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第二十九話 置いてけぼりの心と向き合う思い

翌日、金曜日。


今日は、週に一回の登校日。


たぶん、彼も行くはず。


私は、服を着替えると、いつもの待ち合わせ場所へと向かう。


緊張のため、かなり早く起きてしまい、ご飯もほとんど喉に通らなかった。


彼は一体どうなんだろう。


もしかすると、彼もやっぱり緊張して、ご飯が食べられなかったりするのだろうか。


だけど、それはすぐに打ち消す。


たぶんきっと彼はきちんと食べてきていると思う。


例え無理やりだったとしても。


携帯を出して時間を見る。


約束の時間はとっくに過ぎている。


やっぱり来ないか。


分かっていたはずなのに、ずっと待ってしまっている自分に苦笑してしまう。


だけど、なぜか足は動かない。


ここで待っていても、彼は絶対来ない。


そんな事ぐらい分かっているはずなのに、足が動いてくれない。


時間はどんどん過ぎていく。


視線はいつの間にか、彼がいつも通る道へと向かっている。


そこで思う。


心のどこかで願っているんだ、と。


もしかすると、彼が来てくれるかもしれない、と。


けれど、やはり彼は来ない。


時間はどんどん過ぎていく。


もうそろそろ、ぎりぎりの時間になる。


だけど、視線は同じ方向。


彼が通る道。


でも、やっぱり彼は来ない。


もうそろそろ、走らないと間に合わない。


それでも彼は来ない。


私は走り出す。


泣きそうだった。


彼は来ない。


彼は私を待たない。


でも、もしかすると、もしかすると、ただ今日も休みのだけなのかもしれない。


私は一生懸命になって走った。


遅刻しそうなのもある。


だけど、それ以上にそうやって必死になっていないと、感情に押しつぶされそうだった。


そうでもしないと、彼を信じられなかった。


でも、教室に入って見つけてしまった。


今までどおり、無愛想で仮面をかぶった表情で、ぼんやりとしている彼の姿を。


彼はやはり、私を待っていなかった。


もう、終わりなんだろうか。


彼の中ではもう完全に終わってしまったんだろうか。


いやだ。


絶対にいやだ。


私は諦めない。


諦めたくない。


私が席に着くと同時に担任の先生が入ってくる。


今日は単に集まるだけで、これといってすることはない。


だから、担任が少し話すとそれでお開きになる。


クラスの人はそれぞれ散り散りなって思い思い友達と話している。


私のところにも、もちろん友達が来る。


別々のクラスになってしまった友達もそうだ。


だけど、今は友達と話している余裕なんて無い。


彼はもう既にかばんを持って、教室を出て帰ろうとしている。


「ごめん、ちょっと用事があるから」


友達にそう言うと、必死になって彼を追いかける。


私と違って彼は走っているわけじゃないのですぐに追いつく。


けど、全然私のほうを見ようとはしない。


「待って」


そういって彼の腕を掴む。


そうでもしないと止まってくれそうにもなかった。


「お願い、話があるの」


腕を掴まれた彼の顔は、今までと違った。


ううん、付き合う前の、それこそ初めてあった頃の顔と同じ、柔らか味が消えていた。


だけど、めげない。


まだ、私は別れるつもりはない。


まだやり直せるはずだと思う。


だから、まず話し合いたかった。


彼の腕を掴んだまま、引っ張るようにして連れて行く。


場所は、お弁当を食べていた場所。


あそこなら、誰にも邪魔されず、話し合えると思う。


けれど、そこに行くまで、周りの私たちの見る目が怖かった。


なんだか、私たちが別れたことを見抜かれるんじゃないかって、思えて仕方なかった。


そんなはずはない。


そんな事があるはずなんてない。


心の中で、何度もそう言い聞かせても、効果はない。


我慢するしかなかった。


付くまで我慢するしかなかった。


だから、そこに付いたときはまずほっとした。


だけど、そんな事をしている余裕なんてない。


これからが本番なんだから。



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