ルキシャは魔術の国を目指します3
検問所を越えサラナームの領内に入ったルキシャ一行はそのまま馬で山を進んだ。
しかし想定以上に道は険しかった。
連れて来た馬はこんな山道には慣れていない。
まだ夏だからと油断した。
「ゆ、揺れます、ね。ルキシャ、じゃないっ、ルーナ様、大丈夫、ですかっ?」
「うっ、揺れて、る。でも、大丈夫、よ」
メリアは思う。
ルキシャがやると言ったら周りは止められない。
大公の子として育ってきたからか、意志の強いルキシャは小さな公国が生き延びられるようにと人一倍勉学に励んできたのだ。
幼少期から大きな期待を背負ってきた。
若くとも農学や薬学医学に関する知識は公国内でも指折りなのだそうだ。
そしてトーカル公国が直面している問題をなんとか解決したいと強く思っている。
ルキシャはサラナームが持つという『奇跡の動力石』を譲ってもらうためにこの国へ入った。
『奇跡の動力石』は、太古の地下資源や風力を使った従来の方法とは異なり、この切り立った山に囲まれたサラナームでだけ作られる特別な動力石なのだ。
その『奇跡の動力石』を作り出す力があるという凶悪な男の婚約者になろうとルキシャは向かっている。
ルキシャの自分を犠牲にしてでも国を救いたい、という考えは理解できる。
そういう人だと知っている。
そんなルキシャだからこそ、公国内の年頃の子たち皆がそうであるように、メリアもルキシャに密かな憧れをずっと抱いてきたのだ。が。
でも本当にこんなことが上手く行くのだろうか?
ルキシャが姉のルーナ公女を装ってサラナームへ入ったことは、「ルキシャもルーナも大公一族なのだから」と考えれば、まだ誤魔化しようもある気がする。
しかし問題はそこではない。
ルキシャはルーナの妹ではない。
そのことの方が重大だ。
今メリアの目の前にいるのは、公女ではなく、公子なのだ。




