つ優雨には気になることがあった。それは太陽の動く速度。
日中、人は太陽の動く速さなど気にしないだろう。なぜなら見ていてわかるほどの速度で動いていないから。気にするだけ無駄ということだ。
しかしこの部屋の太陽は、いつもの空にある太陽とは違う。動きが速いのだ。部屋に入った時は斜め上に見えていた太陽が、いつの間にか真上にある。部屋に入ってまだ十五分ほどだ。太陽が真上に動くには早すぎる。
気にはなったが、あまり考えずに優雨と早苗は先に進んだ。




