第二十六話 繋がる電話、繋がらない思い
いつの間にか眠ってしまったみたいだ。
部屋の壁に掛かっている時計を見ると、六時を大きく回っていて、既に半近くなっている。
こういうときは眠れないものだと思っていたけど、不思議と眠れる事ができたみたいだ。
でも、それがなんだか心苦しい。
まるで、それがこのことを大して気にとめてない、それこそどうでもいいことに思っている。
そんなふうに思えてくるから。
私はおもむろにすぐ傍においてある携帯を手に取る。
それを払拭したかったから。
それに、たぶん、つながらないと思う。
絶対に電源を切っていると思う。
だけど、もしかすると、そんな思いも浮かんでくる。
それと同時に、ものすごく気にかけている。
そう思いたくて。
それに、もしかするとつながるかもしれない。
もしかしすると、電話に出てくれるかもしれない。
そんな想いも浮かんでくる。
私は恐る恐る携帯を開くと、リダイヤルを押す。
つながらないかもしれない。
そんな考えが頭の隅から浮かんできて、どんどん私の中で膨らんでいく。
思わず携帯を閉じてしまいたくなる。
けれど、私はそんな弱い自分を叱咤すると、思い切ってリダイヤルする。
ワンコール目。
何の反応もない。
ツーコール目。
まだ何の反応もない。
スリーコール目。
依然として、反応はない。
これはもしかすると、つながっているんじゃないか。
そう思った。
けれど、いくら鳴らし続けても、つながらない。
ただコール音が鳴り響くだけ。
たぶん電源はついているんだと思う。
ただ、彼が出ないだけ。
でも、流し続ければきっと彼は出てくれる。
絶対に。
そう思って流し続けていると、突然ぶちっと切れた。
わけも分からずもう一度掛けなおす。
けれど、無情にも今度は電源が切られているといわれるアナウンスが流れた。
思わず私は泣き出してしまった。
彼と付き合ってから、今まで一度もそんなことはなかった。
彼は絶対、私が泣くようなことをしなかった。
優しく包み込んでくれていた。
だけど、今の彼はそんな気など、もうないのだろうか、あっさりと私のことを切り捨ててしまう。
それが悲しかった。
もう、彼は私には優しくしてくれないんじゃないかと思えた。