第二十話 弱くなった彼女
前も言ったように、私には友達が少ない。
だから悩み事があっても、基本的に自分で解決して来た。
時々、自分だけではどうしようないときもあったけど、その時にはお母さんに相談した。
理由は分かる。
だから、精神的にひとり立ちはできていたんだと思う。
だけど、彼と出会い彼に引かれ始めてから私は変わった。
必ず一日に一度彼のことを見ないと落ち着かなくなってしまったのだ。
その上、彼のことを知るにも、人伝いにして人に頼りっきりになってしまった。
それが、仲のいい友達だったから良かったんだけど、それでもやはり弱くなってしまったんじゃないかって思える。
そして、それは告白をするときもそうだった。
彼に告白したのは、大体一年前の事で、バレンタインデーだった。
友達と相談した結果がそれだった。
たぶん、前の私だったら、自分ひとりで計画から行動まで練っていたんだろうけど、その時の私には到底一人でやれるだけの余裕は無かった。
その上、一人で行く事ができず、途中まで付いてきてもらった。
で、告白するときはするときで、緊張にしすぎて、声はどもって俯きっぱなしの最悪だった。
たぶん自信がなかったからなんだと思う。
どうしても、彼に対しては自信がもてなかった。
こういう言い方は失礼かもしれないけど、あまりにも、普通の人とはかけ離れすぎていたから。
そして、彼はそんな告白でも受け入れてくれた。
その瞬間、私はあまりの嬉しさに彼に抱きついてしまった。
当の抱きつかれた方の彼はびっくりして、目を丸くしていた。
私が知っている中で、彼が私に対して普通の反応をしたのは、そのときが初めてだった。
もちろん、すばらしい戦果を上げた私は友達にもすぐに言いに行った。
そのあまりの喜びように、友達は苦笑しかしなかった。
そして、延々としゃべる喜びの声を聞いて呆れもした。
私にしてみれば、それぐらい嬉しかった。
けれど、彼の方はそうではなかったみたいで、私との関係をひた隠しにした。
誰にもいおうとはしなかった。
彼が懸念している事は分かった。
妬まれるんじゃないかと言う事なんだと思う。
だけど、付き合い始めたばかりの私にしてみれば、それはないんじゃないかとも思った。
だけど、結局私もその友達以外には誰にも言わなかった。
別に、彼が懸念している事が起きないためにじゃなかった。
ただ、それじゃあ付き合えない。
そういわれるのが怖くて、彼の言うとおりにしていた。
実際に、私は回りに知られてもたいした事なんてならないと思っていた。
けれど、実際知られたときはどうだったかと言うと、私に対してはすごい質問攻めだった。
しかも、そのほとんどが何であんな男なんかと、というのが大半だった。
さらに、ひどいものなんて、なにかわけありなのか、何て聞かれもした。
私はそのとき初めて、怒りをあらわにした。
今まで、彼ぐらいにしか怒った調子で言い返すことなんてなかったのだけど、そのときだけはどうしても許せなかった。
彼のことを何も知らないくせに、知った風に言うのがどうしても腹立たしくて、我慢できなかった。
結局、誰も彼のことを堂々と悪く言うような事はなくなったけど、それでも、私の好みはどうたらこうたらと、余計な事を言われ続けた。
彼の方も、嫉妬の目でずっと見られ続けたらしい。
ただ、彼の方は私と違って、相変わらず感情的にはならず、適当に受け流していた。
そこがやはりすごいと思った。
彼はどんなときも彼のままで、自分を乱すことがない。
そんな彼がうらやましくて仕方なかったし、尊敬もした。
そして、彼のことになると、すぐに目の色が変わってしまう自分が少し情けなくなってしまっていた。
特に一番強くそう思ったのが、彼と大喧嘩をしたときだ。
ううん、あれはたぶんけんかとは言えないと思う。
私が一方的に怒っていただけだったんだから。
そう、たいてい怒るのは私で、それを彼が受け流すと言うのが常日頃だった。