プロローグ
「す、好きです。わ、わ、私と、つ、つ、付き合ってください」
冬にしては珍しいうららかな午後、なぜか私は少女に呼び出されて告白を受けた。
いったいどうしたものなのだろうかと思い、内心で頭をかきつつ、目の前にいる少女の方を見る。
第一印象はまず間違いなくかわいいだろう。
それこそ、よほどのど近眼か、好みが著しくおかしいものでない限り、そうなるはずである。
一つ一つ特徴を挙げてみれば、まず一番最初に目を引くのは、その愛らしい瞳だろう。
二重まぶたでくりりとした大き目の瞳が特徴的だ。
さらに、肌はぬけるように白く、くすみやそばかすなどそのような肌荒れを表すようなものは一つとして存在していない。
まさしく雪色の世界と言っても過言でもない。
また長い亜麻色の髪も思わず目が言ってしまう。
枝毛などの存在など感じさせないほど、さらさらと風が吹くたびになびいている。
おまけに、思わず抱きしめたくなるほどの華奢な身体つきをしている。
おそらく身長は、160に届くか届かないかぐらいなのだろうが、それよりももっと小さく見えるほどである。
そんな彼女が私に告白してきている。
もちろんこんな一人称だが、私はれっきとした男だ。
だから、この告白がいわゆるそっち系ではないと言うことぐらいは言い切れる。
けれど、だからと言ってそれを素直に受け入れられるかと言うと、そうでもない。
何せ、はっきり言おう。
私は十人並み以下の男なのだから。
自分で言うのも少々辛いのだが、ここで嘘を述べてみた所で意味ないので、この際はっきり言わせてもらう。
顔はまずたいしたことはない。
近所のおばさんたちに言わせれば、かわいいと言う事らしいが。それを正直に信用できるほど私は愚かではない。
それに年齢が変われば、見方もしかりである。
よって、そんな判断は瞬殺される。
そして、次にだが、頭である。
確かに悪いとは言わない。
けれど、だからと言って良いかと言われると、それはノーとなる。
残念ながら、クラスで半分ぐらいでしかない。
おまけにスポーツなどもある程度恥を書かない程度にはできるが、それほど得意と言うわけでもない。
そして、極めつけは、この根暗さである。
ここまでくれば分かるだろうが、そう私は根暗である。
今の私に親友と呼べるものなどなく、友人もいない。
いるのは単なるクラスメイトだけでしかない。
だから、こんな告白なんてありえるはずがないのだ。
「それって、本気?」
だから、そう訊ねた。
いきなり核心につけるほどの勇気は私にはなかった。
私を騙しているのではないのか。
なんて事を堂々と聞ける勇気なんてものはなかった。
だから、こんな遠まわしな言い方しかできない。
「う、うん。本気」
彼女は震える声でそういう。
まさしくその声は必死になっているように見える。
けれど、私にはそれが芝居なのかそうではないのか分からなかった。
今まで生きてきた環境のため、素直に信じる事ができなかったからだ。
けれど、私は
「分かった。良いよ」
彼女の言葉を受け入れた。
もう、どうでも良かったのかもしれない。
例え、それが芝居でも。
それが私を欺き、嘲笑うためのものだったとしても。
もう、どうでも良かったのかもしれない。
当の昔に、私の心は壊れてしまっていたのだから。
早く朽ち果てていく事を望んでいたのだから。