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再び、魔術の国の宮殿


「トーカル公国の親善大使御一行が山羊に乗って宮殿へ向かっている」と伝令が入った。

 広間に集まっていた人々から興奮したような雰囲気がにわかに湧いてきた。


「太陽より輝く美貌を持つ姫とは本当かな」

「それ、眩しすぎだろ!、だいたいそんなのは眉唾だ」

「いやしかし、トーカル公国の美姫の噂は、あちこちから寄せられていると聞くけど」

「なんでも、貴石のようなその碧の瞳の美しさに、見た者は動けなくなるらしい」

「んん?、それ悪霊の方のパターンじゃないか?」


 みんな勝手なことを言っている。

 と、長くうねった静かな夜の闇を思わせる黒髪の少女は思う。

 しかし、貴石と同じ碧の瞳という話はガトゥールの妹も何度か聞いたことがある。


 姫は十八か十九歳だそうだ。

 そんな姫と友達になれれば、彼女の瞳に見つめられれば、自分も常に落ち着いていられて周りに迷惑を掛けなくなるのではないだろうか。

 ガトゥールの妹は歳が近くて貴石のごとき瞳を持つと評判の公女に想いを馳せる。


「それにしても、君主の第二妃になるためにやって来るってほんとか?」

( なに?、それ知らない )


「あっちの国からそういう申し出が有ったって皆言ってるな」

( えっ?、みんな知ってるの )


「あの火魔術使いのおっさんが脂下がっているのもそのせいだろ?」

( えぇーぇ )


「お妃様が怒って宮に籠っているらしいじゃないか……」

( えぇーぇ )


 衝撃だ。

 もう二の句が継げない。どうしよう。


 碧の瞳のお姫様が自分のお友達になってくれるなんてことは実現可能性ゼロに違いない。

 でも実を言うとこの黒髪の少女、既に妄想上のお姫様と友達になった気分でもいた。


( これはもしかするとお姫様の危機なのでは?……何か(にえ)的なやつなの? )


 君主は少し女好きだと言う話は聞くが妃との関係は良好だという。

 君主夫妻に子供はいないが、そもそもこの国は世襲制ではないのでそれが問題ってことにはならない。

 一方、君主が複数の妻を持つことも認められている。


 そういえば何度か国外からの申し出があったと兄から聞いたことがある。

 「ウチの娘を捧げるからサラナームの『奇跡の動力石』を頂きたい」というようなあからさまな申し出を。

 中には「ウチの息子を……」というようなものもあるらしい。

 一方的に申し出てくるのは先方なのだが、こんなのがちょいちょい有るせいで「サラナームの君主は好色」だという迷惑な噂も立っているようだ。


 もっともサラナームの君主であるキーズ様はそれ系の申し出をこれまで受けたことは無いそうだ。

 あくまで先方との間の経済の話として『奇跡の動力石』をやり取りしている。


 本当にトーカル公国の姫がキーズ様に好意を持って訪れるのなら、周りがとやかく言う話ではないのかもしれないが、これまでサラナームと公国の間に国交は無い。

 姫は姫の父辺りから言われて、泣く泣くやって来るのではないのか?


 国同士の婚姻とはそういうものだと聞いたことがある。

 サラナームは実力主義の国でサラナームを閨閥で取り込もうとしてもあまり意味がない。とは言え。

 とりあえずの貢ぎ物として姫が提供される可能性も否めない。


 キーズ様を信じたいのだが、まあ少し緩い方でもある。

 噂の美姫の話に心が傾いていたらどうしよう。

 黒い大きな瞳と艶のある黒髪が微かに揺れる。

 心が騒めきだす。


( 碧の瞳のお姫様が危ない! )


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