第二十四話 揺らぐ思い
それからしばらくの間は、公園にいたが、日が暮れ始めたので、家に帰った。
だからといって、家に帰ってもすることはほとんどない。
その後も、ぼんやりと過ごし、晩御飯の時間になると、親子三人でそれを食べて、すぐに自分の部屋に戻る。
その姿を見て両親は心配していたので悪いと思うけど、何とも答えようがなかった。
まさか、ふられてしまったなんて言えるはずがない。
たぶん、そんな事をいえば、お母さんに怒られると思う。
一体、あなたは何をしたんだ、と。
お母さんは、彼のことをものすごく気に入っている。
彼がお母さんの前で今時珍しいぐらい礼儀正しく、柔らかに対応しているからと言うのもあるだろうけど、たぶん彼の人間性を好いているんだと思う。
さすがだてに私たちより長く生きていないと言うだけはあって、あっという間に彼の本性というか、彼の態度の理由に気がついた。
たぶん、そんな健気で誠実なところを気に入ってくれたんだと思う。
それに彼もお母さんのことを気に入っているみたいで、あっという間に慣れてしまっている。
それこそ、私にはなかなかしてくれなかった、あの柔らかな笑みをお母さんにはあっという間にしたのだ。
たぶん、気に入ってもらおうという理由もあったんだろうけど、彼だってお母さんがその事に気がついてくるぐらい分かっていたんだと思う。
それでも、そんな事をしていたんだから、すぐに慣れてしまったんだと思う。
それがわかったときは思わず、お母さんにまで嫉妬してしまった。
母親相手に、と思うかもしれないけど、彼相手になるとそんな事がいえなくなる。
そんなことを思ってしまうほど、彼はなかなか私になれてくれなかったのだ。
そして、その結果として、彼は私に別れを言った。
さらりと、メールで。
直接会ってから言って欲しかった。
そうすれば、まだ話し合うだけのよちはあったと思う。
なのに、彼はそれをまったく残してくれなかった。
彼らしくないほど、容赦なくだった。
もう、無理なのだろうか、やり直す事は。
思わずそんな事が頭に浮かびかけて、慌てて頭を振る。
まだ間に合うはずだと思う。
誠意を込めて言えば、彼ならきっと分かってくれる。
だから、そんな事を思ってはいけないんだ。
そう思い直して、自分に活を入れたちょうどそのとき、携帯がなり始めた。
それを聞いた私は思わず携帯に飛びついた。
理由は、簡単だった。
その着信音が彼専用だから。
彼からのメールが来たという事を言っているのと同じだから。
私は手に取った携帯を開くと、今着たばかりのメールを開く。
そこに打たれていたのは
『全て悪いのは俺。君が悪いわけではない』
全くわけが分からなかった。
たぶん、私が送ったメールを見てないんだと思う。
だから、こんな事を送ってきたんだろう。
そして、彼には分かっていたんだと思う。
だからこそ、こんなメールを送ってきたんだ。
きっと、私が一人で思い悩んでしまうだろうと。
私は、すぐにメールを閉じて、リダイヤルする。
もしかすると、と思ってのことだったんだけど、やはりつながらなかった。
たぶん、彼はメールを送ると同時に電源を切ったんだと思う。
つまり、何があっても私と連絡を取りたくないということは同じ。
そして、彼女の、彼の妹の手助けすらできなかったということにもなる。