第十四話 帰途
雪見風呂をしっかりと満喫した私は、水分補給をした後駅へと向かう。
もうそろそろ帰らなくてはいけない時間帯である。
私は、ため息をつくと、歩き出す。
先ほどのけんかの結果は、彼女の方が折れる事によって幕が引かれた。
もともと、彼女が勝手にヒステリーを起こしていただけなので、私がどうやっても謝りようがないのも事実だが、彼女の決断のおかげで、いつまでも緒を引かずに済んだのだ素直に感謝しておくべきだろう。
実際、私がその愛読書を読み終えてからしばらくした後に、彼女からメールが来たのである。
内容の方は
『さっきはごめんなさい。あんな態度を取って』
本当は、もう少し絵文字がついていたのだが、まぁそれは見逃してもらおう。
それに重要なのは文章なのである。
もちろん、私は許した。
本のおかげでどうにか冷静さを取り戻していたため、すんなり許せた。
割り切る事ができたのだ。
さすがに、冷静じゃない状況となればすんなり許せるかどうかは怪しい。
私はそこまで出来た人間じゃないと思う。
その後、帰りのときの態度のわけを聞いたのだが、どうやら嫉妬からだったらしい。
けれど、それが私には今も理解できなかった。
彼女がどうして嫉妬なんかをしたか、である。
はっきり言えば、私は人付き合いはうまくない。
その上、女子と話すのが極端に苦手で、あまり近づこうとはしない。
それこそ、校内でまともに話すのは、彼女と部活の女子、そして図書室の先生だけである。
だから、どうしてそんな事をしたのかが良くか分からなかったのである。
その事についても聞いてみたのだが、彼女は結局答えてはくれなかった。
私は、駅につくと券売機で切符を買った後に、時刻表を見る。
どうやら、ちょうど良い時間帯らしく、後数分で汽車が出るみたいである。
私は、目当ての乗り場に行くと、ちょうどついたばかりの汽車に乗り込み、がらがらの席に座る。
窓の外を眺めれば、まだちらほらと雪が降っている。
小説でこんな風景の中で佇んでいる人物の事を幾度となくうらやんだが、逆にこうして体験してみると、ことのたいしたことのなさに幻滅に近いものを感じてしまう。
けれど、今はそんな事を考えている場合ではない。
逃げの時間は終わったのである。
私は、この移動中の間に、自分の行動の計画を練らなくてはならないのである。
そう、これから先、一人で動くために。