第十九話 返事のこないメール
私は家に帰るとすぐに、ベッドの上に倒れこんだ。
もう何がなにやら分からなくなって、すっかり頭の中は混乱してしまっている。
何がいったいどうしてこんな事にさせたのか、分からないのだ。
理由は分かる。
私がずっと適当な事をしていたのだ、それで愛想をつかれるのは分かる。
けれど、ここまでして私のことを拒絶するわけが全く分からない。
彼は優しい。
面と向かってそんな事を言えば、彼は即座に否定するだろうけど、私はそう思う。
なぜなら彼はめったな事では怒らない。
どんなに私が悪態をついても、笑って受け流してくれる。
人から見ればつまらないだとか、プライドなんてものが全然ないんじゃないのかとか、それは本当の優しさなんかじゃないとか思われてしまうかもしれないけど、私はそうは思えない。
彼は分かっているのだ。
相手が感情的になっているときに、自分までも感情的になってしまっては、いつまで経っても堂々巡りにしかならないと言う事を。
彼の方が明らかに大人なのだ。
ううん、それは少し違うかもしれない。
彼は何もそれを意識的にやっているわけじゃない。
無意識のうちにそうやっている。
だから、大人だとかそうでないとかは言い切れない。
ただ、言えるのは、彼が優しいと言う事だけ。
だから分からない。
彼がどうしてここまでして私のことを拒絶するのか。
家に帰るまで何通もメールを送ったが、返事が返ってくる様子もないし、つながりもしない。
徹底的に拒絶している。
それが不思議でたまらない。
私が知っている中で彼がそんなそぶりをしたことなんて一度もなかった。
彼はいつも彼で泰然としていて、かつ誰も気付かないぐらいひそかに包み込んでいてくれた。
そんな彼が私をここまで拒絶するなんて考えられない。
考えたくもない。
今さながら思うけど、どうやら私はもう彼なしでは生きてはいけないみたいだ。
別れのメールを送られただけで、私の全てを根こそぎ奪われたように感じ、彼に会うことすらで
きないでいる今は、まともにたつことすらできない。
明らかに私は弱くなっている。
彼と付き合う前はしっかりと自分ひとりで立てたというのに。